こんにちは!スポーツ栄養士の盛岡です。
アスリートや筋トレに励むアマチュアスポーツ選手にとって、たんぱく質を十分に摂取することは疲労回復や筋力アップにおいてとても重要です。今回はそれぞれのトレーニングに応じたたんぱく質の摂取量について解説していきます。
目次
アスリートに必要なたんぱく質摂取量
スポーツ選手でない場合、1日に必要なたんぱく質量は体重1kgあたり0.8~1.0gといわれています。体重が60kgの人であれば60×1.0=60gという計算です。厚生労働省の定める「日本人の食事摂取基準」においても、推奨量は男性で60g、女性で50gとなっています。しかし、トレーニングによって筋肉にも大きな負荷をかけるアスリートはそれ以上の量を摂取しなければなりません。
アメリカスポーツ医学会が2009年に発表した「栄養とスポーツパフォーマンス」に関する声明1)の中で、これまで報告された研究データに基づいたたんぱく質の必要量は、筋力や筋パワーを重視するスポーツ選手の場合、体重1kgあたり1.2~1.7gが推奨されています。
持久力を重視するスポーツ選手の場合はそれほど多くは必要なく、体重1kgあたり1.2~1.4gが推奨されています。一流の選手であっても1.6gまででよいしょう。マラソンやロードバイクなどの競技の場合は、エネルギーの枯渇により筋肉中のたんぱく質が分解されてしまいますので、たんぱく質の摂取以上に十分な糖質摂取が重要になります。
個々に必要なたんぱく質量を厳密に把握するのは難しいですが、目安として運動内容ごとのたんぱく質必要量を下記の表にまとめました。
運動の内容 | たんぱく質必要量 (g/kg体重/日) |
マラソンランナー (ジョギング 月に100km以下) |
0.8~1.0 |
マラソンランナー (ジョギング 月に200km程度) |
1.2~1.3 |
持久系競技 | 1.2~1.4 |
一流の持久系競技選手 | 1.6 |
球技系(サッカーなど) | 1.4~1.7 |
瞬発系競技(トレーニング期) | 1.5~1.7 |
瞬発系競技(維持期) | 1.0~1.2 |
(例)体重60kgの市民マラソンランナーのたんぱく質摂取量
余暇としてランニングをしている程度なら、特別多く摂取する必要はないでしょう。フルマラソンに出場する方の場合、完走のための月間走行距離は200kmが目安といわれており、筋肉の損傷も大きいので少し多めに摂取するとよいでしょう。
(例)体重65kgのサッカー選手のたんぱく質摂取量
サッカー選手においてもスピードや持久力だけでなく、当たり負けしないためのフィジカルを付けなければなりません。たんぱく質は1.5g程度を摂取するとよいでしょう。
(例)体重70kgの野球選手のたんぱく質摂取量
野球選手は瞬発力・筋力が必要とされるスポーツのため、体重1kgあたり1.7g程度がよいでしょう。
食べ物に含まれるたんぱく質
食べ物では肉、魚、卵、乳製品、大豆製品といった食品に良質なたんぱく質が多いです。野菜や海藻類にはほとんど含まれていませんが、ごはん・パン・麺類といった主食にはある程度含まれていますので、その分も考慮する必要があります。
食品 | 概量 | 重さ(g) | たんぱく質(g) |
豚ロース | - | 100 | 19.3 |
鶏もも | 1/2枚 | 150 | 33.5 |
鮭 | 1切れ | 80 | 18.0 |
卵 | 1個 | 50 | 6.2 |
豆腐(絹ごし) | 1/4丁 | 100 | 4.9 |
納豆 | 1パック | 40 | 6.6 |
牛乳 | 200cc | 210 | 6.9 |
ごはん | 茶碗1杯 | 150 | 3.8 |
食パン (6枚切り) |
1枚 | 60 | 5.6 |
ラーメン | 1玉 | 220 | 10.8 |
うどん(ゆで) | 1玉 | 250 | 6.5 |
じゃがいも | 1個 | 100 | 1.6 |
にんじん | 1/4本 | 40 | 0.3 |
運動後の食事はしっかりとろう
たんぱく質の摂取はタイミングも大切です。体を大きくしたい場合には、朝昼晩と食事量を三等分するのではなく、筋肉の合成が進んでいるトレーニング後の夕食はやや多めにたんぱく質をとるようにしましょう。
また減量に取り組んでいる場合、トレーニング後の夕食を軽めにしたり全く食べなかったりする方がいますが、トレーニング後はたんぱく質の合成だけでなく分解も促進されていますので、このときにたんぱく質を摂取しなければ分解の方が優位に進んでしまいます。
減量中といえども筋肉を落として痩せたのでは、パフォーマンスの低下を招いてしまい意味がありません。減量の場合でもたんぱく質は減らさないようにし、脂肪分と糖質を適度に減らすことでカロリーカットをしましょう。
まとめ
・厳しいトレーニングを行っているアスリートはたんぱく質を多めに摂取しよう。
・食べ物では肉、魚、卵、乳製品、大豆製品に良質なたんぱく質が多く含まれている。
参考文献
厚生労働省:日本人の食事摂取基準(2015年版)
加藤秀夫・中坊幸弘・中村亜紀 編:「スポーツ・運動栄養学」.講談社,2012.
小林修平・樋口満 編:「アスリートのための栄養・食事ガイド」.第一出版,2001.
文部科学省:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
1) Rodriguez NR et al.: American College of Sports Medicine position stand. Nutrition and athletic performance. Med Sci Sports Exerc, 41: 709-731, 2009.