こんにちは。スポーツ栄養士の盛岡です。
アミノ酸といえば、サプリやドリンクなどでマラソンランナーにとって最も身近な成分ですよね。
現在では大小様々なメーカーがアミノ酸商品を販売しておりますが、いまいちどう利用していいか分からない方も多いのではないでしょうか?
今回はマラソンランナーにとってアミノ酸はどのような効果があるのかや、どんなタイミングで飲むべきかなどの飲み方についてご説明いたします。後半ではおすすめのサプリメントについてもご紹介いたします。
マラソンにおけるアミノ酸の効果
アミノ酸とはたんぱく質のパーツとなっている成分で、体の中で合成できないアミノ酸は必ず食品から摂取しないといけないことから「必須アミノ酸」といいます。
アスリート向けサプリメントで使用されているアミノ酸にはBCAAやアルギニン、シトルリン、グルタミンなどがあります(※アルギニン、シトルリン、グルタミンは必須アミノ酸ではありません)。
特にBCAA(分岐鎖アミノ酸=バリン、ロイシン、イソロイシンの総称)という必須アミノ酸は、体内でブドウ糖に変換されることから、運動時のエネルギー源として利用することができます。
また、筋肉を構成するたんぱく質の合成を促進するので、運動中の筋肉疲労を抑制する効果があることも示唆されています。
昨年(2016年)には大塚製薬社の「アミノバリュー4000」などが消費者庁に機能性表示食品として受理され、以下の効能の表示を許可されています。
本品にはBCAA(バリン、ロイシン、イソロイシンの総称)が含まれます。BCAAは運動まえや運動中に飲むことにより、運動によるカラダの疲労感をやわらげることが報告されています。
アミノ酸の運動への効果についてはまだ分かっていないことも多く、BCAAにおいても効果はなかったとする研究結果もあります1)。
そこでまずはサプリに多く利用されるアミノ酸の、配合されている意図とその有効性について簡単に整理しました。
アミノ酸の種類 | 配合の意図 | 有効性 |
BCAA | 運動時の筋肉疲労の抑制 | 効くと断言できませんが、効能の可能性が科学的に示唆されています。 |
アルギニン | 血流の増加、持久力の向上 | 定期的に運動を行っている人を対象にした研究では、運動能力の向上が見られず、効かないかもしれません。 |
シトルリン | 血流の増加、持久力の向上 | アルギニンの前駆体である成分。アルギニンと同様、運動能力の向上については効かないかもしれません。 |
グルタミン | 免疫力の向上、運動機能の改善 | 運動後の免疫機能への効果は、統一した見解が得られていません。また、運動機能の改善についてはおそらく効きません。 |
アミノ酸を飲むタイミングは?
アミノ酸を飲むタイミングは、目的によって2つのパターンがあります。
マラソン前・レース中のエネルギー補給
アミノ酸の配合されたサプリメントやドリンクは、飲むタイミングは運動中のエネルギー源や疲労抑制という目的から、運動前や運動中の摂取が一番よいでしょう。マラソン前日はアミノ酸サプリよりも、ごはんやうどんなどで糖質をしっかり蓄えておくことが大切です。
アミノ酸は吸収されるまでに30分程度かかるといわれていますので、運動前にチャージする場合には走り始める30分前に補給するのがポイントです。
また、血中アミノ酸濃度は30分後をピークにどんどん減少していき、摂取2時間後にはもとの状態近くまで減少すると報告がされています。したがってレース中には1~2時間に1回を目安に再度補給するとよいでしょう。
マラソン後の疲労回復
運動後は体に成長ホルモンが多く分泌されて筋肉の合成が活発になっており、また一方でエネルギーの消費によって筋肉の分解も活発になっております。そのためアミノ酸の摂取は、運動後の筋肉疲労の回復にも役立つかもしれません。
運動後に使用する際には、筋肉の分解をできるだけ速やかにくい止め、筋肉の合成へとつなげなければなりません。したがって運動後の摂取はできるだけ速やかに、特に筋肉合成のゴールデンタイムといわれる運動後30分以内に摂取するようにしましょう。
アミノ酸の摂取量は?
アミノ酸の摂取量については、現在のところ十分なデータが存在しないため、はっきりとした有効量や上限量は設定されておりません。
参考としてアミノ酸飲料を販売している大塚製薬社では、8人の健常成人男性を対象に行った実験から、摂取量の目安を以下のように結論付けております。
2000mg以上摂取すると摂取2時間後においても摂取前値に比べ高値を維持していましたが、1000mg以下の摂取では1時間後には摂取前のレベルに戻っていました。運動時はBCAAの要求量が高まるため、運動30分前~運動中にBCAAを2000mg以上摂取する必要があるのではないかと推測されます。
引用:大塚製薬 BCAA摂取のポイント
安全性については動物での毒性検査において、特定のアミノ酸のみを過剰に摂取することにより、食欲の低下や成長の停滞などの副作用が報告されています2)。
多くのアミノ酸サプリで設定されている1日2~10g程度であれば問題ないかと思いますが、摂れば摂るほどよいものではありませんので、目安量を超えて摂取はしないように注意して下さい。
プロテインとの使い分けは
同じようなマラソンランナーの栄養補給のサプリメントとしてプロテインがあります。アミノ酸とプロテインはどのように使い分ければよいのでしょうか。
運動前・運動中はBCAAなどのアミノ酸
プロテイン(たんぱく質)と比較したアミノ酸サプリのメリットは、消化吸収が速く、運動中の疲労の抑制に特に効果的なBCAAを単体で摂取できる点です。運動前や運動中にはアミノ酸摂取がおすすめです。
もし運動前や運動中にプロテインを飲んだら消化に時間がかかり、腹痛やパフォーマンスの低下の原因となるでしょう。
運動後はプロテイン
一方で、運動後の栄養補給にはプロテインの方がよいでしょう。
アミノ酸も運動後の疲労回復にも役立つかもしれませんと述べましたが、運動直後の回復に必要なたんぱく質は15~25gとされております。
「BCAA4000mg配合」と書かれてあると多く含まれているように思えますが、たんぱく質量としてはたったの4gにしかならず不十分です。
前述しましたように特定のアミノ酸だけを摂りすぎるのは体調の不良をきたす恐れもありますし、また体はBCAAだけで作られているわけではありませんので、必須アミノ酸を各種バランスよく含んでいるプロテインの方が体づくりには役立ちます。
アミノ酸サプリの選び方
アミノ酸サプリを選ぶ際のポイントは以下の3点です。
アミノ酸の種類と量
アミノ酸の中では必須アミノ酸であるBCAAはある程度の有効性が示唆されていますが、他のアミノ酸は微妙なところです。したがってアミノ酸サプリを選ぶ際には、BCAAの含有量がもっとも重要度の高いポイントになります。
ただどのアミノ酸も安全性は高い成分ですので、まずは一度飲んでみて、疲れにくくなったなどの体感があるか試してみるのもよいでしょう。
カロリー
長時間に渡って高いパフォーマンスを維持するには、レース中の糖質摂取も大切です。スポーツドリンクでも糖質は含まれていますが、ゴールまでに4時間以上かかる場合には補給食も利用する必要があります。
また、運動後の筋肉疲労の回復にも糖質は大きな役割を果たします。補給食には様々なものがありますが、アミノ酸サプリもその中の1つの選択肢となるでしょう。エネルギー代謝を助けるビタミンB群が含まれているとなおよいです。
携帯性・形状
レース中の補給用として使用する場合には、携帯しやすいかどうかは重要です。ポーチに入るサイズなのかはあらかじめ確認する必要があります。
携帯性という点では顆粒タイプの方がいいですが、糖質はあまり含まれていません。エネルギー補給もしたい場合は糖質が多く含まれているゼリー・ジェルタイプを選ぶとよいでしょう。
おすすめのアミノ酸サプリ
形状ごとにおすすめのアミノ酸サプリをご紹介いたします。なお価格は2018年5月時点のAmazonの価格を参考にしています。
顆粒・粉末タイプ
アミノバイタル プロ

