こんにちは。スポーツ栄養士の盛岡です。
今月からエレファンツもキャンプイン。最近はずっと室内練習だったのですが、雪も溶けて先日は久々に外での練習ができました。
この日の練習は午後1時から開始だったのですが、「朝ごはんは食べていない」という選手が数名いたのがちょっと気になりました。
皆さんは毎朝欠かさず食事をとっていますか?
朝食はとらずに10時ごろにブランチという選手もいましたが、消費エネルギーの多いスポーツ選手であるなら朝食抜きというのはあまりよくありません。
そこで今回はアスリートにとって朝食はなぜ必要なのか、体づくりにおける朝食の効果についてご説明し、後半ではメニュー・レシピ例もご紹介いたします。
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目次
スポーツ選手における朝食の重要性
体のエネルギー源になる
朝食の一番の役割はエネルギー補給です。
朝食で補給できる糖質(炭水化物)やたんぱく質は、そのまま午前中に使えるエネルギー源として活用されます。運動前にエネルギーが蓄えられていないと、疲労が現れるのも早くなります。朝練や午前中から試合・練習を行う場合には、朝食でのエネルギー補給は不可欠です。
朝に運動をしないとしても、活動量が多く1日に3000kcalや4000kcalもエネルギー補給が必要なスポーツ選手にとって、食事の回数をできるだけ多くすることはとても重要なこと。朝食を食べないというのは問題外です。
たんぱく質などの栄養補給
エネルギーだけでなく、昼と夜の2回の食事だけでは1日に必要なたんぱく質やビタミン・ミネラルも十分に補給することはできません。
アスリートに必要なたんぱく質摂取量は普通の人のおよそ2倍。ビタミンやカルシウムなども普通の人より多く必要になります。
朝食抜きでは強い筋肉・大きな体格を作ったり、スタミナをつけたりするのはかなり難しいでしょう。
体温上昇・体内時計のリセット
朝食にはエネルギー源の補給と同時に体温上昇を促す作用があります。これは食べ物をとると起こる「食事誘発性熱産生(DIT)」という現象です。体温の上昇は食事摂取から1時間後にピークとなり、5~6時間持続します。
体のリズム(体内時計)は正確に24時間のリズムにはなっておらず、実際には1時間ほどのズレがあります。朝食をとって胃腸が動き出し体温が上がることによって、体内時計がリセットされ活動に適した状態を効率的に作り出すことができます。
集中力・やる気のスイッチが入る
起床時は、前日の夕食がかなり時間が経っていて、肝臓における貯蔵エネルギーであるグリコーゲンは減少しています。
朝食をとることで、脳の最大のエネルギー源であるブドウ糖が供給されて、集中力ややる気のスイッチが入ります。
肥満の予防になる
朝食の欠食と肥満には関係があることは多くの研究から明らかになっています。「朝食を食べないとその分のカロリーが減るから太りにくいのでは?」と思うかもしれませんが、次の理由から体脂肪の増加につながると考えられています。
①朝食抜きで糖質がとれないと、体は筋肉を分解(糖新生)することでエネルギーを作り出してしまい、基礎代謝の低下を招く
②朝食抜きにすると昼食・夕食でドカ食いしやすくなり、急激な血糖値の上昇が起こる。それに併せてインスリンというホルモンが急激に分泌され、余剰なエネルギーを体脂肪として蓄えてしまう。
太りにくい体質を作り、肥満を予防するという意味においても朝食をとることは大切です。
朝食のとり方
朝食の必要性をお分かり頂いたところで、次にスポーツ選手はどのように朝食をとったらいいのかをご説明します。
朝でも「栄養フルコース型」の食事メニューに
アスリートの強い体づくりのためには、朝からしっかり栄養のとれる食事をとらなければなりません。
高校生以上であれば1日に3,000~4,000kcalを摂取しなければならないことを考えると、間食を取り入れるとしても朝から1,000kcal程度のエネルギー摂取が必要になります。
朝食のメニューはごはんやパンといった主食だけでは不十分です。良質なたんぱく質のとれる卵や納豆・焼き魚などの主菜と、ビタミン・ミネラルもとれるように野菜・乳製品・果物の5つをそろえた「栄養フルコース型」の食事メニューが理想です。
食事誘発性熱産生において、最も効率的に体温上昇を促す栄養素はたんぱく質です。朝食を食べる習慣のない方は、まずはエネルギー源になる主食とたんぱく質源になる主菜の2点セットだけでもとるようにして下さい。
なお食べ物を消化する時間を考慮して、午前中に試合や練習があるときは、運動をはじめる3時間前までに食事をすませるようにしましょう。
早朝に練習があるときは
例えば朝の6時に早朝トレーニングを行う場合には、さすがに朝の3時に食事をとるわけにもいきません。かといって何も食べないで練習をはじめても力が入りませんし、低血糖になる恐れもあります。
そんなときにはおにぎりやバナナ、エネルギーゼリーなどをとって、すぐにエネルギーに変わる糖質だけ補給しておきましょう。たんぱく質や脂肪分は消化に時間がかかりますので、朝練が終わってから改めて食事をとるようにします。
午後イチから練習のときは?
冒頭でお話しましたような午後1時から練習となりますと、12時ごろに十分な食事をとるというのは難しいかと思います。しかしだからといって朝食をとらずにブランチでは食事の回数が減ってしまいます。
たとえ土日であっても生活のリズムは崩すべきではありませんので、できるだけ平日と同じ時間に起きて朝食をとるようにしましょう。お昼から練習がある場合には、始まる1~2時間前くらいにおにぎりやサンドイッチなど糖質中心の軽食でエネルギー補給をします。
オレンジジュースやアセロラジュースなら糖質と一緒にビタミンもとれますのでおすすめです。
朝食メニュー例
朝に必要な食事量が分かるように、朝食のメニュー例を写真付きで掲載いたします。
通常の朝食メニュー
昼食や夕食が外食になりがちな人は、朝食で野菜・果物をしっかりとって栄養のバランスを整えることが大切です。
下記は栄養フルコース型の食事メニューの例になります。練習時間が長い場合や増量期であればもっとごはんが多くてもよいでしょう。
エネルギー:957kcal
【献立】
- ごはん(200g)
- 具だくさんコンソメスープ
- 目玉焼き(1個)+トマト(1/2個)
- 納豆
- ヨーグルト
- オレンジジュース(200mL)
試合前の朝食メニュー
試合当日は糖質中心の食事でエネルギー補給をしましょう。肉や魚のおかずや乳製品は控えて、胃腸に負担のかかるたんぱく質・脂肪分の摂取量をできるだけ少なくします。
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特にサッカーやマラソンなどの持久性競技では、下のメニュー例のように糖質を多く補給してグリコーゲン貯蔵量を増やす「カーボローディング」が必要になります。
エネルギー:826kcal
【献立】
- きつねうどん
- ごはん やや大盛り(200g)
- 100%りんごジュース
まとめ
- 必要な栄養素の多いアスリートにとって、朝食でのエネルギーやたんぱく質の補給は不可欠。
- 朝食を食べることで体温が上昇し、1日を活動的に過ごせる。
- 朝食を食べないと太りやすい体質になる。
- 朝食は主食・主菜・副菜・乳製品・果物をそろえた「栄養フルコース型」のメニューにする。
参考文献
加藤秀夫・中坊幸弘・中村亜紀 編:「スポーツ・運動栄養学」.講談社,2012.