スポーツ栄養学の基本

アスリートは普通の3倍風邪をひきやすい?免疫力アップのための食事方法

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
アスリートやマラソンランナーほど風邪をひきやすい!?

こんにちは。スポーツ栄養士の盛岡です。

体を鍛えている人というのは、病気に対しても強いイメージがありますよね。しかし、ハードなトレーニングをしているアスリートほど、実は風邪をひきやすいというのはご存知でしたか?

マラソンランナーであれば、ランニング後の頭痛や体調不良に悩まされた経験を持つ方も多いかと思います。

実際に激しいトレーニングをするアスリートは、くしゃみ・鼻づまり・咽頭痛を主症状とする風邪の発症頻度が一般人より3倍も高く、特にマラソンのような過酷な持久性運動では、競技後2週間に50~70%の選手が風邪症状を起こし、そのリスクは通常の2~6倍にもなることが分かっています。

筋肉をつけるためにごはんや肉をしっかり食べる、上手くなるための練習方法を考えるといったことも大切ですが、体調管理を疎かにしてしまっては練習をたびたび休んでしまったり、大事な大会の直前でコンディションを落としてしまうことにもなりかねません。

そこで今回は、アスリートが風邪などの病気を予防するための免疫力を上げる食事方法や、病気にかかってしまったときの対処方法についてご説明いたします。

スポンサーリンク

アスリートが風邪をひきやすい原因

体を鍛えているアスリートが風邪をひきやすいというのはなぜなのでしょうか?

その原因は激しいトレーニングによる感染リスクの増大と、免疫力の低下が挙げられます。

感染リスクの増大

適度な運動であれば病原菌に感染するリスクは減少しますが、激しい運動や過酷なトレーニングをしていると、逆に感染のリスクは増大します。

この運動と感染の関連性については下図1)のような「Jカーブ」というモデルが提唱されています。

運動と免疫機能に関するJカーブ

これは、アスリートの体は運動によって暑熱・寒冷・乾燥・湿潤・紫外線・圧迫・外傷などのストレスを受けることが多く、また運動中には皮膚・粘膜への血液循環が抑制されるため、病原菌が侵入しやすくなることが関係しているためです。

通常は病原菌は鼻水や痰などの粘液や粘膜の働きにより排除されますが、運動中には気道粘膜が乾燥・冷却されれこれらの働きがにぶくなり、病原菌を排除しにくくなるのです。

さらにアスリートは、団体行動や集団生活、物品の共用を行う機会も多く、病原菌が蔓延しやすい環境にあることも感染症を起こしやすい要因となっています。

(※健康増進のために奨励されている運動は、20~60分までの軽いジョギング程度の運動です。強度の高い練習をするアスリートやLSDを行うマラソンランナーはこの範囲を超える場合が多いでしょう。)

免疫力の低下

免疫力の低下

免疫とはそもそも、体外から侵入した微生物や異物、あるいは体内に生じた異常物質や老廃物などを排除しようとする生体防御の仕組みをいいます。

免疫系は体液成分による体液性免疫と、細胞成分による細胞性免疫に大別され、激しい運動はこのどちらにも悪影響を及ぼします。

体液性免疫の低下

通常は血液中に含まれるIgG(免疫グロブリンG)や、腸管・気道などの粘膜にあるIgA(免疫グロブリンA)という免疫物質が、抗体として体の中に侵入した病原体を排除するのですが、激しい運動はこの免疫にも影響を与えます。

適度な運動であれば問題ないのですが、強度の高い運動を長時間続けると血中IgGが低下したり、唾液中の分泌型IgA値が低下したという報告があります。

また減量を行っている場合には、栄養状態の悪化を反映して免疫グロブリンの血中濃度が低下することもあります。

活性酸素による細胞性免疫への影響

酸素はエネルギー産生やホルモン・生理活性物質など様々な物質の生合成に欠かせない物質ではありますが、一方で高濃度の酸素が生体に悪影響を与えることも知られています。

私達の体では常に活性酸素が生じておりますが、運動時には酸素摂取量が安静時の約10~15倍に増加し、筋肉への酸素流量は安静時の100倍に達するといわれています。

スポンサーリンク

この運動時に、筋肉の損傷や紫外線などが誘因となり活性酸素が発生し、体は酸化ストレスを受けやすくなります。

活性酸素とは反応性の高い酸素分子種の総称のことで、酸化ストレスの増加は生体の構成物質であるたんぱく質や脂質、糖質などに損傷を与え、細胞に障害をもたらしガンや炎症・動脈硬化など様々な疾患を促進させるといわれています。

特にスポーツ活動時における酸化ストレスの増加は、免疫力の指標であるNK(ナチュラルキラー)細胞の活性低下につながることが認められています。

免疫力を上げるための栄養・食事

肉や魚からたんぱく質をしっかりとる

たんぱく質の豊富な魚を食べよう

たんぱく質は筋肉だけでなく免疫細胞の材料にもなります。

良質なたんぱく質を多く含む食べ物はご存知の通り肉や魚・卵・大豆・乳製品です。アスリートであればたんぱく質の摂取は普段から積極的にとるよう心がけている方も多いと思いますが、減量を行っている際には食事のカロリー制限はしてもたんぱく質の量は減らさないよう注意しましょう。

