こんにちは!スポーツ栄養士の盛岡です。
連日真夏日が続いてますね・・・^^;;
こんな時期のトレーニングは体が疲れる前に、暑さにやられてしまいますね。私は先週の日曜日には20kmのスロージョギングをしていたのですが、15km付近から体が非常に重たくなり、結局17kmでへばってしまいました。なんとか歩いて帰れたものの、その後は気分が悪くなり、だるくてもう動きたくないといった状況に・・・
今思えばあれはもう完全に熱中症でした。暑い時期のトレーニングは本当に気をつけないといけないですね・・・
そのときは持っていなかったのですが、こんなときに本当は必要になってくるのが「経口補水液」です。
最近では所ジョージさんが出演している「OS-1(オーエスワン)」のCMがよく流れているので、ご存じの方も多いと思います。今回はこの「経口補水液」とは何なのか、一般的なスポーツドリンクとはどう違うのか、飲み方と併せて解説していきます。
目次
経口補水液とは
経口補水液は”飲む点滴”
経口補水液(ORS:Oral Rehydration Solution)とは、体から失われた体液(水分、電解質、非電解質)を経口的に補う飲料のことです。経口補水液には①水、②電解質(特にナトリウムイオン)、③炭水化物(特にブドウ糖)が一定の割合で含まれています。
用途として、経口補水液は下痢・おう吐・熱中症による脱水症を改善するために使用する飲料で、塩分や糖分が理想的な比率で配合されていることから「飲む点滴」ともいわれています。
また点滴の代わりとして、口から経口補水液を摂取することにより脱水症を改善させる治療法のことを「経口補水療法(ORT:Oral Rehydration Therapy)」といいます。
市販の商品で一番有名なのは、冒頭でも触れました大塚製薬社の「OS-1」です。
脱水症は真水だけを飲んでも回復しない
おう吐や下痢・発汗による脱水症のとき、体は水分だけでなく塩分の喪失した状態にあります。
体内と水分が不足すると、脳にある口渇中枢が刺激されて「のどが渇いた」と感じるようになります。このときに真水を飲んだとしてものどの渇きは解消されますが、塩分が補給されていないと水分は細胞内に入り込むことができず、細胞レベルでは脱水状態が続きます。
すると、細胞内に入れない水分は細胞外にばかり溜まります。体液のミネラル濃度が薄まってしまうと、身体にさまざまな弊害を生じ、命の危険にまでつながることもあります。
細胞内にまで水分を与えるには、ナトリウムをはじめとしたミネラル(電解質)を同時に摂取する必要があるのです。
スポーツドリンクとの違いは?
ポカリスエットとOS-1の成分比較
スポーツドリンクも水分・ナトリウム・糖分を含んでいますが、経口補水液とはどのような違いがあるのでしょうか。
含まれている成分や特徴について、同じ大塚製薬社の「ポカリスエット」と「OS-1」とで比較してみました。
ポカリスエット (100mL中) |
OS-1 (100mL中) |
|
エネルギー | 25kcal | 10kcal |
炭水化物 | 6.2g | 2.5g |
ナトリウム | 49mg | 115mg |
味 | 美味しい | 美味しくない |
吸収の速さ | 普通 | 速い |
利用シーン | 日常生活 スポーツ中 |
過度の発汗や脱水 下痢・嘔吐・発熱 |
スポーツドリンクであるポカリスエットに比べ、経口補水液のOS-1の方が糖分(炭水化物)が少なく、塩分(ナトリウム)が多いことが分かります。
経口補水液は糖分が少なく、普通に喉が渇いたときに飲む飲料として設計されているわけではないため、味はあまり美味しくありません。
しかし、塩分を多く含んでいるのでより激しい発汗や重度の脱水に対応することができます。また、糖分が少ないことにより濃度が体液より薄く、水分がより速く吸収されるという特徴があります。
(ナトリウムはスポーツドリンクよりも濃いですが、糖分の方が分子が大きいため浸透圧に与える影響が強く、糖分濃度の低い経口補水液の方が吸収されやすくなります。液体の濃度と浸透圧について詳しくは「ハイポトニックとアイソトニックの違い」をご参照下さい。)
経口補水液はどこで買える?