内容量 | 30本 |
価格(税込) | 3,817円 |
カロリー | 18kcal |
BCAA総量 | 1330mg |
その他の アミノ酸 |
グルタミン650mg アルギニン610mg その他1010mg |
その他の成分 | ビタミン8種 |
アミノ酸サプリとして最も有名な「アミノバイタル」シリーズの顆粒タイプ。BCAAの含有量は1本あたり1330mgで、エネルギー代謝に関わるビタミンB群も豊富に含まれています。
分包のサイズも小さいのでレース中にも携帯しやすいです。なお同じシリーズでは、BCAAが2400mg摂取できる「アミノバイタル GOLD」がございます。
アミノサウルス
内容量 | 28本(14本×2箱) |
価格(税込) | 6400円 ※初回3200円 |
カロリー | 20kcal |
BCAA総量 | 3000mg |
その他の アミノ酸 |
アルギニン500mg シトルリン250mg オルニチン250mg |
この商品はあまり有名ではありませんが、BCAAが1本あたり3000mg含まれており、アミノ酸サプリの中ではトップクラスの配合量なのでおすすめです。
分包のサイズはアミノバイタルより少し小さいくらいです。
味はパイナップル風味で普通においしいです。普段アミノバイタルを飲みなれている方なら問題なく飲めると思います。
メダリスト アミノダイレクト
内容量 | 5個 |
価格(税込) | 1,141円 |
カロリー | 23kcal |
BCAA総量 | 2088mg |
その他の アミノ酸 |
シトルリン504mg アルギニン504mg グルタミン504mg |
その他の成分 | クエン酸 ビタミン10種 ミネラル少量 |
BCAAが1包で2000mg以上摂取でき、サイズもポケットに入る大きさなので携帯もしやすいです。
「メダリスト」はもともとクエン酸サプリを販売しているブランドですが、アミノ酸が入っているこちらの方が疲労回復にも断然おすすめです。
ゼリー・ジェルタイプ
アミノバイタル スーパースポーツ

