突然ですが、「ご飯が怖い」と感じて炭水化物を避けてしまう女子アスリートがいることをご存知ですか?
お化けでもないのに「怖い」と感じるのは不思議に思われるかもしれませんが、私はその気持ちにとても共感できます。
スポーツの世界は閉鎖的で、身近な先輩の行動をマネしたり、チーム独特の文化があることもあります。
もちろん、それが悪いわけではありませんが、独自の栄養情報が実際にはパフォーマンスのために正しくないことも多いです。
今回のコラムでは、「いきなりご飯を増やすのはちょっと…」と抵抗のある選手たちへ、おすすめの献立を紹介します。
炭水化物が「邪魔者」に!?その背景とは
今でこそ、白米も炭水化物も大好きで、現役を引退した今でも体づくりに欠かせない大切なパートナーだと理解しています。
しかし、現役時代の私は、長距離ランナーとして体型やパフォーマンスを意識するあまり、「炭水化物は太る原因」と誤解し、「ご飯はできるだけ減らそう」「丼ものなんてありえない!」と思い込んでいました。
そのため、練習中があってもストイックにお米を減らす日々が続いていました。
当時はそれが原因とは気づきませんでしたが、疲れやすかったり、ケガや貧血に悩まされたり、記録がなかなか伸びないなど、本来ならば避けられた壁にぶつかることが多々ありました。
残念ながら、当時はSNSや栄養情報も今ほど身近ではなく、たとえ情報があったとしても、自分のフィルターで物事を判断してしまい、誤った努力を続けていたのです。
そのため、今でも同じような悩みを抱える選手たちをサポートするとき、過去の自分を重ねてしまうことがあります。
実際、炭水化物はアスリートにとって欠かせないエネルギー源であり、体を動かすための大事な「燃料」です。
「どんなにカッコいいスポーツカーでも、ガソリンがなければ動かないよね!」
「体重は気になるかもしれないけれど、私たちはダイエット部じゃないから、結果を伸ばすために最適なことをしよう!」
とお伝えすることも多いです。
ご飯が苦手でも安心!?おすすめ献立
今回は、秋の旬であるさつまいもを使った「さつまいもご飯献立」をご紹介します。
<メニュー>
・さつまいもご飯(ごはん100g)
・鮭のホイル焼き(鮭1切れ、しめじ、小松菜、玉ねぎ)
・納豆キムチ
・春雨スープ
・フルーツヨーグルト(ヨーグルト、キウイ、バナナ、ハチミツ)
<栄養価>
エネルギー:660kcal
タンパク質:40g(24%)
脂質:16g(21%)
炭水化物:98g(60%)
鉄:5.4mg
カルシウム:330mg
ビタミンC:76mg
お米以外での炭水化物チャージ
炭水化物が苦手な選手に、いきなりご飯を増やすのは、心にも体にも負担をかけてしまうことがあります。
急に増やしてしまうと、体がうまくエネルギーに変えられず、だるさや気持ち悪さにつながることも。そのようなときは、お米ではなく果物を活用しましょう!
果物に含まれる【果糖】は、炭水化物をしっかり燃料に変えるのをサポートしてくれます。果物なら、抵抗なく食べられる選手も多いのではないでしょうか。
また果物だけでなく、芋類もアスリートにとってしっかりエネルギーになる頼もしい食材です。
お米の量が少なめでも、さつまいもで炭水化物の量をしっかりカバーできるので、バランスの良いエネルギー補給が可能です。
また、かぼちゃを使った「かぼちゃ芋もち」や「かぼちゃスープ」も選手たちに人気のメニューです!芋類はさまざまな形で活用できるので、バリエーションを増やして楽しんでみてくださいね。
春雨も実は頼もしい炭水化物!
さらに、スープには春雨を入れて、つるつると食べやすくしてあります。
「春雨=低カロリー」と思っている方もいるかもしれませんが、春雨はじゃがいもやさつまいもなどの芋類のでんぷんから作られており、主な栄養は炭水化物。
だから、春雨を取り入れることで、自然とエネルギー補給につながるんです。
実際に「春雨なら気持ち的に負担なく食べられる」という選手の声も多く聞きます。
炭水化物に抵抗がある場合、まずは春雨のように負担が少なく感じるものから取り入れてみてはいかがでしょうか。
まとめ
選手はさまざまな状況の中で競技に向き合っています。もちろん、教科書通りにいかないこともありますが、そういったケースも懐広く受け止めながらサポートするのが私たち栄養士の役目です。
「炭水化物が怖い…」と感じている選手も、果物や芋類の力を借りながら、少しずつエネルギーをしっかりと摂り、ベストなパフォーマンスを発揮できる体をつくっていけるように。
そんなサポートの一助になれば嬉しいです。