こんにちは。管理栄養士の盛岡(@athtrition_jp)です。
アスリートにとって体脂肪率はとても関心が高く、「どうしたらもっと体を絞ることができるか?」といった質問をよく受けます。
減量については以前に「アスリートが筋肉を落とさず2kg痩せる方法」で、食べる時間などの食習慣を見直すことや、食事内容としてはたんぱく質が不足しないようにしつつ、摂取カロリーを落とすことが大切であるとお伝えしました。
このカロリー制限にあたっては、ごはんやパンだけを控える方も多いのですが、炭水化物制限だけに頼るのではなく脂質摂取も控えるのが効果的です。
ここでは筋肉を落とさず減量するために、低脂肪になる食事メニューや食べ物の選び方について解説していきます。料理をしない方もできる範囲で取り組んでみて下さい。
※具体的なレシピについては高タンパク質・低カロリーな料理一覧もご参照ください。
目次
減量には低脂肪食にも取り組むべき理由
低脂肪食にするメリットは、何といっても食事の満足感があまり落ちないことです。
ごはん(炭水化物)やおかず(たんぱく質)を減らしてしまいますと、食事のボリューム自体が少なくなり、続ける上でストレスが大きいです。またおかずを減らすとビタミンなどの栄養素も減り、疲労の回復が遅れたりコンディションを落としたりする可能性もあります。
これに対して低脂肪食ですと、食事量を減らさずに脂質の摂取量を控えることもできますので、満足感を保つことができます。
さらに、炭水化物やたんぱく質は1gあたり4kcalなのに対し、脂質は1gあたり9kcalとカロリーの密度が高く、1日に摂取しているカロリーのうちの約20~30%は脂質からとっているカロリーです。
炭水化物制限だけに取り組むよりも減量は成功しやすいです。
もちろん何事も極端なのはいけませんが、安易に食事量を制限する前に、まずは脂質の量を調整してみるとよいでしょう。
「見えない油」にも注意しよう
低脂肪食に取り組む上では、「見える油」だけでなく「見えない油」にも注意する必要があります。
「見えない油」とはサラダ油のような調理に使われる油ではなく、肉類や乳製品など食品の中に含まれている脂質のことです。あまり意識されませんが、私達の普段の食生活では実はこの「見えない油」から多くの脂質を摂取しています。
分かりやすいように「平成28年度国民・健康栄養調査」をもとに、日本人が1日あたりに摂取している脂質量の平均を、食品群ごとに表にまとめてみました。
見える油 | 見えない油 | ||
食品群 | 脂質 | 食品群 | 脂質 |
植物油 | 8.7g | 肉類 | 14.5g |
マヨネーズ | 2.0g | 乳類 | 5.0g |
バター | 0.8g | 魚介類 | 4.7g |
マーガリン | 0.7g | 穀類 | 4.5g |
動物油脂 | 0.2g | 豆類 | 4.1g |
卵類 | 3.6g | ||
菓子類 | 3.3g | ||
調味料 (マヨネーズ以外) |
3.1g | ||
種実類 | 1.1g | ||
野菜・果物 | 0.8g | ||
その他 | 0.2g | ||
合計 | 12.4g | 合計 | 44.9g |
このように「見える油」に対して「見えない油」の方が圧倒的に摂取量が多く、割合にすると約78%にもなります。この数値は日本人の平均ですので、脂っこい食事やお菓子が好きな方はもっと食品からの脂質量が多いと考えてください。
ここからは「見える油」と「見えない油」を減らす方法について、順番に解説していきます。
「見える油」の対策
揚げ物・炒め物メニューを控える
揚げ物が毎日何かしら1品は食べる、1食に炒め物のメニューが何品もあることが多い場合には、それらの品数を減らし、焼き物・煮物・蒸し物の料理を選ぶようにします。
例えば同じアジでも、アジフライにすると1尾で約260kcalですが、塩焼きにすれば約100kcalとたんぱく質を減らさずに半分以下のカロリーにできます。
サラダ油やごま油、オリーブオイルのカロリーはいずれも大さじ1杯で約110kcalです。洋食や中華では主菜だけでなく副菜でもソテーだったりスープに油を足したりするため高脂肪になりがち。メニューによりますが、基本的にダシを使っている和食中心のメニューにした方がカロリーは少なくなります。
メニュー例
レンジで蒸し料理にすると簡単に作れてしかもヘルシーです。塩麹を使うと柔らかく仕上がりますのでおすすめです。
マヨネーズやドレッシング、バターを控える
サラダをよく食べる方はマヨネーズやドレッシングを控えてみましょう。製品によってカロリーに大きな違いがありますので、ノンオイルやカロリーハーフのものを選ぶのもおすすめです。
カロリー(大さじ1杯分) | |
フレンチドレッシング | 61kcal |
ごまドレッシング | 54kcal |
和風ドレッシング | 30kcal |
ノンオイルドレッシング | 8kcal |
マヨネーズ | 100kcal |
マヨネーズ (カロリーハーフ) |
49kcal |
また朝食がパン食派の方は、パンにぬるバターやマーガリン、オリーブオイルに注意するのもよいでしょう。食パン1枚にぬるバターは約70kcalほどあり、毎日のことなので積み重なると大きな差が出ます。
