スポーツ栄養学の基本

【管理栄養士監修】アスリートはもっと牛乳を飲んでカルシウムをとろう

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アスリートに必要な牛乳・乳製品の摂取量

こんにちは!スポーツ栄養士の盛岡です。

アスリートはハードなトレーニングや接触プレーで大きなケガをしないために、強い骨を作ることは非常に大切です。もし骨折をしたら、治るまでにどれくらいの時間がかかると思いますか?

例えば太ももの骨(大腿骨)を骨折した場合は完治するまでにおよそ3ヶ月、ランナーに多いすねの疲労骨折でしたら3週間~6週間の時間がかかります。もとのパフォーマンスに戻すまでにはさらに時間がかかるでしょう。

3ヶ月間も離脱をしていたらシーズンを棒に振ることにもなりかねません。選手の多くは筋肉を付けることについての関心は高く、たんぱく質はしっかり摂取しようとしますが、骨を強くするためのカルシウムについてももっと意識して摂取する必要があります。

日本人のカルシウム摂取量はおよそ300~400mgで、推奨量である20代男性の800mg、20代女性の650mgを大きく下回っています。アスリートはケガのリスクが高く、汗によるカルシウム排出量も多いため、普通の人以上にカルシウムをしっかりとらなければなりません。

脂肪や筋肉と違って骨量の増加には時間がかかりますが、だからこそ日ごろから習慣的に摂取できるカルシウム源として、牛乳・乳製品が役に立ちます。そこで今回はアスリートに必要な牛乳・乳製品の摂取量と、必要量を簡単に計算する方法についてご説明いたします。

食事バランスガイドを活用しよう

牛乳・乳製品に含まれているカルシウムの含有量は製品によって違ってきます。

しかし必要な栄養素量を把握するために、一つ一つの製品のカルシウム量をチェックするのは大変です。そこで必要な栄養素量を大まかに計算するために、厚生労働省と農林水産省が策定している「食事バランスガイド」が役に立ちます。

食事バランスガイドとは食事内容を主食・副菜・副菜・乳製品・果物の5つの料理区分に分類して、1日に必要な食事量として「何を」「どれだけ」食べたらよいかを、食品や料理単位で簡単に計算するためのツールです。

食事バランスガイド

食事バランスガイドと各料理区分のアスリートにおける役割についてはこちら

この「どれだけ」の単位は、牛乳・乳製品では一定のカルシウム量を基準として「1つ」「2つ」という数え方をしています。例えばチーズ1個は「1つ」、牛乳のコップ1杯分は「2つ」と数え、一般的な成人男性は1日に2つ分の牛乳・乳製品が目安に定められています。つまり成人男性の場合はチーズで換算すれば1日に2個、牛乳に換算すれば1日にコップ1杯をとる必要がある、ということになります。

このツールはスポーツ選手にも応用することができますので、まずは具体的な数え方についてご説明していきます。

牛乳・乳製品の数え方

牛乳・乳製品の数量(つ)は下記の写真のようになります。詳細な食材の重量と料理区分の数量(つ)について知りたい方は、農林水産省の「SV早見表」をご参照下さい。

牛乳

牛乳は、普通の牛乳でも低脂肪牛乳でもコップ1杯分(200cc)で「2つ」と数えます。

牛乳はコップ1杯(200cc)で2つ

ヨーグルト

ヨーグルトは1カップ分で「1つ」になります。

ヨーグルトは1カップで1つ

チーズ

チーズはプロセスチーズ1個、スライスチーズ1枚をそれぞれ「1つ」と数えます。

プロセスチーズは1個で1つスライスチーズは1枚で1つ

豆乳は牛乳の代わりになる?

「牛乳の代わりに豆乳を飲んでもいいですか?」という質問をよく受けます。

豆乳にはイソフラボンや鉄分などが含まれていて栄養豊富な食品ではあるのですが、牛乳のようにカルシウムはビタミンB2はあまり含まれておらず、牛乳の代わりにはなりません。

豆乳は食事バランスガイドにおける区分では、どちらかというと大豆由来のたんぱく質源となるため「主菜」に含まれます。

アスリートの牛乳・乳製品の摂取目安量

必要な副菜の量は競技種目によって異なります。下記は競技種ごとの牛乳・乳製品の目安量(1日分)になります。1日のエネルギー量は体重ごとに記載していますが、細かく計算したい方は「競技別&5分でできるカロリー計算方法」のページを参考にして下さい。

※目安量は週に5日以上の練習をしている高校生以上の方を対象としています。
アマチュアスポーツ選手の目安量はこちらをご参照下さい。
小学生~中学生の目安量はこちらをご参照下さい。

瞬発系競技

野球、陸上短距離、陸上投てき(砲丸投げ、やり投げ、円盤投げ、ハンマー投げ)、陸上跳躍(走り幅跳び、高飛び)、体操、水泳距離、柔道、剣道、ボクシング、スピードスケート、ゴルフ、など

