スポーツ時の水分補給

【2024年】スポーツドリンクの比較と管理栄養士のおすすめ

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スポーツドリンクの目的別のおすすめ

こんにちは!管理栄養士の盛岡です。

前回の「運動中の熱中症予防と水分補給の方法」では、熱中症対策のためには飲み物は水ではなくスポーツドリンクを選ぶことが大切であるとお伝えいたしました。

スポーツドリンクはポカリスエット、アクエリアス、ラブズスポーツなど、様々なものが市販されていますね。ではそれぞれのスポーツドリンクは、どのような違いがあるか分かりますでしょうか?

味や価格だけで選んでいる人も多いかと思いますが、適切な飲料を選ぶことは、練習や本番の競技に集中していどむためにとても重要です。また、誤った使い方をすると、運動中に熱中症を引き起こしてしまったり、中毒を引き起こしてしまったりする危険性もあります。

成分を見てもいまいち違いが分からない人も多いと思いますので、今回は市販のスポーツドリンクを比較し、状況に合わせたおすすめの飲料についてご説明していきます。

【追記】粉末のスポーツドリンクの比較とおすすめはこちら ›

スポーツドリンクの成分を見るポイント

スポーツドリンクの選び方

スポーツドリンクはシンプルな成分からできていますが、商品によって内容が大きく異なるものもあります。スポーツドリンクの成分を見る際に大切なポイントは主に以下の3つです。

①ナトリウム(塩分)

発汗により水分と同時にナトリウムが体外に放出されます。水分だけの補給ですと体液が薄まり、低ナトリウム血症を引き起こしてしまいますので、ナトリウムの補給も必要になります。

ナトリウムは100mLあたり40~80mg含まれているものが推奨されています。

「スポーツドリンク」のカテゴリで売られている飲料はほとんどこの範囲内のナトリウムを含んでいて、あまり大きな違いはありませんが、その他のソフトドリンクを利用したい場合は参考にするとよいでしょう。

②糖質(炭水化物)

糖質は運動中のエネルギー源となるだけでなく、ナトリウムと一緒に摂取することで、腸管での水分の吸収を促進する働きもあります。糖質濃度が2.5~8%含まれていると、水分の吸収効率がよくなります。

糖質や塩分の濃度が低いものは浸透圧が低く「ハイポトニック飲料」と呼ばれ、発汗量の多いときにスムーズに水分が吸収されます。

一方で糖質や塩分の濃度が高いものは浸透圧が高く「アイソトニック飲料」と呼ばれ、安静時や発汗量の少ないときの水分補給およびエネルギー補給に適しています。

アイソトニック飲料とハイポトニック飲料について詳しくは「アイソトニック飲料とハイポトニック飲料の違い」をご参照下さい。

③疲労回復成分

スポーツドリンクに不可欠な成分は塩分と糖分ですが、その他各商品で違いを出すために、次のような成分が配合されていることがあります。

ビタミン

ビタミンB群は体内の糖質、脂質、たんぱく質からのエネルギー産生に関わっており、特にビタミンB1は糖質の代謝と疲労回復に役立つ栄養素です。

ビタミンCは様々な働きがありますが、スポーツに関係する働きでは下記のものがあります。

  • 鉄分の吸収を促進し貧血を予防する
  • 白血球の増加や粘膜の健康維持に関わり免疫力を高める
  • エネルギー代謝を活発化して運動時に分泌が高まるアドレナリンの合成に関わる
  • 副腎皮質ホルモンの合成に関わりストレスを和らげる
  • 抗酸化作用
  • 軟骨成分でもあるコラーゲンの合成

水溶性ビタミンであるビタミンB群とビタミンCは発汗によっても損失するので、アスリートは多く補給する必要があります。

アミノ酸

アミノ酸はたんぱく質を構成する成分で、BCAA(バリン・ロイシン・イソロイシンの総称)やアルギニン、グルタミンなど様々な成分があります。体の中では免疫力を高めたり筋肉の構成成分になったりなど種類によって様々な役割を持っています。

