スポーツ栄養学の基本

【管理栄養士監修】アスリートはお酒を飲まない方がいいの?

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こんにちは!スポーツ栄養士の盛岡です。

スポーツをしている人にとって、運動後に飲むお酒は最高においしいですよね。シャワーの後のビールを美味しくするためにジムに通っている、マラソンをしているという方も多いのではないでしょうか。

しかし、過度の飲酒は健康に与える影響が大きく、アスリートはその点も踏まえて適切に自己管理する必要があります。今回はアルコールがアスリートに及ぼす影響と、お酒との付き合い方についてご説明いたします。

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アスリートがお酒を飲むことによるメリット

少量のお酒は心臓病などのリスクを低下させ、全く飲まない人よりも長生きしやすいことが研究から分かっています。飲み会の席を設けることによってコミュニケーションが図れ、チームの一体感を高めるといったこともあるでしょう。また、アスリートにとっての栄養学的なメリットについては以下が挙げられます。

お酒を飲むメリット

メリット①食欲の増進

お酒を飲んでいると、いつもより食事が進みますよね。アルコールには胃液の分泌を促進して、食欲が増進させる働きがあるからです。トレーニングの疲れで食欲が落ちているときには、必要なエネルギーをとる助けとなるでしょう。

メリット②ストレスの解消

運動中の体は緊張状態にあり、交感神経が優位に働いています。適量のアルコールは副交感神経を優位にするよう働きかけ、緊張状態にある精神をリラックスさせてストレスの解消につながります。

ただし、お酒だけに頼ってストレスを発散しようとすると、飲み過ぎてアルコール依存症になることもありますので注意が必要です。もっとも、「ストレス解消」を理由にしてしまったらタバコでもお菓子でもコーラでも何でもアリになってしまいますが・・・

アスリートがお酒を飲むことによるデメリット

適量のアルコール摂取は健康にも良いのですが、過度の飲酒は肝臓病や膵臓病、痛風、糖尿病、がんなどの発症リスクを高めてしまいます。また、アスリートの競技パフォーマンスに与える影響としては以下が挙げられます。

お酒を飲むデメリット(脱水・疲労回復の遅れ・体脂肪の増加)

デメリット①体脂肪の蓄積

お酒には糖質も含まれていますが、お酒から摂取するカロリーの大部分はアルコールによるものです。胃や小腸で吸収されたアルコールは1gあたり7.1kcalのエネルギーを発生させ、熱として放出される部分もありますが、約70%の5kcalはエネルギーとして体内に残ります

糖質やたんぱく質の持つエネルギーは1gあたり4kcalですから、アルコールは、1gあたり9kcalのエネルギーを持つ脂質に次いで高カロリーということになります。さらに、お酒を飲む人は揚げ物や炒め物、スナック菓子、ピーナッツなど高カロリーなおつまみをよく食べるため、アルコールと脂質からカロリーをとりすぎて結果として太ってしまうことが多いのです。

アルコールは体脂肪になりにくい?

アルコールは体内には蓄積されにくいと言われていますが、これは本当なのでしょうか?

確かに、体内に入るとアルコールはエネルギー源として一番最初に消費されます。続いて、炭水化物やたんぱく質、脂質の順に消費されます。ですから、アルコールは一番利用されやすく、体脂肪には変わりにくいと考えられているのです。

しかし、アルコールがエネルギー源として先に利用されても、炭水化物・たんぱく質・脂質からのカロリーはアルコールの分だけ残りますので、余ったカロリーは結局脂肪になってしまいます。

デメリット②脱水のリスク

アルコールには利尿作用がありますので体内では脱水が進みます。そのまま翌朝に水分をとらずにトレーニングを始めてしまうと、脱水症状を引き起こす危険性がありますので注意が必要です。

デメリット③疲労回復の遅れ

アルコールの代謝にビタミンB1を消費してしまう

お酒を多く飲むほど、疲労の回復が遅くなります。理由は2つあり、1つは疲労回復やエネルギー産生の働きを持つビタミンB1がアルコールの代謝によって使われてしまうためです。

お酒から摂取したアルコールはエネルギー(カロリー)産生の際にビタミンB1を使用します。エネルギー産生の際にビタミンB1を消費するのは糖質の代謝でも同じですが、大量に飲むとアルコールを分解する酵素である「アルコール脱水素酵素」だけでは分解が追いつかなくなり、アルコールを分解するためにもビタミンB1が使われるようになってしまいます。