OS-1は、消費者庁から「個別評価型病者用食品」の表示許可を取得している医薬品に準じた商品のため、コンビニに置かれていることはほとんどありません。
経口補水液は薬の取り扱いができる薬局・ドラッグストア、または病院に併設されたコンビニなどで販売されています。
私も近所で経口補水液が売っているところを探してみましたら、ドラッグストアの健康食品売り場や介護食品売り場に並んでいました。
各商品の味や成分の違いについては下記リンクのページをご参照下さい。
経口補水液の飲み方
経口補水液を飲むときの注意点
経口補水液を飲む際の注意点として、飲みにくいからといって水で薄めたり他の飲料と混ぜたりしないように気をつけて下さい。経口補水液の塩分濃度・糖分濃度はそれぞれ脱水対策のために計算して設計されていますので、濃度を変えてしまうと効果が薄くなってしまいます。
濃度が変わるとよくないという点では、凍らせるのもよくありません。凍らせてしまうと糖分などの水よりも重い成分は容器の上層部では薄く、底のほうでは濃い状態で凍ってしまいます。成分が不均一な状態になるのは避けなければなりません。
もしもしょっぱい味が苦手で飲みづらい場合には、ストローを使って飲んだり、ゼリータイプの経口補水液を利用しましょう。
また、経口補水液は軽度〜中等度の脱水状態に効果的ですが、症状がひどい場合はすぐに医療機関を受診するようにして下さい。
普段のスポーツ中に利用してもいいか?
経口補水液はスポーツ中の脱水症対策に有効です。
練習中に熱中症の症状が出てぐったりしている、そんなときには迷わず使用していいかと思います。では「明らかに熱中症だ」と判断できるレベルになるまで、経口補水液は利用してはいけないのかというと、そうとは限りません。
私が冒頭でお話しました20kmのスロージョギングの際も、30~40分に一度スポーツドリンクで水分補給を行っていましたが、それでも軽い熱中症になりました。
これは補給する間隔が少し長かったのもありますが、そもそもスポーツドリンクで十分に水分を補給しても、発汗量に見合った塩分を補給することはできないことが理由にあります。
汗に含まれるナトリウム濃度はおよそ70~200mg(平均115mg)/100mLあり、普段の発汗量が多いアスリートは塩分の排出量が比較的少ないのですが、それでも70mg以上はあります。
それに対し、スポーツドリンクのほとんどはナトリウム濃度が40mg/100mL程度です。排出した水分と同じだけのスポーツドリンクを飲んだとしても、ナトリウムの補給は間に合わないのです。
発汗量がそれほど多くもない場合であればスポーツドリンクでも間に合うかもしれませんが、7~8月の炎天下で激しい運動をし、大量に発汗している場合には、スポーツドリンクを飲んでいても体は徐々に熱中症の状態に近づいていく恐れがあります。
「経口補水液は脱水症状がみられてから」という人がいますが、それには私は疑問です。熱中症になってからの対策よりも、予防することの方が大事なのは言うまでもありません。そもそも高齢の方だと、体が脱水を察知しにくいため本人が自覚しないうちに熱中症が進んでいることがあります。
ニュースでも「命に関わる危険な暑さ」と言われるようになりました。そういった環境下では熱中症になってから経口補水液を飲むというよりも、熱中症予防のためにはじめから経口補水液を飲むようにすることも検討しましょう。
まとめ
- 経口補水液は水分の吸収速度が速く、塩分補給においてスポーツドリンクよりも優れている。
- 炎天下でのスポーツ時や、熱中症になってしまった際には経口補水液を活用しよう。
参考文献
ポカリスエット公式サイト:http://pocarisweat.jp/
OS-1公式サイト:http://www.os-1.jp/
Wikipedia: 「汗」,https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B1%97,2016年8月参照
谷口英喜:「経口補水療法ハンドブック[改訂版]」.日本医療企画,2013.