こんにちは!管理栄養士の足立です。
女子アスリートの皆さん、日々のトレーニングや大会、本当にお疲れさまです!
その努力がカラダをつくり、競技での力に繋がっている中で「カラダづくりで食事量に気を遣っている…」という声もよく耳にします。
女性アスリートは、体重管理や月経周期の影響で体調やコンディションが変わりやすく、他の選手以上に丁寧な管理が必要です。
時に「食べたいだけ食べた分、走って消費しよう!」「おやつに150Kcalのシュークリームを食べたから、夕飯のお米は抜いて調整しようかな」といった声も聞きますが、少しの選択の違いで、せっかくの努力が効果的に活かされないこともあります。
今回は女子ならではの特性を知り、競技中はもちろん、引退後も健やかに過ごせるカラダをつくるために、女性アスリートの食事のポイントについて学んでいきましょう!
目次
女性アスリートの身体の特徴
女性アスリートは、男性とは異なる身体的特徴を持ち、特に月経周期の影響を強く受けることがあります。この影響は、競技パフォーマンスや体調管理において大きな差を生むこともあるため、栄養面での工夫が必要です。
例えば、生理前になるとむくみが気になったり、食欲が変わったりすることはありませんか?
これらはホルモンの影響によるもので、多くの女性が経験することです。このような変化を前向きに捉えつつ、適切な食事でサポートすることが大切です。
また、女性は生理周期を通して鉄分を失いやすいため、鉄分不足による疲労感や貧血に悩むことも多いです。こうした女性ならではの特性をしっかり理解し、パフォーマンスを最大限に引き出すためには、適切な栄養補給が不可欠です。
女性アスリートの食事の基本は?
女性アスリートにとって、食事は「競技力の一部」です。トレーニングに力を入れるだけでなく、栄養面でもしっかりと体を支えることが、競技パフォーマンスを安定させるために重要です。
特に10代の成長期には、身長や体重の変化が急激で、ダイエットに興味が出ることもあるでしょう。しかし、無理な減量は逆にパフォーマンスの低下や摂食障害に繋がることがあります。
バランスの取れた食事を心がけ、エネルギー源となる炭水化物、筋肉の修復に欠かせないタンパク質、そして健康を保つために必要な脂質を適切に摂取することが基本です。
女性アスリートに必要なエネルギー(カロリー)
食事量は基本的には、「日本人の食事摂取基準」をもとに考えれば良いです。必要なエネルギー・栄養素量を年齢・性別・活動量別に示しています。
ハードな練習をするアスリート特有の値というわけではありませんが、練習をし怒り継続できるからだ作り、様々なスポーツ障害対策には最低限これくらいのエネルギーが必要ということは知っておいていただきたいです!
一般的なアスリートの場合、「身体活動レベルⅢ」のエネルギー量を参考にしていただくと良いと思います。
年齢 | エネルギー必要量 (kcal) |
8~9歳 | 1,900 |
10~11歳 | 2,350 |
12~14歳 | 2,700 |
15~17歳 | 2,550 |
18~29歳 | 2,300 |
30~49歳 | 2,350 |
※参照:日本人の食事摂取基準(2020年版)身体活動レベルⅢ
こちらはあくまで一般的な考え方です。もちろん、練習量などの様々な状況によって、個々に必要な量は変わってきますので、あくまで参考程度にしてくださいね。
炭水化物を「太る原因」として避ける方もいるかもしれませんが、アスリートにとって炭水化物は重要なエネルギー源です。体を動かすための燃料ですので、恐れることなくしっかり摂りましょう。
特に運動後には、筋肉を修復し、次のトレーニングに備えるために、タンパク質も忘れずに。
脂肪を恐れずにしっかり摂り、次のトレーニングに備えましょう。タンパク質は鶏肉だけでなく、豚肉や牛肉、魚、卵など、良質なタンパク源をバランスよく取り入れることを心がけましょう!
生理前・生理中の食事のポイント
むくみ対策!加工食品や塩分は控えめに
生理前、むくみが気になったことはありませんか?ホルモンの変動によって、体が水分をため込みやすくなり、顔や足がパンパンになることも。
ストレスがたまっていると、ついカップ麺などの加工食品や塩分の多い食事に手を伸ばしてしまうかもしれませんが、実はこれがむくみを悪化させる原因になることがあります。
なので、この時期は塩分を控え、カリウムを多く含む食材を意識して摂ることがポイントです。バナナやほうれん草など、むくみを和らげる食品を取り入れて、体をリフレッシュさせましょう。
良質なタンパク質を
「プロテイン飲料を飲んだらムキムキになってしまうのでは?」と心配していませんか?
実際のところ、適度なプロテインの摂取はむしろ筋肉の修復に役立ちます。国際スポーツ栄養学会が発表した共同声明によると、生理前には体がタンパク質を分解しやすくなるため、良質なタンパク質をしっかり摂ることが重要です。
タンパク質をしっかり摂ることで、体の回復力が高まり、疲れにくくなりますよ。鶏肉や豆腐、魚を毎日の食事に取り入れて、体を強くサポートしましょう。
生理中の糖質制限は危険!
