ジュニアアスリートの食事

食トレとは?ラグビー選手の増量に必要なご飯の量

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ジュニア選手の食トレと必要なご飯の量

こんにちは!公認スポーツ栄養士の馬明真梨子(まみょう まりこ)です。

前回の記事で、ラグビー選手の食事量・カロリーについてご紹介したのですが、「やっぱり食事量は多いな」と感じた方も多いのではないでしょうか。

ラグビーだけでなく、体を大きくしたい競技では「食トレ」という言葉をよく耳にします。皆さんにとって「食トレ」とは、どのようなイメージですか?

今回は「食トレ」について、一緒に考えていきましょう!

食トレとは?

ラグビー選手のご飯の量

「食トレ」と聞くと、ごはんを大盛りでガツガツ食べているイメージが強いかもしれません。

「食事はトレーニングの一環」として「食トレ」と位置付けている場合や「ごはんを1食〇合食べるといった食事量」に重きをおく場合など、同じ「食トレ」でもその目的が異なっていることがあります。

アスリートの多くは、食べたもので体も心も作られるからこそ、「食事もトレーニング」だと考えて取り組んでいます。

私自身も食トレという言葉を使う際は「トレーニングの一環や体も心も強く鍛える食べる筋トレである」ということをお伝えしています。

対して、1食あたりのごはん量のノルマを課し、食事量を増やす食べ方を食トレとし取り組んでいるチームや選手も見かけます。

食事量を課す場合、チームで一律でごはん量を決めている場合があり、ポジションや選手個人によって必要となる食事量が異なるため、設定するごはん量が選手によっては多すぎる場合もあります。

しっかり食事をとる必要性を考える

ラグビー選手のおにぎり

私自身も高校ソフト部時代、合宿などでは決められたごはん量を食べないといけないことがありましたが、小食で1度にたくさん食べることが苦手だったので、「いかに残すか、食べなくて済むか」を考えたこともありました。

「なぜ食べる必要があるのか」を考えていなかった上に、量を食べられなかったので、食事と向き合わずチャレンジすることから逃げたり、食事の時間が億劫になったりすることもありました。

このような選手達は現在も皆さんの身近にいるかもしれません。

ラグビーのようにフィジカルがパフォーマンスに影響するスポーツでは、体を強く大きくすることを求めることが多いです。

しかし身体作りにも個人差があるので、食事の必要性を個々が理解し、自分に合う食べ方で身体作りをしていくことが大切だと感じています。

ジュニアラグビー選手の1日のご飯量の目安

ジュニア期は体も心も発達発育していく成長期であり、ガッチリとしたラガーマンといった身体作りの前に健やかな体と心の成長を促していくことを優先していく時期です。

運動(練習)をしている量や強度が増えれば、その分の食事量が必要となるため、エネルギー不足にならないことが発育発達を促すためには大切です。

以下の図にジュニア選手の1日のごはん量の目安を示しています。

ジュニアアスリートの摂取カロリーのご飯の量

男子
年齢 1日の
エネルギー
1日の
ご飯の量
6~7歳 1,750kcal 600g
8~9歳 2,100kcal 700g
10~11歳 2,500kcal 800g
12~14歳 2,900kcal 900g
15歳 3,150kcal 1,000g
女子
年齢 1日の
エネルギー
1日の
ご飯の量
6~7歳 1,650kcal 500g
8~9歳 1,900kcal 600g
10~11歳 2,350kcal 700g
12~14歳 2,700kcal 900g
15歳 2,550kcal 800g

1日の主食を「ごはん」で食べると想定した量になっていますが、選手が普段食べている量と比べていかがでしょうか。この量はあくまでも目安になるので、各選手の運動量や体重などによっても異なります。

1日に必要なごはん量を朝昼夕の3食と補食で食べきればOK。まずは1日の生活スケジュールを確認しながら「各食事でごはん量をどのくらい食べるか」を計画していきましょう!

必要な量が足りているかどうかは個人差もあるので「成長曲線」や同様のアプリ等で身長と体重の推移を記録し、経過を確認していきます。

発育発達は女子選手のほうが早いので、身長がとまるのも女子選手のほうが早く、男子選手は高校生でも身長が伸びる場合もあります。

ガッチリとごつい体作りは身長がとまってから意識していくことがポイントです。高校入学時177㎝の高身長から背が伸び、卒業時に184㎝だった選手もいます。

また身体作りには食事だけでなく「睡眠」も大切です。怪我をして一時的に睡眠時間が増えた高校ラガーマンの中にはリハビリ期間中に身長がぐんと伸びた選手もいます。

身体作りにとって食事も大切ですが、トレーニングや休養、睡眠、ケアなども必要であることは忘れてはいけません。

増量のための食事量

ご飯の多いカレー

選手は、運動をしていない人と比べて消化吸収を活発に行える時間が短い上に沢山食べる必要があり、効率よく消化吸収ができないという特徴があります。

たくさん食べても消化吸収されなければエネルギーや体の材料にならず、また食べる量も限界があるため、消化不良や下痢等を招く可能性もあります。

ただ運動量や強度の増加に伴い必要な食事量も増えるため、量を食べる経験も必要だと感じています。

増量のためのエネルギー量(食事量)は、普段の食事に+500~1,000kcal/日と言われています。

もし、1日500kcalのエネルギー量を増やしたとして、1食当たりのごはん量は50g程度増やすことになります。思ったより多くないと感じる方もいるのではないでしょうか?

食べる経験を育もう!

ラグビー少年

そして、栄養はチームプレーなのでビタミンやミネラル等も不足しないようにしたいので、好き嫌いなく何でも食べる力も身につけておきたいです。

嫌いな食べ物を全く食べないジュニア選手もいると思いますが、この先、競技を続けていく上で自分自身の好き嫌いで食事を選べない場合もあります。

何でもおいしく食べる経験やチャレンジを幼少期から育んでおくことは、どんな環境でもパフォーマンスを発揮していく上での土台となります。

「食トレ=何でもチャレンジして食べる」と考えてみてはどうでしょうか?食事もポジティブに、美味しく楽しい食トレをしていきましょう!

 

次回の記事:小中学生のラガーマン|無理やり食べさせるほうがいいのか?

参考文献

日本人の食事摂取基準2020年版(厚生労働省)
エッセンシャルスポーツ栄養学(市村出版)

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