こんにちは。管理栄養士の盛岡です。
スポーツをする子供が体力をつけるためには、1日の活力になる朝ごはんをしっかりとることは大切です。なかなか食欲が出ず、パンと牛乳だけといった簡単な食事になっていたりしませんか?
「ジュニアアスリートの食事方法」でも説明していますが、朝ごはんが十分にとれていないと、以下のような問題が生じる可能性があります。
- 勉強や運動時の集中力の低下
- 筋力や代謝の低下
- 体脂肪の増加(肥満)
朝に食事をとることによって体温が上昇し、規則正しい生活リズムもつくられるようになります。朝ごはんの習慣は大人になってからも続きますので、子供のうちに習慣にしておきたいところ。
そこで今回はジュニアアスリートの朝食メニューを考える際のポイントや、具体的な献立例について解説します。
関連記事:試合当日の朝ごはんメニュー例
目次
子供の朝ごはんが大事な理由
寝起きの朝ごはんはなかなか食欲がわかず、大人であっても食べにくいものです。しかしより多くの栄養が必要になるジュニアアスリートの場合、朝に食事をとらない、あるいは少ししか食べないとなると、1日に必要な栄養をとるのは難しくなってしまいます。
朝ごはんは1日の始まりで、元気に活動するためのウォーミングアップの一環です。朝ごはんをとることで体内時計が整い、体温が上がって活発に動けるようになるとよくいわれますよね。
では実際にどれくらい変わってくるのか。下のグラフ1)は朝ごはんを食べる習慣のある人とない人での体温を表したものです。
このグラフからも分かるように、朝ごはんを食べるかどうかで、午前中の体温に大きな違いが出るようになります。朝食抜きのグループは、通学時の歩行などで体を動かすため一時的に体温は上昇しますが、その後は昼食をとるまで上がりません。
エネルギーが足りない、体温が上がらないという状態では、本来出せるはずの力も出せるはずがありません。午前中に練習があるという場合には、なおさらしっかり食べることが大切です。
朝ごはんのメニューのポイント
朝ごはんのメニューを考える際には、以下のポイントをチェックしてみましょう。
ジュニアアスリートの食事量・カロリー
食事量については1日の3割程度を朝食でとれるようにしましょう。食が細い子は捕食をとって食事回数を増やすのも1つですが、あまり午後に食事が偏ってしまうのは考えもの。
子供といえど、スポーツをしている場合には消費するエネルギーが多く、また成長期なので成長する分の栄養補給も大切です。1食あたりのカロリーで換算すると、小学生では500~700kcal、中学生では700~900kcalが大まかな目安になります。
何だかすごい量に思えてくるかもしれませんが、朝からボリューム満点の肉料理を食べたりしないといけないわけではありません。牛乳や果物をそろえてのカロリーなので、ボリューム感についてはこの後の献立例を参考にしてください。
主食は白米とパンのどちらがよいか?
栄養相談をしているとき、これは本当によく受ける質問です。
ごはん(白米)とパンで栄養価に大きな違いがあるわけではないので、基本的にはどちらでもよいです。ただ洋食のメニューは脂質を多くとりがちになるため、その点は注意が必要です。
食パンにバターをぬるくらいならいいですが、おかずでベーコンエッグとドレッシングをかけたサラダ、と続いたりするとちょっと脂質が多いです。この場合は目玉焼きの代わりにゆで卵にしたり、副菜は和食にしたりしてバランスをとりましょう。
また高脂肪な菓子パンやクロワッサン・カレーパンよりは、ロールパン・ぶどうパンなどの方がよいです。
関連記事:アスリートの朝ごはんはパンでもいい? >
朝のタンパク質は大切
朝食には体温を上げる効果があるとご説明しましたが、その効果が最も高いのがタンパク質になります。タンパク質は1度に吸収できる量が限られているため、昼食・夕食だけでなく朝食でもしっかりタンパク質を含む食品を取り入れるとよいです。
タンパク質は肉・魚・大豆・牛乳・卵に良質なものが含まれていますので、最低でも1品はこれらの食材を取り入れたメニューにしましょう。
<朝にとりやすいタンパク源のメニュー・食材>
・納豆、豆腐、豆乳
・目玉焼き、ゆで卵、スクランブルエッグ
・焼き魚、サバ缶、サケフレーク
・ウインナー、ハム、ベーコン
・牛乳、ヨーグルト、チーズ
・蒸し鶏のサラダ、ツナサラダ
子供の食欲がなく食べられない場合の対処法
朝食を抜いてしまう場合やたくさん食べられない場合は、まず生活習慣も見直してみましょう。
