スポーツ栄養学の基本

【管理栄養士監修】ラクラク計算!筋肉をつける食べ物と必要な摂取量

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
アスリートに必要な主菜の摂取量

こんにちは!スポーツ栄養士の盛岡です。

アスリートは筋肉を付けるために一般の人よりも2倍くらい多くたんぱく質をとらないといけないと言われますが、「で?どうしたらいいの?」と思う方も多いのではないでしょうか。

「アスリートに必要なたんぱく質の摂取量」では競技種別のたんぱく質摂取の目安量についてご説明いたしましたので、今回は「料理として」何を・どれだけ食べるといいのかについて、簡単な計算方法をご説明いたします。

増量するための食事方法についてはこちら

筋肉をつけるための食べ物

筋肉を付ける食べ物は、良質なたんぱく質を含んでいる肉・魚・卵・大豆製品・乳製品の5つの食品群です。食事においてはハンバーグや煮魚、卵焼き、納豆などの「主菜」に分類される料理に多く含まれています。

よく筋肉をつけるためには鶏のささみがよいと言われますが、アスリートの体づくりに必要な栄養素はたんぱく質だけではありません。食品ごとに含まれる栄養素は異なりますので、色々な食べ物をまんべんなく食べることが大切です。

肉や魚などを食べればいいことは小中学校の食育の授業でも習いますので、分かっている方も多いでしょう。しかし、問題はその”量”です。

必要な食事量を把握するために、肉が何グラム、魚が何グラムと1つ1つ食材ごとに考えるのは非常に大変です。そこで必要な量を大まかに計算するために、厚生労働省と農林水産省が策定している「食事バランスガイド」が役に立ちます。

食事バランスガイドとは食事内容を主食・主菜・副菜・乳製品・果物の5つの料理区分に分類して、1日に必要な食事量として「何を」「どれだけ」食べたらよいかを、食品や料理単位で簡単に計算するためのツールです。

食事バランスガイド

食事バランスガイドと各料理区分のアスリートにおける役割についてはこちら

「どれだけ」の単位は、一定のたんぱく質量を基準として「1つ」「2つ」という数え方をしています。

例えば、納豆は1パックで主菜「1つ」と数え、一般的な成人男性は1日に3~5つ分の主菜が目安に定められています。つまり成人男性の場合は納豆だけで換算すれば3~5パック分を主菜として食べる必要がある、ということになります。

この考え方はスポーツ選手においても応用することができますので、まずは具体的な数え方についてご説明していきます。

主菜の量の数え方

主な主菜の数量(つ)は下記の写真のようになります。詳細な食材の重量と料理区分の数量(つ)について知りたい方は、農林水産省の「SV早見表」をご参照下さい。

肉料理

肉料理は1皿で主菜2~3つです。また唐揚げは大きさにもよりますが、およそ3個で主菜2つになります。お肉が70gくらいで2つになりますので、普段料理をする方はこのことも覚えておくとよいでしょう。

ハンバーグは3つ肉野菜炒めは1皿で主菜2つ唐揚げは3個で主菜2つ

魚料理

魚料理はスーパーやコンビニで売られている1切れで主菜2つになります。

鮭の塩焼きは主菜2つ

大豆製品

豆腐は副菜のイメージがありますが、たんぱく源の食品のため主菜に分類されます。数量は1/3丁(100g)で1つです。納豆も1パックで1つです。また、豆乳は飲み物ですが、同様にたんぱく源になるためコップ1杯で主菜1つとカウントしましょう。

冷奴は主菜1つ納豆は1パックで主菜1つ

卵は1個で主菜1つです。

目玉焼き1皿で主菜1つ

単品料理

単品料理は主食・主菜・副菜が組み合わさったものになりますので、それぞれ料理区分ごとに数える必要があります。

主食の数え方についてはこちら

カレーでしたら主菜は2つで、そのほか主食が2~4つ、副菜2つになります。

カレーは主菜2つ

チャーシュー麺なら主菜は2つで、主食が2~3つになります。

チャーシュー麺は主菜2つ

カツ丼は主菜が3つで、主食が2~3つです。

カツ丼は主菜3つ

ハンバーガーは写真のようなオーソドックスなもので主菜2つで、主食は1つです。

ハンバーガーは主菜2つ

アスリートの主菜の摂取目安量

必要な主菜の量は競技種目によって異なります。瞬発系の能力が要求される競技ほど、1日の摂取カロリーに対するたんぱく質の割合は高くしなければなりません。

下記は競技種ごとの主菜の目安量になります。1日のエネルギー量は体重ごとに記載していますが、細かく計算したい方は「競技別&5分でできるカロリー計算方法」のページを参考にして下さい。

※目安量は週に5日以上の練習をしている高校生以上の方を対象としています。
アマチュアスポーツ選手の目安量はこちらをご参照下さい。
小学生~中学生の目安量はこちらをご参照下さい。

瞬発系競技

野球、陸上短距離、陸上投てき(砲丸投げ、やり投げ、円盤投げ、ハンマー投げ)、陸上跳躍(走り幅跳び、高飛び)、体操、水泳距離、柔道、剣道、ボクシング、スピードスケート、ゴルフ、など

男性

体重(kg) エネルギー(kcal) 主菜量(つ)
51~60 2,800~3,200 6~7
61~70 3,200~3,600 7~8
71~80 3,600~4,000 8~9
81~90 4,000~4,400 9~10

