スポーツや食に関わる専門家の方々が、「食と栄養」にどのように向き合っているかを学ぶ「#栄養の窓」シリーズ。
今回お話を伺うのは公名古屋市でスポーツアロママッサージのサービスを提供する「SPOVERY(スポバリー)」を運営している血原まこさん。
スポーツをしている小中高生を中心に、女性のスポーツ選手や一般の方のケアを行うとともに、セミナーを通じて、リカバリーの重要性を伝えています。
けがをすると、身体に損傷が起きてしまうため「日々のリカバリーが大事」という血原さん。けがをしない身体づくりや、パフォーマンスを発揮しやすいケアのしかたについてお聞きしました。
目次
プロフィール
子どもたちにリカバリーの方法を伝える血原さん(左奥)
小学生からテニスを始め、大学時代は、単複ともに全日本学生テニス選手権大会、全日本大学対抗テニス王座決定戦も経験している。
2020年からスポーツアロママッサージを始め、2023年5月に「SPOVERY(スポバリー)」として開業。
現在、クラブチームに所属する小中高生や大学生、女性のスポーツ選手達を中心に、精油を活用したスポーツマッサージやセルフケアなど、その人に合わせたリカバリー方法を伝えている。
日本トレーニング指導者、日本スポーツ協会公認スポーツ指導者・公認コーチングアシスタントのほか、アスリートアロマトレーナー、日本テニス協会公認テニストレーナーなどの資格を持つ。
スポーツのけがには「防げるけが」と「防げないけが」がある
血原さんからリカバリー方法を学ぶ参加者
―スポーツをしている子どもたちがけがによりスポーツから離脱し、あきらめてしまうことも少なくないようです。どうやってけがを予防したらいいでしょうか?
そうですね。昨今、幼少期からひとつのスポーツだけをしているお子さんが増えてきていることもあり、身体の同じ部位を使いすぎることによるけがが起きやすくなっています。そのことで、スポーツを離脱してしまうお子さんは本当に多いと感じています。
せっかく志したスポーツを、防げたであろうけがによってあきらめざるを得ない状況のジュニアたちを目の前で見てきて、そうした事例を少しでも減らしたいという想いから、私は現在のトレーナー活動を始めました。
けがには「防げるけが」と「防げないけが」があります。アクシデントで起きてしまうけがは防げませんが、筋疲労による成長期のけがは防げます。
防げるけがから成長期の子どもたちを守るために、「リカバリー習慣」を知ることがとても重要なのです。筋疲労によるけがの前には「ちょっと痛いな」とか「なんかいつもと違う」と感じることが多くなっていますが、このときに無理せず対処してほしいですね。
防げるけがを防ぐには?
―なるほど、痛みを感じたままプレーをしてしまうので、けがにつながってしまうということでしょうか?
はい。実はかなり多くのお子さんが、痛みを我慢した状態や違和感があるままプレーしているということが少なくありません。私のところにケアに来られるお子さんのなかにも、痛みのある状態で来られる方も多くいらっしゃいます。
血原さんがマッサージなどを行っているSPOVERYのリカバリーケアルーム
でも理想としては、こうした痛みや違和感を感じる前に何らかのケアをしていただきたいのです。私が行っているオイルマッサージもそうですが、自分でできるセルフケアもあります。
日々、何かしらのケアをしていれば、違和感に気づくことができ、けがで離脱することなく、スポーツを続けることもできます。
けがなど離脱の要因となる筋疲労を防ぐには、具体的なリカバリーの方法として、適切なタイミングで食事をとること、質の良い睡眠をとること、マッサージやセルフケアをすることです。
たとえば、栄養をとるタイミングは非常に重要で、練習後の1時間以内に食事をとるのか2時間後になるのかでも疲労感がずいぶん変わってきてしまいます。
成長期はけがをするリスク大。だからこそ「個」と向き合う
―けが予防には日々のセルフケアが大事なのですね。
実は一度けがをしてしまうと、損傷してしまった部位は完全に修復ができないとも言われています。だからこそ壊さない、けがをしない、つまりは、けがを防ぐことが重要なのです。
成長期の骨は未完成な状態であるため、スポーツをしている子どもたちは特に「剥離(裂離)骨折」になるおそれがあり、注意が必要です。
身長が伸びるタイミングで筋疲労が蓄積していると、膝の痛み(オスグッド)や踵に痛み(シーバー)が出たり、腰椎分離症などを起こしやすくなってしまうこともあるため、オーバーユース、オーバーワークはしないようにしたいですね。
―スポーツは集団競技が多いので、気付かずに無理してしまうこともありそうです。
マッサージをしていると「ここが実は痛かった」ということも多く、痛みに気付かないままの子も多いようです。
一生懸命やっているのに身体が思うように動かないというときも、サボっているように見えてしまい、痛みがあることを隠してしまうこともあるようです。
だからこそ、ちゃんと指導者が向き合うことが重要だと思っています。
成長のタイミング、身体の状態はそれぞれ違うのです。その子の状態とちゃんと向き合わずに頑張りすぎてしまう弊害が、けがや痛み、その前段階の違和感につながってしまいます。
けがをしやすい時期に要注意。だからこそリカバリーが大切
―けがをしやすい時期、注意したほうが良い時期はありますか?
