マラソンの食事学

【管理栄養士監修】マラソンなどの運動中に足がつる原因と対策

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ああっ!足がまたつった・・・

こんにちは。スポーツ栄養士の盛岡です。

試合やマラソンのレース中などで、急に足がつって競技ができなくなった経験はございませんか?一度足がつってしまうと、再び走り出せても恐怖心からスピードを出すのをためらってしまいますよね。スポーツ選手にとってはまさに魔の瞬間ともいえるでしょう。

足がつるといいますと、昨年の日本シリーズでカープの黒田博樹投手がふくらはぎをつってしまい、途中降板となったことも記憶に新しいかと思います。

黒田投手も「チームに迷惑はかけたくない」と自ら退きましたが、ベンチから一度マウンドに戻って投球練習をしてみたところから、できればもっと投げたいという想いがあったのではないでしょうか。

そんな突然起こる足のけいれん(こむら返り)を、どうしたら防ぐことができるのか。今回は足がつる原因をもとに対処方法を考えてみたいと思います。

運動中に足がつる原因

運動中のけいれんは、マラソンやロードバイク、サッカー、テニス、バスケなどの持久的スポーツをしている選手に特によく起こります。

足がつる原因は冷えによる血行不良や病気など様々ですが、主に次の2つが要因にある考えられています。

ミネラルの不足

ミネラルとはナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどの無機質のことで、これらの栄養素は神経伝達にも関わっています。体は脳が「動きなさい」と命令を出して、運動神経末端が筋肉に指示を出すことによってはじめて動き出します。

大量の発汗によってミネラルが不足すると、脳から筋肉へ司令を送れなくなり、筋収縮に支障が生じます。するとブレーキの効かなくなった車のように、体のことはお構いなしに筋肉はぎゅぎゅっと縮んで痛みを生じるわけです。

夏場や長時間の運動中ほど足がつりやすいことを考えると、ミネラル不足の要因が最も大きいといえるでしょう。

運動不足・筋肉の疲労

筋肉疲労によるけいれん

運動不足なのに急に激しく体を動かしたり、筋肉の疲労もけいれんの原因となります。

体には筋肉の伸び縮みを感知するセンサー(筋紡錘)があり、正常時には筋肉の状態を脳に伝えることで、筋収縮を適切にコントロールしています。

しかし運動不足によって血行不良が起きていたり、長時間の運動で筋肉が疲労していると、このセンサーの調子が悪くなり、脳が筋肉に対して極端に収縮するよう命令して足がつるのです。

けいれんの予防・対策

スポーツドリンクで水分とミネラルを補給

スポーツドリンクで水分補給

筋肉は水分を多く含む組織ですので、発汗による体液の減少は血流を悪くしてしまい、けいれんのリスクを高めることになります。そこでこまめな水分補給が必要になるのですが、このときの水分はお茶や水ではなくスポーツドリンクを選ぶことがポイントです。

スポーツドリンクは発汗によるミネラル排出も考慮して設計されており、ナトリウムやカリウム、マグネシウムなどのミネラルも一緒に含まれています。つまりスポーツドリンクを飲むことで水分とミネラルの両方を補給することができ、足つりの対策ができるのです。

バランスのよい食事を心がける

バランスのよい食事

普段からバランスのよい食生活を心がけて、ミネラルを摂取することは大切です。

カリウムは果物や緑黄色野菜に、マグネシウムは大豆や海藻・ナッツ類に多く含まれていますので、炭水化物や肉などに偏らないバランスのとれた食事をとるようにしましょう。

そしてカルシウムは特に日本人が不足しやすい栄養素です。野菜や大豆にもカルシウムは含まれていますが、牛乳やヨーグルトなどの乳製品に豊富なので、毎日欠かさずとるようにして下さい。

ミネラルは事前に大量にとるのではなく、こまめな補給を

しっかりミネラル補給することは大切ですが、かといってカーボローディングのようなイメージで試合前にミネラルの多い食べ物やサプリメントをまとめて大量にとっても、あまり意味はないでしょう。

体の体液は常に一定の濃度を保とうとしており(これを恒常性といいます)、一度に多くのミネラル・塩分を補給しても、体は余分なものは排除しようと動くためです。また、ミネラルの大量摂取は中毒症状を起こす危険性もあり、体にとっても害にもなりかねません。

水分の補給と同じように、運動前・運動中にこまめに補給するしかないのです。

マグネシウムサプリの有効性は?

マラソンやロードバイク選手の間ではマグネシウムを補給できるエネルギーゼリーの「Mag on(マグオン)」が人気ですね。

mag-on(マグオン)

1個で120kcalのエネルギーと50mgのマグネシウムを摂取できるのですが、ではこれさえ飲めば足がつらなくなるのかというとよく分かりません。

足のけいれんはマグネシウム不足も確かに一因にはあるものの、原因はそれだけではありませんし、けいれん防止のためにマグネシウムをどれだけ摂取したらいいかというデータもないためです。

マグネシウム50mgであれば過剰摂取にもなりませんので、利用する際にはエネルギー補給をメインにして、けいれんの予防はお守り程度に考えておくとよいでしょう。

試合中・レース中にBCAAを補給する

BCAAとはたんぱく質の部品となるアミノ酸の一種で、「分岐鎖アミノ酸」というバリン・ロイシン・イソロイシンの総称です。

BCAAは運動中に筋肉でエネルギー源として多く消費されるという特徴があり、運動中のBCAA摂取は筋肉疲労の抑制効果が示唆されています。したがってBCAAをとることで長時間の運動による疲労を遅らせて、足がつるのを防ぐことができるかもしれませんので一度試してみるとよいでしょう。

BCAAを摂取できるものはドリンクでは大塚製薬社の「アミノバリュー」、粉末では味の素社の「アミノバイタル」が代表的な商品です。

アミノバリュー

またアリスト社の「メダリスト アミノダイレクト」は携帯性も高く、マラソンなどのレース中にも飲めるので便利ですね。

メダリスト アミノダイレクト

漢方薬の使用は医師・薬剤師に相談

小林製薬社の「コムレケア」などのこむら返り対策の商品は、テレビCMでよく目にしますね。有効成分である「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」という漢方薬は、足がつるのを防ぐ効果があるとされており、ドラッグストアなどで購入できます。

ただし、医師や薬剤師のような専門知識のない方が、自己判断で手を出すのはあまりおすすめできません。使用にあたっては必ず医師・薬剤師に相談してからにしましょう。

お薬に頼るよりは、まず日ごろからストレッチをして筋肉のコンディションをよくしておく方が有効な対策となります。運動の前後には、十分なストレッチやマッサージを取り入れることを忘れないようにして下さい。

まとめ

  • 運動中に足がつる原因には、ミネラルの不足や筋肉の疲労が関係している。
  • ミネラル不足を防ぐために、スポーツドリンクで水分補給をこまめに行う。
  • バランスのよい食事でミネラルをとることは大切だが、かといって直前にサプリなどで大量に摂取してもあまり意味がない。
  • BCAAの摂取は運動中の筋肉疲労を抑制する効果が示唆されており、けいれんの予防につながる可能性がある。
  • 漢方薬を服用する際には、医師・薬剤師に相談する。
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