経口摂取によるヒトでの有効性については十分な科学的根拠がないものが多いのですが、BCAAは筋肉のエネルギー源にもなるアミノ酸で、運動時の疲労を抑える効果があるとして「機能性表示食品」で認められている商品もあります。

ただし注意点として、競技中に飲むとお腹が持たれる可能性があるということです。

アミノ酸は摂取後胃に入ると、消化酵素が誘導されるために一時的に胃液量が増加する可能性があり、また水分・糖分・塩分のみのシンプルなスポーツドリンクに比べて、アミノ酸が入っていると消化管の滞在時間がはるかに長くなるためです。

安全性は高い成分ですので、一度使ってみていい体感が得られるのであればBCAAの入った飲料を選ぶのもいいですが、もし競技中に飲んでお腹がもたれるように感じる方は、利用をやめるか、競技中は控えて競技の前後に飲むのがよいでしょう。

クエン酸は?

クエン酸は「α-ヒドロキシ酸」の一種で、柑橘系の酸味があり味付けにも使われる成分です。

糖代謝 (クエン酸回路) の中間体としてエネルギー代謝において中心的な役割を果たしていることから、俗に「疲労回復によい」と言われています。しかし経口摂取によるヒトでの有効性については十分な科学的根拠がありませんので、気休め程度に考えておく方がいいでしょう。

関連記事:クエン酸は疲労回復に効果なし? ›

市販のスポーツドリンクの比較

市販されている主なスポーツ飲料の成分を比較しました。

ナトリウムについては40mg/100mL以上含まれているものをピックアップしました。

ほとんどの製品はナトリウムが40~60mg/100mLの範囲にあり、大きな差はありません。

ここでは製品によって違いの大きい糖質と、その他の機能性成分の有無に着目して図に表しました。

スポーツドリンク比較表

状況別のおすすめスポーツドリンク

糖質の濃度では大きく差が出ていることが分かるかと思います。

それぞれの特徴を踏まえて、目的や状況に応じて使い分けるとよいでしょう。下記に使い分けの例を記載いたします。

発汗量の多いとき・軽い運動時・甘くないものがほしいとき

  • ポカリスエット イオンウォーター
  • スーパーH2O
  • ラブズスポーツ
  • アミノバイタル
  • 神戸ビバレッジ スポーツウォーター

夏場で気温の高いときや長時間の運動時など発汗量の多いときは、水分と塩分の補給を最優先する必要があります。

「ラブズスポーツ」「スーパーH2O」「イオンウォーター」といった糖分濃度が低く、浸透圧が低いハイポトニック飲料は運動中の発汗で体液が薄まっている状態でも、素早く吸収されます。

またウォーキングなど軽い運動をしながらダイエットする方にも、カロリーが低いのでおすすめです。「甘くないスポーツドリンクがほしい」という方にも糖分が控えめでよいでしょう。

真夏日でもこれらの飲料で対応は概ねできるかと思います。ただ練習中に気分が悪くなりやすい人や熱中症になってしまった場合などは、こちらの図には記載していませんが「経口補水液」を飲む方がより水分と塩分を効率よく補給できます。(味は美味しくないですが・・・)

関連記事:経口補水液とは? ›
関連記事:経口補水液の比較 ›

長時間の運動時や運動前

  • ポカリスエット
  • アクエリアス
  • グリーンダカラ
  • miuプラススポーツ
  • アミノバリュー
  • ボディメンテ

長時間の運動時には、エネルギーを多く消費し、また血糖値も低下していきます。エネルギーや血糖値の低下はパフォーマンスを下げるだけでなく、集中力を落としてケガの原因にもなりかねません。

運動時間が1時間以上におよび、かつ発汗がそれほど多くない時期(春・秋・冬)の場合は、エネルギーの補給を優先し、糖分濃度が比較的高いアイソトニック飲料を飲むとよいでしょう。図の中では糖分濃度4.5%以上のラインにある「アクエリアス」や「ポカリスエット」などが該当します。