生理中に糖質制限を考えていませんか?実はこの時期、体はエネルギーを必要としています。生理中はエネルギー消費が高まるため、炭水化物をしっかり摂ることが大切です。
過度な糖質制限は、エネルギー不足や疲労感の原因になりかねません。
特に試合やトレーニングのある日は、しっかりと炭水化物を摂り、体に必要な燃料を供給しましょう。玄米やオートミール、全粒粉のパンなど、消化に優れた食品を選ぶのがおすすめです。
鉄分補給は特に意識して
生理による鉄分不足が心配される女子アスリートにとって、鉄分は重要な栄養素です。不足すると体が酸欠状態になり、疲れやすさやパフォーマンス低下、貧血のリスクが増します。
赤身肉、マグロ、レバー、ほうれん草、卵など鉄分豊富な食材を毎日の食事に取り入れましょう。
ただし、特定の食材ばかり食べるのは偏りの原因に。栄養のバランスを大切にしながら、色々な食材から必要な栄養を取り入れることが、健康的なカラダづくりへの近道です!
<鉄分の1日の必要量>
年齢 | 推奨量 | |
月経なし | 月経あり | |
8~9歳 | 7.5mg | ー |
10~11歳 | 8.5mg | 12.0mg |
12~14歳 | 8.5mg | 12.0mg |
15~17歳 | 7.0mg | 10.5mg |
18~29歳 | 6.5mg | 10.5mg |
30~49歳 | 6.5mg | 10.5mg |
※参照:日本人の食事摂取基準(2020年版)
鶏レバーの注意点
以前、全国強豪チームの寮の献立作成をお手伝いした際、毎日のようにレバーが提供されているとのお話を伺いました。
確かにレバーは鉄分が豊富で、貧血予防に役立つ優れた食材ですが、同時にビタミンAも多く含まれています。
<鶏レバーの甘辛煮 小鉢一杯分(約147g)の栄養>
栄養素 | 鶏レバー | 17歳女性の 1日の推奨量 |
耐容上限量 |
鉄 | 8.45mg | 10.5mg | 40mg |
ビタミンA | 12,600μg | 650μg | 2,600μg |
この両方の栄養素は大切ですが、毎朝・晩に小鉢1杯ずつ取り続けることで、過剰摂取のリスクも出てきます。
このチームでは、さらに鉄分サプリメントも併用していたため、サプリメントは選手の体調や必要に応じて摂取し、レバーは週1〜2回に抑える工夫を取り入れました。
また、その代わりにフルーツの回数を増やし、ビタミンCを豊富に含む食品と組み合わせることで、鉄分の吸収がより効率的に行われるようにしました。
毎日の食事はアスリートにとって大切なエネルギー補給の時間であると同時に、リラックスのひとときでもあります。
「これを必ず食べなければ!」と義務感で食事が苦痛にならないように、バランスを大切にしながら工夫を加えていきましょう。鉄分不足を防ぐための対策も、楽しみながら取り入れていけると理想的ですね。
おすすめ食事メニュー例
鉄分補給といえば「レバー」を思い浮かべがちですが、マグロや小松菜にも豊富に含まれています。
例えば、これらを丼ものにして食べると、炭水化物も一緒に摂取できるため、バランスの良い補給がしやすくなりますよ。
メニュー例はこちら!
<献立>
・マグロとアボカドのポキ丼(アボカド1/2個、マグロ70g、卵黄、ねぎ、ごま)
・小松菜としめじのお浸し
・さつまいもの味噌汁
・りんごヨーグルト
<栄養価(1人分)>
エネルギー:780kcal
タンパク質:34g(17%)
脂質:24g(27%)
炭水化物:113g(57%)
鉄:5.87mg
ビタミンA:359mg
ビタミンC:48.7mg
ビタミンE:5.0mg
体の重さの本当の原因は?
選手とお話をしていると「カラダが重くて、あと2kg体重を減らさなければ…」と悩む声を聞くことがあります。
しかし、食事内容を拝見すると、トレーニング量に対して栄養補給が足りていないケースが多いのです。
この不足が続くと、筋肉や骨が十分に修復できず、エネルギー不足で疲労骨折を招いたり、体が「エコモード」に入ってしまい、気づかないうちにパフォーマンスが低下してしまうことも。
カラダの重さ=体重だけでなく、しっかりと動けるためのエネルギー補給ができているかも見直してみましょう。
3食のどこかを抜いていたり、必要な補食が取れていない場合は、積極的に補っていくことが大切です。
食事や補食を上手に取り入れ、効率よくエネルギーを補充することで、パフォーマンスの向上にもつながります!
まとめ
食事は、日々のトレーニングと同じくらい、アスリートにとって大切なパートナーです。
自分のカラダに必要な栄養をしっかりと理解し、無理なく続けられる方法で栄養補給をしていきましょう。
鉄分も、エネルギーも、適切なタイミングとバランスで取り入れることで、体調もパフォーマンスも安定していきます。
「自分のカラダを大切にする」という視点で、食事と向き合うことが、競技生活の充実だけでなく、将来の健康にもつながります。
毎日の食事を楽しみながら、ベストなコンディションで目標に向かって進んでいきましょう!