アルコールの代謝でビタミンB1が消費される

最初は飲めなかった人が、訓練するうちに飲めるようになるのは、このビタミンB1を使った代謝経路が関係しているとも考えられています。

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肝臓に負担をかけてしまう

2つ目の理由は肝臓に負担がかかってしまうことです。

胃や小腸で吸収されたアルコールは肝臓で解毒が行われますが、肝臓はアルコールを分解する間はその仕事に集中しなければなりません。すると肝臓が通常時に行う、糖質の貯蔵やたんぱく質の合成という大切な仕事が後回しになってしまうのです。

また、多量の飲酒が慢性的に続くと、肝不全などの競技力だけでなく健康にも影響を及ぼす危険性が生じます。

スポーツ選手のお酒との付き合い方

おつまみは低脂肪な料理を選ぶ

低脂肪のつまみやサラダも食べる

おつまみは脂っこいものばかりでなく、脂質が少なくてたんぱく質源となる刺身や湯豆腐、枝豆、焼き鳥なども選ぶようにしましょう。また、サラダや煮物、和え物など野菜のおかずからビタミン・ミネラルを補給することも大切です。

ごはんは必ず食べる

シメも必ず食べて糖質補給

「お酒を飲んだ代わりにごはんを抜けばいい」と考えている方が多いのですが、これは大変な考え違いです。

お酒のカロリーは「エンプティカロリー(空っぽのカロリー)」と言われ、糖質やたんぱく質・ビタミンなど体に必要な栄養素をほとんど含んでいません。糖質を補給しないでいると、トレーニングで消費した筋肉中のグリコーゲンを回復させることができず、疲れが翌日に残ったり、超回復が効率的に行われなくなったりします。

(糖質の働きについて詳しくは「運動後の食事で大切な4つのポイント」をご参照下さい。)

アスリートにとって糖質はとても大切な栄養素です。飲み会のときにはお茶漬けやおにぎり・うどんなどシメの食事も注文して、糖質を必ずとるようにしましょう。

お酒と一緒に水分補給も

水分補給は忘れずに

前述しましたようにアルコールには利尿作用がありますので、水分補給を十分に行わなければなりません。グラス一杯のビールやワインを飲むときは、同時にコップ一杯の水を飲むよう心がけましょう。

また、翌朝にトレーニングを行う場合には、十分に水分補給を行ってから始めるように注意して下さい。

アスリートはお酒を飲まないのがベスト

厚生労働省の定めている「健康日本21」では、飲酒の適量は「純アルコールで1日平均20g程度」としています。アルコール20gというのはお酒に換算すると生中1杯分、日本酒1合分の量になります。

ビールは生中1杯分までが適量

1日20gと設定されている理由は、少量のアルコールは善玉コレステロールを増やして心臓病や脳梗塞のリスクを減らし、飲酒量が20g前後の人が最も死亡リスクが低いことが研究から分かっているためです。

しかしこの「適量」とは、あくまで「健康で長生き」するための量です。私は「競技力を上げるための体づくり」という観点から考えると、アスリートは基本的にお酒は飲まないのがベストだと思います。善玉コレステロールが増えることで競技力が上がるかどうかは確かなデータがありませんが、体脂肪が増え体が重くなることは、競技には明らかにマイナスだからです。

また、お酒を飲むときにつまみも一緒に食べると、脂質の摂取量が増えるので善玉コレステロールを増やすというメリットも結局打ち消されてしまいます。仮に同じカロリーを摂取するにしても、お酒を飲まずにその分ごはんを食べて糖質を補給する方が、筋グリコーゲンの回復に役立ち、体づくりのためにはよいでしょう。

とはいえ「じゃあもう酒を飲むのはやめよう!」と実践するのは難しいと思いますので、まずは今の飲酒量を徐々に減らしていき、適量として推奨されている生中1杯分に少しずつ近づけていくといいですね。

まとめ

  • お酒には食欲の増進やストレス解消といったメリットがある
  • お酒には体脂肪の蓄積や脱水のリスクといったデメリットがある
  • お酒を飲んでいても、アスリートの体づくりに欠かせない糖質は必ず摂取しなければならない
  • 脱水状態にならないよう、水分補給をしっかりしよう
  • お酒には体に必要な栄養素がほとんど含まれていないため、アスリートにとってはお酒は飲まないのが理想

参考文献

厚生労働省 e-ヘルスネット:「飲酒とJカーブ」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-03-001.html
林淳三:「改訂 基礎栄養学」.建帛社,2010.
橋詰直孝:「アルコールとの上手な付き合い方-ビタミン摂取の重要性-」.武田薬方473号,2013.
大野誠ほか:「肥満症の生活指導 行動変容のための実践ガイド」.医歯薬出版,2011.
田口素子・樋口満 編:「体育・スポーツ指導者と学生のためのスポーツ栄養学」.市村出版,2014.

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