野菜や果物から抗酸化成分をとる

ビタミン・ミネラルの豊富な野菜と果物

アスリートの体調管理では、たんぱく質だけでなくビタミン・ミネラルを過不足なく摂取することが大切です。

ビタミン・ミネラルには抗酸化作用があるので活性酸素を除去し、免疫力アップに役立ちます。野菜や果物にはビタミンAやビタミンCが豊富なことはよく知られていますが、それ以外にも抗酸化には下記のようにさまざまな成分が関わっています。

栄養素 多く含む食べ物
βカロテン
(ビタミンA)
にんじん、かぼちゃ、ほうれん草、
小松菜、トマト、ピーマン
ビタミンC オレンジ、いちご、キウイ、ブロッコリー、
パプリカ、キャベツ、じゃがいも
ビタミンE サラダ油、ごま、ナッツ類
リコピン トマト、スイカ、柿
カテキン 緑茶、ウーロン茶
ポリフェノール 赤ワイン、りんご、ぶどう、カカオ
アスタキサンチン 鮭、エビ、カニ
スルフォラファン 菜の花、キャベツ、スプラウト
亜鉛 あさり、しじみ、牛肉、豚肉
カカオ、レバー、ほうれん草、小松菜
セレン 魚介類、卵

これだけ色々記載すると「結局どれを食べたらいいの?」と思ってしまうかもしれませんが、色々な食材を食べることを心がけつつ、特に不足しがちなビタミンAとビタミンCを意識してとるようにしましょう。

果物を普段あまり食べない方は、ビタミンCやポリフェノールを手軽にとれますので、ぜひ毎日の食事に果物を取り入れてみてください。

また、料理をあまりしない一人暮らしの方は、まずは次のことから意識してみましょう。

  • 外食時は単品料理ではなく定食を注文する
  • コンビニで食事を選ぶ際はサラダや野菜ジュースを1~2品つける
  • トマトやきゅうり・キャベツなど調理を必要としない野菜をとる
  • みそ汁や野菜炒めなど簡単な料理だけ作る

タバコを吸わない

アスリートにとって当たり前ではあるのですが、タバコを吸うのは体調管理の面でよくありません。

タバコは持久力の低下につながるだけでなく、煙の中にニコチン・一酸化炭素・スーパーオキシド・ヒドロキシラジカル・過酸化水素など様々な活性酸素も含まれています。

喫煙は活性酸素そのものを直接吸引することになり、さらに体内で炎症細胞を活性化することにより活性酸素の産生を誘導します。このことから喫煙者は、抗酸化物質であるビタミンCの血中濃度が減少するといわれています。

私が担当している野球チームでもタバコを吸う選手はちらほらいるのですが、たとえ持久性競技でなくとも、健康やコンディションの面でマイナスなので禁煙に努めるべきです。

運動中は適切に水分補給をする

運動中や運動後の水分補給を忘れずに

運動中の水分補給は脱水や熱中症の予防に重要なことはもちろんですが、唾液の分泌を増やして激しい運動による分泌型IgAの低下を予防する上でも重要といえます。

また夏場の練習直後に頭痛になる場合は病原菌の感染ではなく、脱水による熱中症が原因の場合もあります。運動中の水分補給は塩分を含むスポーツドリンクで、こまめな補給を心がけましょう。

(水分補給方法の詳細は「スポーツ・運動中の水分補給方法」をご参照下さい)

 

このほかにも、手洗い・うがいを徹底したり、マスクや加湿器を使用することも、基本的ではありますが病原菌の感染を防ぐためには大切です。

単純にトレーニング以外でしんどい思いをしたくないというのもありますが、常に体調管理を徹底することが、トレーニングの質にも影響を与え、長期的には大きな実力の差となって現れるでしょう。

まとめ

  • 激しい運動は病原菌の感染リスクを高めてしまう。
  • 激しい運動は免疫グロブリンの低下や活性酸素による酸化ストレスによって、体の免疫力を低下させてしまう。
  • 免疫力を上げるために、免疫の材料となるたんぱく質はしっかりとろう
  • 抗酸化作用のあるビタミン・ミネラルは、免疫力アップに役立つので、野菜や果物を積極的にとろう
  • タバコは活性酸素を吸引することになるため、持久性競技でなくとも吸うべきではない
  • 適切な水分補給は唾液の分泌を増やして、激しい運動による免疫グロブリンの低下を予防する上でも重要

参考文献

1) Nieman, D. C,: Exercise, upper respiratory tract infection and immune system. Med Sci Sports Exerc, 26: 128-139, 1994.
田口素子・樋口満 編:「体育・スポーツ指導者と学生のためのスポーツ栄養学」.市村出版,2014.
林淳三:「改訂 基礎栄養学」.建帛社,2010.

健康・体力づくり事業財団:健康運動指導士養成講習会テキスト

スポンサーリンク
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

コメントを残す

*

CAPTCHA