運動前のタイミングで、エネルギー補給と水分補給の目的で飲むのもよいでしょう。

(補足)マラソンランナーのスペシャルドリンク

マラソンやロードバイクのレースでは大量に発汗がありますが、エネルギーも大量に消費されますので、糖分を主体としたエネルギー補給も必要です。

これらの種目のトップアスリートは、自分でアレンジした「スペシャルドリンク」で給水することがあります。

例えばスタート地点に近い位置では水分および塩分補給が主体のハイポトニック飲料を飲み、ゴールが近づくにつれてエネルギーがとれるように糖分の高いアイソトニック飲料を準備する傾向にあります。

一般の方はここまでこだわる必要はありませんが、その日の環境やトレーニング内容などによって適切な飲料を考えてみるとよいでしょう。

減量・ダイエット中のとき

  • アクエリアス ゼロ
  • VAAMウォーター

カロリーが気になる減量中の方は、糖分が非常に少なくカロリーゼロ(※)のこれらの飲料を飲むのもよいでしょう。

※「カロリーゼロ」とは

「カロリーゼロ」や「ノンカロリー」といった、カロリーを含まない旨は100mLあたり5kcal以下であれば表示ができると食品表示法で定められています。つまり、仮に500mLあたり24.9kcalであっても「ゼロ」という表示は可能です。

例えば「アクエリアス ゼロ」の原材料名には一番前に「果糖」が書かれてあり、炭水化物も100mLあたり0.7gが含まれています。したがって完全な0kcalではありませんので注意しましょう。

なお前述しましたように、適度な糖分は水分と塩分の吸収を促進します。これらの飲料も吸収されないわけではありませんが、発汗量が多く熱中症対策が必要なときにはハイポトニック飲料をおすすめします。

これらは人工甘味料で甘味づけがされていますので、甘さがスッキリしたものがいい方は「ポカリスエット イオンウォーター」などの方がよいでしょう。

疲労回復・抑制には

ビタミン入り飲料

  • アクエリアス 1日分のマルチビタミン
  • ビタミンウォーター
  • キレートレモンCウォーター

エネルギー産生や疲労回復効果があるビタミンB群や、抗酸化作用のあるビタミンCを含んでいるのでおすすめです。糖分や塩分も他と同等に配合されているのでハイスペックです。

アミノ酸入り飲料

  • アミノバリュー
  • アミノバイタル
  • VAAMウォーター

乳酸菌入り飲料

  • ボディメンテ

「アミノバリュー」や「アミノバイタル」・「VAAMウォーター」には機能性成分としてアミノ酸が含まれています。アミノ酸は筋肉のエネルギー源となり、運動中の筋肉疲労の抑制に役立つことが示唆されていますので、スタミナが持続しない、疲れが溜まっていると感じる方におすすめです。

特に「アミノバリュー」はかなり多くのアミノ酸が補給できます(500mLのペットボトル1本あたりBCAA4,000mg、アルギニン1,000mg)。ややお値段は高いですが機能性は非常に高い商品だと思います。

「VAAMウォーター」は特定保健用食品(トクホ)として認可され、「カラダを動かすことによる体脂肪の減少をさらに助ける」という表示がされるようになっています。

ビタミン入り飲料とアミノ酸入り飲料についてはどちらがいいとはっきり言えるものではありませんが、それぞれ試してみて体感が得られるものを選ぶとよいでしょう。

「ボディメンテ」は日々の体調管理をサポートするとして「乳酸菌B240」という乳酸菌が配合されています。こちらはトクホや機能性表示食品ではありません。

まとめ

  • 運動時の飲料は水分だけでなく、糖分と塩分もとれるものを選ぶ。
  • 各スポーツドリンクは糖分とアミノ酸などの成分で大きな違いがある。状況に応じて使い分けるようにしよう。

参考文献

日本体育協会:「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」,2013.
谷口英喜:「経口補水療法ハンドブック[改訂版]」.日本医療企画,2013.
国立健康・栄養研究所:「『健康食品』の安全性・有効性情報」,http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail25.html
スポーツドリンク各メーカーのホームページ

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