練習の強度が上がるタイミングは要注意です。小学校から中学校に上がるタイミング、中学校から高校に上がるときは、練習量が増えたり、慣れないウェイトトレーニングが始まり、無理をしてしまう子も少なからずいます。
無理をしてしまった結果、例えば中1の夏を迎えるまでにけがをしてしまうとか、中3の受験でいったん離れた後、高1で頑張りすぎてしまって夏の大会前にけがで離脱したり、辞めてしまうというのもよく聞きます。
学年が上がる春先は、リカバリーができていない状態が続くことが多いので、たとえばシャワーで済ませていた入浴を湯舟にしっかり浸かるようにするだけでも、血流を促進し、筋疲労回復につながりますので、取り入れやすくおすすめです。湯舟に入る方は、炭酸泉のタブレットなど、取り入れてみるのもいいと思います。
そして、疲労回復には、睡眠が最も重要です。質の良い睡眠をとるために、寝る前にはスマホを見ない時間を作り、そして、身体の力を抜くようにするといいです。
ただ、身体の力を抜こう、脱力しようと思ってもなかなかできないので、逆に身体に力を入れ、その後に抜くことを2〜3回繰り返すことで脱力を促すことができますので、やってみてほしいです。
親御さんが子どもさんにしてあげられるケアとして、お尻をほぐしてあげるマッサージは、親子の触れ合いにもなり、とても有効ですよ。
リカバリーはすべての人の共通課題
―お聞きしていて、スポーツ選手だけの話ではないなと感じています。けがでスポーツを止めてしまったとしても、仕事や家事と、生活のなかで筋疲労が起きることは多く、リカバリーは必要ですよね?
そうなんです。筋疲労はすべての人に起きるため、すべての人の共通課題といえます。立ち仕事をしている方であれば腰に、デスクワークの方は放っておくと背中の筋肉が硬くなってしまいます。
先日、ケアを受けに来た方で「何年ぶりかに朝起きた瞬間、身体が軽かった」と話してくれたことがありました。
私自身がスポーツをやってきた経験から、スポーツをしている方をメインにケアはしてはいますが、一般の方や高齢者へのケアもさせていただくことで、マッサージで人と人が触れ合うことは、不安、心配などの緊張ストレスの緩和や、睡眠改善にもにつながることを日々実感しています。
血原さんのアロママッサージ「SPOVERY」で提供しているサービス
どんな人も自分らしく、パフォーマンスを発揮できるよう、リカバリー習慣をつけてほしいなと思いますね。
子どもたちの活躍を応援したいから「ジュニアプロテイン」
―お店でアストリションの「ジュニアプロテイン」を使っていただいていますが、ジュニアプロテインを知ったきっかけは何だったのですか。
テニスの女子ジュニアで活躍している高木咲來(さくら)さんが取り入れていると伺って、ご本人にお話をお聞きしました。
プロテインをたくさん試した中で、溶けやすさと、味、飲みやすさのバランスがとてもよく、自分の娘達にも好評だったので、SPOVERYでも取り扱い紹介させていただくことにしました。
補食として、リカバリーにとてもマッチしていて、エネルギー補給にぴったりだと思っています。
娘達はココア味が気に入っていて、朝ご飯のもう一品としてや、学校から帰ってきて練習前や、練習後など、1日数回飲んでいます。
ソイプロテインで、不足しがちな栄養素もバランスよく摂れるので私も飲んでいます。親子で飲めるプロテインですね。
SPOVERYでは、ジュニアに限らず、興味をもっていただいた方にお勧めしています。エネルギー補給、美容健康など、さまざまな場面で使ってほしいなと思っています。
メンタル面も含め、力を最大限発揮できるお手伝いを
―今後、目指していきたいことはありますか?
私のところに試合前にケアを受けに来てくれて、試合で活躍している様子を知るとうれしくなります。その方の疲労を少しでも和らげてあげ、パフォーマンスが上がるようにするためのスポーツマッサージを今後も提供していきたいですね。
SPOVERYがサポートしている女子サッカーの髙島瑠里子選手(左)
また成長期のお子さんたちのフィジカルなケアとともに、メンタル面のケアにもつなげていきたいと思っています。
思春期は成長痛やけがのリスクがあるだけじゃなく、心の変化も大きい時期です。親に言えないこと、周りに相談しにくいことも多くなってきますが、生理のこと、成長のこと、さまざまな不安に寄り添って、思春期を乗り越える支えになれたらと。
また、けがや成長の痛みなどで、がんばりたいのに、続けたいのに、がんばれなくなってしまうことのないようにケアをしてあげたいです。
その人がその人らしく、力を最大限発揮できるようなお手伝いができればと思います。
取材協力:梅澤あゆみ(ライター)
日刊県民福井記者、埋蔵文化財の発掘調査の仕事を経て2019年よりフリーランス。現在、複数企業のメディアでインタビュー記事の執筆や広報活動などをしている。福井市在住