内容量 | 6個 |
価格(税込) | 791円 |
カロリー | 100kcal |
BCAA総量 | 1720mg |
その他の アミノ酸 |
アルギニン860mg その他420mg |
その他の成分 | クエン酸 |
アミノバイタルシリーズのゼリータイプ。カロリーが100kcalあるため、レース中や練習後の糖質補給にも利用できます。
パワープロダクション ワンセコンドBCAA

内容量 | 6個 |
価格(税込) | 1,413円 |
カロリー | 14kcal |
BCAA総量 | 2000mg |
その他の アミノ酸 |
- |
その他の成分 | クエン酸 |
あまり知られていないのがグリコが販売している「ワンセコンドBCAA」。BCAAはアミノバイタルのゼリーよりも多い2000mgを摂取できるのがいいですね。ただカロリーは低いので、糖質はまた別で補給する必要があります。
アミノバイタル アミノショット
内容量 | 5個 |
価格(税込) | 888円 |
カロリー | 23kcal |
BCAA総量 | 1630mg |
その他の アミノ酸 |
アルギニン750mg その他1220mg |
その他の成分 | ビタミン8種 |
こちらはキャップがなくコンパクトなジェルタイプのアミノバイタルです。
重さは43gしかなく、縦・横の幅が小さいのでポーチに入れやすいです。キャップのある「スーパースポーツ」と比べるとカロリーは低いため、レース中に利用する場合にはエイドの補給食でエネルギー補給も併せてするとよいでしょう。
その他人気のアミノ酸
このほかに、アミノ酸の配合量について公表されていないため評価は行いませんでしたが、以下のサプリもアミノ酸サプリとして人気がありますのでご紹介だけいたします。効果があるかは分かりませんが、一度試してみるのはよいかと思います。
VAAM(ヴァーム)ゼリー

内容量 | 6個 |
価格(税込) | 1,296円 |
カロリー | 32kcal |
BCAA総量 | ? |
その他の アミノ酸 |
アミノ酸17種 合計1800mg |
その他の成分 | クエン酸 |
明治社が販売しているアミノ酸サプリの「VAAM」シリーズです。ゼリータイプの他に、水に溶かす粉末タイプ、水なしで飲める顆粒タイプ、ドリンクタイプがございます。
アミノ酸の配合量は独自処方ということで公表していません。体脂肪を燃やすとありますが、「運動で」と書いているところがミソです。ダイエット効果は気休め程度に考えるとよいでしょう。
VESPA(ベスパ)

内容量 | 5個 |
価格(税込) | 2,497円 |
カロリー | 19kcal |
BCAA総量 | ? |
その他の アミノ酸 |
? |
その他の成分 | はちみつ ローヤルゼリー プロポリス |
川原商会という会社が販売しているアミノ酸サプリ。携帯しやすい小さいゼリーです。VAAMはまだアミノ酸が合計で1800mgと表記していますが、こちらは何がどれだけ含まれているかも分からないですね。
また「天然」であることをアピールしていますが、天然だから有効性や安全性が高いという科学的根拠はありません。
まとめ
- アミノ酸はプロテインよりも吸収が速い
- アミノ酸の一種であるBCAA(分岐鎖アミノ酸)は運動時の疲労を軽減する効果が示唆されている
- アミノ酸を飲むタイミングは、運動の30~1時間前や運動中がよい
- 1日の摂取量は2~10g程度を目安とし、摂りすぎには注意する
- 運動後の筋肉の合成にも役立つかもしれないが、運動後はよりたんぱく質を多く摂取できるプロテインの方がよい
参考文献
田口素子・樋口満 編:「体育・スポーツ指導者と学生のためのスポーツ栄養学」.市村出版,2014.
(社)日本健康食品・サプリメント情報センター、 日本医師会・日本薬剤師会・日本歯科医師会 監修:「ナチュラルメディシン・データベース」.同文書院,2015.
大塚製薬:BCAA摂取のポイント http://www.otsuka.co.jp/a-v/bcaa/bcaa_point.html
消費者庁届出情報データベース:https://www.fld.caa.go.jp/caaks/cssc02/?recordSeq=41703300570302
1) Greer BK et al.: Branched-chain amino acids supplementation lowers perceived exertion but does not affect performance in untrained males. J Strength Cond Res, 25: 539-544, 2011.
2) Garlick PJ: The nature of human hazards associated with excessive intake of amino acids. J Nutr, 134: 1633S-1639S; discussion 1664S-1666S, 1667S-1672S, 2004.