ギリギリまで寝て起きたらすぐ食卓につくというのでは、なかなか食欲もわかない上、よく噛んで食べる時間もとれません。
日本スポーツ振興センターの調査2)によると、小学生・中学生ともに起床時刻の遅い子供ほど朝食欠食の頻度が高くなることが分かっています。
また同様の調査で、就寝時刻の遅い子供ほど朝食の欠食が多くなっています。この結果から、夜型の生活リズムは朝食の欠食を引き起こしやすいことがわかります。特に子供にスマホをもたせている場合は、就寝前は見ないようにさせて、早く寝るようにすることが大切です。
朝いつもギリギリまで寝ているのであれば、10分ほど早く起きてみて、水や牛乳で胃腸を動かし、ストレッチなどをして体を目覚めさせましょう。起きてすぐ食事をするよりは、少しは食欲が出てくるはずです。
牛乳1杯、おにぎり1個、シリアルなど、少しずつでいいので食べる習慣をつけて、次第に量を増やしてみてください。
子供の朝食の献立例
ここからは食事量の参考になるよう、和食・洋食ごとの献立例をご紹介いたします。
和食(ごはん)の献立ー小学生スポーツ選手
- ごはん(150g)
- 納豆
- めかぶパック
- じゃがいもと玉ねぎのみそ汁
- バナナ
- ヨーグルト(1カップ)
カロリー | 595kcal |
タンパク質 | 20.9g |
カルシウム | 354mg |
小学生スポーツ選手が対象の献立例です。食が細い子にはバナナが手軽な糖質源になりますのでおすすめ。バナナはビタミンは少ないですが、カリウム・マグネシウムなどのミネラルは豊富にとれます。
また副菜にはサラダやおひたしもいいですが、めかぶやもずくのパックも準備する必要がないので楽です。
和食(ごはん)の献立ー中学生スポーツ選手
- ごはん(200g)
- 目玉焼き+ウインナー
- 千切りキャベツ
- 小松菜と桜えびのみそ汁
- キウイ
- 牛乳
カロリー | 797kcal |
タンパク質 | 28.8g |
カルシウム | 421mg |
中学生スポーツ選手が対象の献立例です。ごはんは普通盛りだと少ないので、少し多めにしましょう。中学生だと個人差が大きいので、体の大きい選手は300gくらいあってもいいです。
タンパク質源となるメニューは、卵や納豆・豆腐・ウインナーなどから2点ほどそろえてください。
みそ汁には桜えびを入れていますが、桜えびは100gあたりのカルシウム量が実は最も多い食品なので、カルシウム不足解消におすすめのちょい足し素材です。
洋食(パン)の献立
- トースト(4枚切り)+ハムチーズ
- カレーコンソメスープ
- トマト入りココット
- オレンジジュース
カロリー | 636kcal |
タンパク質 | 31.7g |
カルシウム | 266mg |
こちらは洋食の場合の献立例です。食パンだと小学生は4枚切りが1枚(8枚切りが2枚)、中学生は6枚切りが2枚くらいを目安にしましょう。
具だくさんのスープは野菜をたくさん取りやすいのでおすすめです。カレー粉などの香辛料を使うと、辛味成分が消化液や唾液の分泌を促すことで食欲を増進させてくれます。
トマト入りココットはレンジで手早くできるので、忙しい朝に便利なメニューです。目玉焼きと比べると油を使わないので低カロリーですし、フライパンを使わないため洗い物も1つ減ります。
<※トマト入りココットのレシピ(1人分)>
- トマトはへたを除き、一口大に切る。
- 耐熱容器にトマト1/4個と卵1個を入れ、卵黄につまようじで小さな穴をあける。
- 電子レンジ600Wで1分加熱する。
- 塩コショウ、お好みでパセリをふりかけて出来上がり。
ジュニアアスリートにはたくさんの栄養素が必要なので、朝からタンパク質やカルシウムもしっかりとる必要があります。1日のスタートである朝ごはんをしっかり食べて、強い体づくりを目指しましょう!
まとめ
- 朝から食事をしっかりとることで、体温が上昇し、体のリズムが整う。
- 朝食では1日の3割ほどのエネルギーを摂取できるとよい。
- 主食はごはん(白米)とパンのどちらでもよいが、洋食のメニューは脂質を多くとりがちになることに注意する。
- タンパク質は体温を上げる効果が最も高く、朝食でも卵や納豆などからタンパク質をとるようにするとよい。
- 夜型の生活リズムになっている子供は、朝食を欠食しやすい傾向にある。
- 朝に食欲がわかない場合は、少し早く起きてみて、軽く体を動かすようにする。
参考文献
1) 鈴木正成:「ジュニアのためのスポーツ栄養学」.全国米穀協会, 1993.
2) 独立行政法人日本スポーツ振興センター:平成22年度児童生徒の食生活実態調査