こんにちは。スポーツ栄養士の盛岡です。
いよいよ明日はマラソン大会というとき、食事はいつも通りのものをとろうとしていませんか?普段は栄養バランスのよい食事をとることが体力アップにもコンディショニングにも一番大切ですが、レース前ではかえってマイナスにはたらいてしまう場合もございます。
また食事で事前に十分なエネルギーを蓄えておくことは、フルマラソンに出場する方はもちろん、ハーフマラソンに出場する方にも記録に大きな影響を与えます。
今回は大会前日に効果的にエネルギーを蓄えるための、マラソンランナーの食事方法についてご説明いたします。
目次
マラソン大会前日の食事方法
①高糖質食でカーボローディング
走るためのエネルギーは、肝臓や筋肉の中でグリコーゲンという形で蓄えられています。走る前にしっかりと糖質をとることによって、グリコーゲンが十分に蓄えられ、持てる体力を最大限に出し切れるようになります。このグリコーゲン蓄積のためにとる糖質中心の食事方法を、「カーボローディング」または「グリコーゲンローディング」といいます。
普通に食事をとっていれば糖質の摂取量は概ね体重1kgあたり5~7gくらいになりますが、カーボローディングを行う場合は体重1kgあたり10gの糖質を摂取します。ごはんやパンの量をいつもの1.5~2倍くらいに増やすというイメージを持つとよいでしょう。
ごはんやパンだけで食べるとかなりのボリュームになりますが、あんパンやジャムパン、カステラなどを間食に取り入れると糖質を手軽に補給できます。
カーボローディングによりしっかり取り組みたい方は、前日だけでなく3日前から取り組むようにしましょう。
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②たんぱく質・脂質の摂取は控える
糖質を多く摂取する分、カロリーをとり過ぎて体重が増えてはいけませんので、肉や魚を使った主菜のおかずは少なめにしましょう。主菜のおかずに多く含まれるたんぱく質・脂質は胃腸に負担がかかり、翌日のコンディショニングに影響する可能性もあります。
パンに塗るバターやサラダにかけるドレッシング・マヨネーズも控えるようにし、脂質の摂取を抑えます。
③食物繊維の摂取は控える
食物繊維は普段は不足しがちのため積極的に摂るべき栄養素なのですが、摂りすぎると下痢を起こしたり、レース中にはガスがたまってお腹が張ったりする原因となりますので控えるようにします。
食物繊維の多い玄米や野菜・海藻・きのこ類は少なめにし、体調管理に必要なビタミン・ミネラルは野菜ジュースや果物・サプリメントなどで補うようにしましょう。
④衛生面に注意する
生もの(寿司・刺身など)や、何日も日が経っているお惣菜は、食あたりを起こす危険性がありますので避けるのが無難です。遠征先の海産物が食べたくても、生の刺身や海鮮丼はマラソンが終わった後のお楽しみにして下さい。また、牛乳もお腹がゆるくなりやすい方は控えるとよいでしょう。
⑤夜の食事は早めにすます
マラソン前夜の食事は食べる時間帯も考慮しなければなりません。
夜遅くに食事をとると、寝ている間も胃腸は消化活動を行わなければならなくなり、睡眠の質を下げてしまいます。前日の夕食は消化のよい料理を選び、寝る前の2~3時間前までにすませるようにしましょう。
マラソン前日に良い食べ物・悪い食べ物
マラソン前日におすすめの食べ物とそのポイントについて、それぞれ記載いたします。
◯ごはん・・・玄米や五穀米でなく精製された白米を食べる。餅は高エネルギーなのでなおよい
◯パン・・・食パンやバターロール、ホットケーキならOK。脂質の多いクロワッサンは避ける
◯うどん・・・食べやすくて糖質をとりやすい。天ぷらのトッピングは避ける
◯そば・・・食べやすくて糖質をとりやすい。天ぷらのトッピングは避ける
◯和菓子・・・あんパン、カステラ、ようかん、まんじゅうなどは糖質が多く低脂肪なので、たくさんの量を食べられない方におすすめ
◯果物・・・糖質だけでなく、体調管理に役立つビタミンもとれる
△ラーメン・・・食べてもよいが、極端にこってりしたものや辛いものは避ける。揚げ物のサイドメニューは避ける
△カレー・・・食べてもよいが、極端に辛いものは胃腸に負担をかけるので避ける
△パスタ・・・食べてもよいが、外食のパスタには油が多く使われているので注意
×焼肉・・・たんぱく質・脂質が中心で、糖質摂取が後回しになってしまうのでNG
×洋菓子・・・チョコレート、クッキー、スナック菓子、ケーキなどは糖質はとれるが、脂質がそれ以上に多いのでNG
×お酒・・・二日酔いになる可能性がある上、アルコールには脱水作用もあるため、ウォーターローディングの観点からNG
まとめ
- マラソン前日は糖質中心の食事をとり、体のエネルギー源であるグリコーゲンの貯蔵量を増やす
- たんぱく質や脂質は胃腸に負担がかかるので、肉や魚を使ったおかずは少なめにする
- 食物繊維はお腹が張る原因となるので、野菜や海藻のおかずは少なめにする
- 衛生面に十分注意し、生ものや日の経ったお惣菜は避ける
- 前夜の食事は消化のよい料理を選び、寝る2~3時間前にすませる
参考文献
田口素子・樋口満 編:「体育・スポーツ指導者と学生のためのスポーツ栄養学」.市村出版,2014.
加藤秀夫・中坊幸弘・中村亜紀 編:「スポーツ・運動栄養学」.講談社,2012.