女性

体重(kg) エネルギー(kcal) 主菜量(つ)
36~40 1,600~2,000 4~5
41~50 2,200~2,400 5~6
51~60 2,600~2,800 6~7
61~70 2,800~3,200 7~8
71~75 3,200~3,600 8~9

筋持久力系競技

サッカー、テニス、バレーボール、バスケットボール、卓球、バドミントン、陸上中距離、ケイリン、フィギュアスケート、ラグビー、アメフト、ホッケー、カヌー、など

男性

体重(kg) エネルギー(kcal) 主菜量(つ)
51~60 2,800~3,200 6~7
61~70 3,200~3,600 7~8
71~80 3,600~4,000 8~9
81~90 4,000~4,400 9~10

女性

体重(kg) エネルギー(kcal) 主菜量(つ)
36~40 1,600~2,000 4~5
41~50 2,000~2,400 5~6
51~60 2,400~2,800 6~7
61~70 2,800~3,200 6~7
71~75 3,200~3,600 7~8

持久力系競技

マラソン、ロードバイク、水泳長距離、トライアスロン、ボート、クロスカントリースキー、など

男性

体重(kg) エネルギー(kcal) 主菜量(つ)
51~55 3,200~3,600 5~6
56~63 3,600~4,000 6~7
64~70 4,000~4,400 7~8
71~78 4,400~4,800 8~9
79~85 4,800~5,200 9~10
86~90 5,200~5,600 10~11

女性

体重(kg) エネルギー(kcal) 主菜量(つ)
36~45 2,400~2,800 4~5
46~55 2,800~3,200 5~6
56~65 3,200~3,600 6~7
66~70 3,600~4,000 7~8
71~75 4,000~4,400 7~8

計算上の注意点

主菜量を見て、「それほどたくさん食べなくてもいいんだな」と感じた方も多いのではないでしょうか。実際の食事には主食や牛乳・乳製品といった他の料理区分にもたんぱく質は含まれていますので、普通よりも少し多めくらいの意識でも十分にとれることもあります。

ただ注意点は、主菜料理の数量(つ)は、カロリーではなくたんぱく質含有量をもとに計算されていることです。つまり脂肪分や食塩は考慮していないため、例えば鮭の塩焼きは「2つ」としていますが、鮭の重量が同じであればバターやソースを入れたムニエルであっても(カロリーが高くても)数量は同じ「2つ」です。

これは食事バランスガイドは実践のしやすさを考慮して、あまり細分化して計算しないように設計しているためです。まずは主菜の数量(つ)を適切な量にして、余裕のある方は脂肪分の量も控えめにするとよいでしょう。揚げ物や脂身の多い肉を使った主菜料理の数量(つ)は、1日分の半分以下が目安です。

プロテインの必要性について

アスリートの多くはプロテインを飲んでいますので、この必要性について考えてみます。

基本的に食事バランスガイドを活用して、たんぱく源になる主食・主菜・乳製品をしっかりとれていれば、1日に必要なたんぱく質は摂取できます。

しかし朝食の量が少なかったり、昼食がおにぎりなど主食だけだったりすると、たんぱく質は不足してしまいますので、不足分を補うために飲むとよいでしょう。ただし、プロテインの栄養は肉や魚のおかずの代わりになるわけではありませんので、「主菜」としては数えない方がよいかと思います。

プロテイン

では目安量の主食・主菜・乳製品を十分にとっている場合はどうなりますでしょうか?私は食事で十分にたんぱく質をとれている場合であっても、運動直後のプロテイン摂取はとってもよいと思います。

その理由は、筋肉の合成と分解は常に一定のペースで起きているのではなく、運動直後に最も活発になり、筋肉の回復にはこの運動直後の栄養補給(糖質とたんぱく質)が大切になるためです。糖質ならおにぎりやバナナなどで補給できますが、運動後に肉や魚を食べるというのは難しく、現実的にはプロテインの摂取が必要です。

タイミングや摂取量など運動後の栄養補給方法についてはこちら

なお、たんぱく質の過剰摂取は肥満や糖尿病のリスクを高めますが、食べる主菜量が上記の目安量と同じくらいであれば過剰摂取の可能性は低いと思います。厚生労働省が定めている「食事摂取基準」では、たんぱく質エネルギー比率が20%を上限としているのですが、たんぱく質は1gあたり4kcalなので、例えば1日3,000kcalを摂取している人なら、3000×0.2÷4=150gがたんぱく質の上限になります。

1日3,000kcalをとる人が目安量と同じくらいの主菜をとっている場合、その他の食事内容にもよりますが1日のたんぱく質摂取量は約70~100gになります。1回分(約20g)の量のプロテインであれば上限の150gを超えてしまうことはなかなかありませんので、過剰摂取の可能性は低いと考えられます。

まとめ

  • 筋力アップのために適切な量の主菜を食べてたんぱく質を補給しよう
  • 主な主菜の単位を覚えて、概算で自分に必要な主菜の量を把握しよう
  • 運動後のプロテインは摂取は筋肉の疲労回復には必要である

参考文献

日本栄養士会 監修:「『食事バランスガイド』を活用した栄養教育・食育実践マニュアル」.第一出版,2011.
加藤秀夫・中坊幸弘・中村亜紀 編:「スポーツ・運動栄養学」.講談社,2012.
菱田明・佐々木敏 監修:「日本人の食事摂取基準(2015年版)」.第一出版,2014.
田口素子・樋口満 編:「体育・スポーツ指導者と学生のためのスポーツ栄養学」.市村出版,2014.

  • このエントリーをはてなブックマークに追加