減量・ダイエット

【管理栄養士監修】なぜ、週5で練習するアスリートでも太るのか?

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こんにちは。スポーツ栄養士の盛岡です。

一般的にダイエットは体脂肪や体重が多いときに行うものですが、アスリートは競技力向上のため、体脂肪を落とす目的で減量が必要になるときがあります。マラソンやサッカーなどの持久系競技では体を軽くするために、体操やバレエ・フィギュアスケートなどの審美系競技では美しいプロポーションをつくるために減量を行うことも多いでしょう。

しかし、食事からのエネルギー源が不足すると、体は蓄積されている糖質や体脂肪からのエネルギー産生だけでなく、筋肉を分解することでもエネルギーを産生します。アスリートの減量は単なるダイエットではないため、減量のせいでパフォーマンスが低下することは避けなければなりません。

誤った食事方法で減量を行うと、減量に失敗するだけでなく、摂食障害などの重大な障害を引き起こす原因にもなりかねません。今回はアスリートが太る原因や、減量を行う上での食事方法の基本について解説していきます。

アスリートが太る原因

まず痩せる方法を説明するにあたり、改めてなぜ太るのかについてご説明します。一般の人よりも多く運動し消費エネルギーが多いスポーツ選手にとって、体脂肪が増えてしまう原因は遺伝的な要因を除いて、食生活に起因することがほとんどです。主な原因は次の2つです。

「食べないと」という思い込みや油断

体脂肪が蓄積する理由はシンプルです。体内のエネルギー(カロリー)の摂取と消費のバランスがくずれ、摂取エネルギーが消費エネルギーを上回ったときに、過剰なエネルギーが脂肪に変換されることによって生じます。

健常者では両者のバランスが取れていて、一定の体重が保たれています。しかし、過食で摂取エネルギーが多くなると、過剰になったエネルギー源は体脂肪に変えられます。

特にアスリートの場合、炭水化物やプロテインのとり過ぎによるエネルギーの過剰が意外に多いのです。

アスリートの場合、「体を大きくしないといけない」「筋肉をつけないといけない」という思いから食事やプロテインを必要以上にとり過ぎたり、反対に「これだけ運動しているのだから少しくらい食べても大丈夫だろう」という油断からお酒やお菓子をとりすぎたりしてしまうのです。

適量のカロリーや糖質、たんぱく質の摂取が大切

疲労を回復し、筋肉を付けるには確かに多くのたんぱく質とカロリーを必要としますが、吸収された後のたんぱく質が全て筋肉の合成に使われるわけではありません。体内の糖質や脂肪、ホルモンなどの生理活性物質の合成にも利用され、過剰な分は脂肪に変換されます。

たんぱく質はとればとるほど筋肉になるわけではなく、過剰な分は脂肪にしかならないのです。体力アップや増量をするとしても、今の自分の体格と練習量に見合った栄養補給をしなければいけません。

「競技別&5分でできるカロリー計算」

「アスリートが筋肉を付けるために必要な5つの食べ物と食事量」

また、いくら激しい運動をしていても、油っこい食事やお菓子、飲酒などによって摂取エネルギーは容易に消費エネルギーを上回ります。仮に5kmのランニングを行ったとしても、消費するエネルギーはおよそ300kcalなので、菓子パン1個で簡単に補給できてしまうのです。

太りやすい人ほど食事中のエネルギー(カロリー)の見積もりが甘いという研究報告もあります。過剰な分は筋肉にはならないと心得て、普段からこまめに体重と体脂肪率を測ってチェックすることが大切です。

不規則な食習慣

夜食

夕食のドカ食い・夜食

代表的なものに夜食症候群といわれる食習慣の異常があります。これは「どか食い」ともいわれるように、1日の食事の大半を夜に摂ることによって体脂肪が蓄積しやすくなります。

夜は、副交感神経というものがよく働き、食べたものが栄養として胃腸から吸収されやすくなります。さらに夜は消費エネルギーが少ないため、摂取したエネルギーが過剰になりやすく脂肪として蓄積されることになります。

欠食

食事を抜くことも体脂肪の蓄積と関係があります。1日に食べる量を一定にして、これを2~5回に分けて食べさせる実験をヒトで行うと、食べる回数の少ない2回の場合が最も太りやすいという結果が得られています。

厚生労働省と農林水産省が作成した「食事バランスガイド」においても、朝食の欠食は次の食事が過食につながる可能性もあることから、肥満の発症を助長すること、午前中のエネルギー供給が不十分となり体調が悪くなることなどの問題点が指摘されています。

早食い

人は食べ始めてから満腹感を感じるまでに20分ほどかかります。早食いの人は食べ物を噛む回数が少ないのも相まって、満腹感を感じる前にどんどん食べて、カロリーを摂りすぎてしまうのです。

よく噛んでゆっくり食べるというのは、食べ過ぎを防ぐだけでなく、消化をよくしてその後の運動を支障なく行えることにもつながりますので、ぜひ心がけてみて下さい。

休養日・オフ期のドカ食い

アスリートは運動によるカロリー消費量がとても多いため、1日に必要なカロリーは3,000~4,000kcal、あるいは5,000kcal以上になることもあるでしょう。そのため一般人に比べ、トレーニングを行う日と行わない日では1日の消費カロリーに大きな落差があります。

しかし、トレーニングを行わなかったからといって、それに合わせて食欲も落ちるとは限りません。学校の部活動を引退した後に、急激に太った経験は多くの人があるのではないでしょうか。

アスリートは消費カロリーの落差が大きい

ケガをしたときや数日間の休養があるときには、食事量は意識しないと簡単にカロリーオーバーになってしまいますので、注意が必要です。

アスリートが痩せる方法

摂取エネルギーの制限と規則正しい食生活が大原則

食事制限

体脂肪がついてしまう原因は摂取エネルギーのとり過ぎや不規則な食生活にあります。つまり減量においては、「バランスのよい食事を取りながら、摂取エネルギーを消費エネルギーよりも少なくする」ことが王道なのです。「カロリーを減らせば痩せるのは当たり前だ」と思われるかもしれませんが、当たり前だからといって簡単なことではありません。

単純に体重を落とし、体を細くしたいのなら「夜ごはんを抜く」だけでも痩せることはできるでしょう。しかしアスリートはただ体重を落とせばいいのではなく、筋肉量やコンディションを維持しながら、体脂肪を落とさなければなりません。そのためには栄養を偏らせることなく、適切な範囲で摂取エネルギーを調整する必要があるのです。

次回の「アスリートが筋肉を落とさずに減量する方法」では食事制限をするにあたっての方法や注意点について、詳しく解説していきます。

まとめ

・食べ過ぎや不規則な食生活はアスリートでも太る原因になる。
・減量のための大原則は摂取エネルギーの制限。

参考文献

林淳三:「改訂 基礎栄養学」.建帛社,2010.
吉田勉 監修:「わかりやすい食品機能栄養学」.三共出版,2010.
嶋津孝・下田妙子 編:「臨床栄養学 疾病編[第2版]」.化学同人,2010.
日本肥満学会編集委員会 編:「肥満・肥満症の指導マニュアル(第2版)」.医歯薬出版,2001.
第一出版 編:「厚生労働省・農林水産省決定 食事バランスガイド―フードガイド(仮称)検討会報告書―」.第一出版,2006.
小林修平・樋口満 編:「アスリートのための栄養・食事ガイド」.第一出版,2001.
田口素子・樋口満 編:「体育・スポーツ指導者と学生のためのスポーツ栄養学」.市村出版,2014.

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