男性

体重(kg) エネルギー(kcal) 目安量(つ)
51~60 2,800~3,200 3~4
61~70 3,200~3,600 3~4
71~80 3,600~4,000 4~5
81~90 4,000~4,400 4~5

女性

体重(kg) エネルギー(kcal) 目安量(つ)
36~40 1,600~2,000 2~3
41~50 2,200~2,400 2~3
51~60 2,600~2,800 2~3
61~70 2,800~3,200 3~4
71~75 3,200~3,600 3~4

筋持久力系競技

サッカー、テニス、バレーボール、バスケットボール、卓球、バドミントン、陸上中距離、ケイリン、フィギュアスケート、ラグビー、アメフト、ホッケー、カヌー、など

男性

体重(kg) エネルギー(kcal) 目安量(つ)
51~60 2,800~3,200 3~4
61~70 3,200~3,600 3~4
71~80 3,600~4,000 4~5
81~90 4,000~4,400 4~5

女性

体重(kg) エネルギー(kcal) 目安量(つ)
36~40 1,600~2,000 2~3
41~50 2,000~2,400 2~3
51~60 2,400~2,800 2~3
61~70 2,800~3,200 3~4
71~75 3,200~3,600 3~4

持久力系競技

マラソン、ロードバイク、水泳長距離、トライアスロン、ボート、クロスカントリースキー、など

男性

体重(kg) エネルギー(kcal) 目安量(つ)
51~55 3,200~3,600 2~3
56~63 3,600~4,000 2~3
64~70 4,000~4,400 3~4
71~78 4,400~4,800 3~4
79~85 4,800~5,200 3~4
86~90 5,200~5,600 4~5

女性

体重(kg) エネルギー(kcal) 目安量(つ)
36~45 2,400~2,800 2~3
46~55 2,800~3,200 2~3
56~65 3,200~3,600 2~3
66~70 3,600~4,000 2~3
71~75 4,000~4,400 3~4

牛乳が苦手・飲めない場合は

ヨーグルトや乳糖を除去した牛乳を試してみる

牛乳を飲むと下痢をしてしまう・お腹がゴロゴロしてしまう方は、乳糖不耐症の症状が出にくいチーズやヨーグルトなどの乳製品をとるようにしましょう。また、雪印メグミルクの「アカディ」という牛乳は、乳糖を除去した牛乳でお腹がゆるくなりにくいのでおすすめです。

牛乳・乳製品以外のの食品で補うには

牛乳・乳製品以外の食品では、小松菜やほうれん草などの緑の濃い葉野菜、煮干しやシシャモなどの小魚、ひじきやわかめなどの海藻類にもカルシウムは含まれています。

ただし、牛乳・乳製品と同じだけのカルシウムを、野菜や魚だけで補うとなると少し大変だと私は思います。下記の表は牛乳・乳製品「1つ」分のカルシウムを、それぞれの食品で補った場合の量です。

食品 概量
煮干し 15尾
ししゃも 3尾
しらす干し 50g(冷奴に載せる分量の約5倍)
いわしの缶詰 1/2缶
小松菜 1/3束
ほうれん草 1束
木綿豆腐 1/3丁
絹豆腐 2/3丁(冷奴2個分)
ひじき ひじきの煮物の小鉢1個分

いわしの缶詰や小松菜なら比較的少量でも摂取できますが、他の食品ではなかなかのボリューム。ほうれん草を1束も食べたらそれだけでお腹が膨れてしまいそうです。

ほうれん草1束

他の野菜や魚にもカルシウムは含まれていますが、含有量は種類によって様々です。例えば魚ではしらすやシシャモなどの小魚にはカルシウムは多く含まれていますが、鮭やサバにはほとんど含まれていません(※サバの缶詰なら骨ごと食べればたくさん摂取できます)。

アスリートに必要なカルシウムを毎日摂取するとなると、習慣的に取り入れやすい牛乳やヨーグルトなしでは現実的にはなかなか大変です。(私自身、牛乳・乳製品なしで献立を立てようと思うと結構しんどいです^^;)

牛乳アレルギーでどうしても飲めないという方は、サプリメントで補うことも検討するとよいでしょう。

まとめ

  • 強い骨を作るために適切な量の牛乳・乳製品をとってカルシウムを補給しよう
  • 主な牛乳・乳製品の数量(つ)を覚えて、概算で自分に必要な量を把握しよう
  • 牛乳・乳製品が苦手な場合は、野菜や海藻、小魚で補うか、サプリメントで補うようにしよう

参考文献

日本栄養士会 監修:「『食事バランスガイド』を活用した栄養教育・食育実践マニュアル」.第一出版,2011.
平成26年度「国民健康・栄養調査」:http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000106405.html
加藤秀夫・中坊幸弘・中村亜紀 編:「スポーツ・運動栄養学」.講談社,2012.

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