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【医師監修】鉄分不足の子供の症状とは?貧血や癇癪・イライラにも

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鉄分不足で集中力が落ちる?

この記事は第三者の監修を受けています。

監修者:「女医によるファミリークリニック」院長 竹中美恵子先生竹中美恵子 先生(小児科医/小児慢性特定疾患指定医/難病指定医)

女医によるファミリークリニック」院長。
2009年、金沢医科大学医学部医学科を卒業。広島市立広島市民病院小児科などで勤務した後、自らの子育て経験を生かし、「女医によるファミリークリニック」(広島市南区)を開業。産後の女医のみの、タイムシェアワーキングで運営する先進的な取り組みで注目を集める。 日本小児科学会、日本小児皮膚科学会、日本周産期新生児医学会、日本小児神経学会、日本リウマチ学会などに所属。

 

こんにちは。管理栄養士の盛岡です。

鉄分は女性ですと意識してとるようにしている方も多いと思いますが、子供にとっても不足しやすく、鉄分不足ではどうなるか十分に把握している方は少ないのではないでしょうか。

そこで今回は子供が鉄分不足になった際にみられる症状について解説いたします。

鉄欠乏性貧血

酸素を運ぶ赤血球にはヘモグロビンという物質があり、全身に酸素を運搬するために不可欠な物質です。このヘモグロビンは鉄を含む「ヘム」という色素と、たんぱく質を含む「グロビン」が結合してできています。

鉄分が不足するとヘモグロビンを生成することが難しくなるため、顔色が悪くなったりめまいや立ちくらみなど、貧血の症状があらわれる場合があります(鉄欠乏性貧血)。

普段から鉄分をしっかりとることが貧血を予防するには大事なのですが、子供にとって鉄分は不足しやすい栄養素です。

摂取量と必要量についてぴったり比較できるデータがないのですが、ここでは「国民健康栄養調査(令和元年)」を参照してみます。

子供の鉄分の必要量と各年齢の平均摂取量

7~14歳の鉄分摂取量は平均で男子6.7mg、女子6.3mgなのに対し、「日本人の食事摂取基準」において推奨量は下記のようになっています。

—————————-

8~9歳:男7.0mg/女7.5mg
10~11歳:男8.5mg/女12.0mg
12~14歳:男10.0mg/女12.0mg

—————————-

子供は成長して体が大きくなると鉄分の必要量も一気に増えていくので、それが不足しやすい原因となっています。

さらに女の子の場合は月経による出血もあるため、男性よりも貧血を発症するリスクは高いといえます。

体力・持久力の低下

鉄分は子供の体力をつける上でも重要で、特にスポーツをしている場合は鉄分が不足しやすいので注意が必要です。

スポーツ選手が貧血になりやすいのは、以下の原因が挙げられます。

・スポーツ選手は活動量が多い分酸素を多く運搬する必要があり、それに伴い鉄分も多く必要となるため
運動中の発汗によって、鉄分が失われてしまうため
消費される量に見合う鉄分やタンパク質を、食事から十分に摂取できていないため

子供の鉄分摂取と体力の関係

また以下のスポーツでは、物理的な衝撃で赤血球が破壊されて貧血になる場合もあります(これを溶血性貧血といいます)。

・硬いアスファルトの上を長時間走るマラソン選手
・跳躍を繰り返すバレーボール選手
・裸足で強く踏み込んだりする剣道選手や空手選手

アマチュアスポーツ選手であっても、マラソンや自転車競技などの持久系競技は運動量が多いため注意しなければなりません。

 

鉄分とタンパク質をしっかりとることで、鉄不足による息切れや、体力の低下を防ぐことができます。両方とれる食品としては、牛肉や納豆などがおすすめです。

集中力や記憶力の低下・癇癪やイライラ

子供の鉄分と集中力・学力の関係

鉄分は脳のはたらきに関しても重要な役割を果たしています。

貧血で全身に酸素を送ることができないということは、つまり脳にも十分な酸素を運ぶことが難しくなり、集中力の低下や記憶力の低下につながったり、イライラしやすくなったりします。

また鉄分はヘモグロビンだけでなく、脳の発達やセロトニン・ドーパミン・ノルアドレナリンなどの神経伝達物質の合成にも関わっています。

セロトニンは心の安定や平常心に関与しており、ストレスに対して効能がある物質です。ドーパミンも認知、感情調節あるいは運動に関与しているために、これらもまた記憶力や集中力に影響します。

 

これに加えて幼児の場合ですと、鉄分の不足により脳の神経細胞ネットワークの接合部であるシナプスの成長が阻害され、脳の情報伝達がうまく働かなくなります。

こうした形で脳の発達にも支障をきたすことがあるので注意しなければなりません。

 

このため鉄分を摂取することは集中力や学習能力、心の健康(癇癪やイライラ)にも重要になります。

とればとるほど集中力が良くなるわけではありませんが、不足しないように毎日の食事で意識してとるとよいでしょう。

参考文献

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
林淳三:「改訂 基礎栄養学」.建帛社,2010.
田口素子・樋口満 編:「体育・スポーツ指導者と学生のためのスポーツ栄養学」.市村出版,2014.

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