パンはどうしてもジャムやクリームなどをつけることが多いため、そういう意味ではごはん食の方がダイエットに向いているといえます。
「見えない油」の対策
乳製品を低脂肪・無脂肪にする
スポーツ選手は牛乳を1日に何杯も飲んでいる方も多いかと思いますし、実際1日1杯では十分なカルシウムをとるのは難しいです。しかし一方で乳製品は動物性脂肪も多く含んでおり、普通の牛乳だとコップ1杯で約140kcalとなかなかのカロリーです。
食品 | 量 | カロリー |
普通牛乳 | コップ1杯 (200ml) |
141kcal |
低脂肪乳 | コップ1杯 (200ml) |
97kcal |
ヨーグルト (普通) |
カップ1個 (100g) |
62kcal |
ヨーグルト (低脂肪) |
カップ1個 (100g) |
45kcal |
ヨーグルト (無脂肪) |
カップ1個 (100g) |
42kcal |
毎日のようにとるものなので、低脂肪の牛乳や無脂肪のヨーグルトを選ぶのは手軽にできて大きな効果を発揮します。
脂身の多い肉を避ける
食べ物からとっている脂質で最も多いのが肉類のものです。肉に含まれる脂質は部位によって大きくことなりますので、料理にはできるだけ脂身の少ない肉を選びましょう。
スーパーで売られている「コマ切れ肉」は安くてありがたい食材ですが、ばら肉のコマ切れであることも多いため注意が必要です。
牛肉(100g中) | |
種類 | カロリー |
ばら肉 | 454kcal |
肩ロース | 318kcal |
ひき肉 | 272kcal |
もも肉 | 209kcal |
ローストビーフ | 196kcal |
豚肉(100g中) | |
種類 | カロリー |
ベーコン | 405kcal |
ばら肉 | 386kcal |
ウインナー | 321kcal |
ロース | 263kcal |
ひき肉 | 236kcal |
ハム | 196kcal |
もも肉 | 183kcal |
ヒレ肉 | 112kcal |
鶏肉(100g中) | |
種類 | カロリー |
むね・もも(皮つき) | 250kcal |
ひき肉 | 186kcal |
むね・もも(皮なし) | 130kcal |
ささみ | 114kcal |
鶏肉は皮の部分に脂肪が集中していますので、皮を除くとカロリーが半分くらいに落ちます。鶏肉のソテーだと皮を除いて焼くと水分が抜けてパサパサになってしまいますので、皮を付けたまま焼いて食べるときに取り除くとよいでしょう。
また肉料理に偏らせないで魚や大豆を使ったメニューを増やすことも大切です。肉を使った炒め物を作る際には、肉の量を減らして豆腐を混ぜるとカロリーが減り、料理のカサも増しますのでおすすめです。
メニュー例
脂身の多い肉はしゃぶしゃぶにして脂肪分を落としましょう。ドレッシングはヘルシーなポン酢を使えばノンオイルです。
魚介類については、サンマやウナギを除けば全般的に低脂肪です。中でも特に低脂肪なのがカジキで、夏は積極的にメニューに取り入れてみてください。
間食を見直す
何を食べるかだけでなく食べる量の問題にもなりますが、間食でお菓子を食べることが多いのであれば内容を見直してみましょう。以下は菓子類や果物のカロリーの目安でになります。
脂質の多い食べ物 | ||
食べ物 | 量 | カロリー |
ポテトチップス | 1袋 | 400kcal |
チョコレート | 1粒 | 30kcal |
板チョコ | 1枚 | 360kcal |
アイスクリーム | 1本 | 200kcal |
バタークッキー | 1枚 | 60kcal |
脂質の少ない食べ物 | ||
食べ物 | 量 | カロリー |
ようかん | 1切れ | 170kcal |
カステラ | 1個 | 160kcal |
シャーベット アイス |
1本 | 70kcal |
バナナ | 1本 | 100kcal |
みかん | 1個 | 30kcal |
リンゴ | 1個 | 130kcal |
消費カロリーの多いアスリートにとって、菓子類をとるのはは一概にダメというわけではありません。しかしごはんは茶碗1杯で250kcalであることと比べると、菓子類は糖質量が多く高カロリーであるため、減量中は控えるのが無難です。特に洋菓子類は脂質も多く体脂肪の増加につながりやすいので注意が必要です。
どうしても甘いものがほしいときには、脂質がほぼゼロに近い果物をおすすめします。果物の糖分は血糖値が上がりにくいため砂糖よりも体脂肪になりにくく、またビタミンなどもとれて体調管理にも役立ちます。
お菓子は食べるのが習慣になっていると、急に減らした際に大きなストレスになりますので、少しずつ取り組んでいきましょう。
関連記事:アスリートの間食の選び方 >
まとめ
- 減量には糖質制限だけに取り組むとストレスが大きいので、低脂肪食にも取り組むとよい。
- 普段摂取している脂質の約8割は、食べ物の中に含まれている「見えない油」である。
- 「見える油」の対策には、揚げ物や炒め物を控えること、ドレッシングやマヨネーズを控えることがある。
- 「見えない油」の対策には、乳製品を低脂肪にすること、脂身の少ない肉を選ぶこと、間食(お菓子)の内容を見直すことがある。
参考文献
・厚生労働省:平成28年度国民健康・栄養調査
・文部科学省:日本食品標準成分表2015年版(七訂)