プロテイン・サプリメント

マラソンにおけるプロテインの必要性とおすすめ商品【管理栄養士監修】

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プロテインでマラソンの練習をより効果的に!

こんにちは。スポーツ栄養士の盛岡です。

「プロテイン」というと、筋トレをして体を大きくしたい人だけのものだと考えていませんか?

市販のプロテインにはムキムキでマッチョな男性がパッケージに入っているので、「プロテイン=筋肥大」というイメージを持ちやすいのですが、持久力アップのためにもたんぱく質の摂取はとても大切です。

今回はマラソン選手にとってたんぱく質摂取はどのような効果があるのかや、プロテインの必要性・選び方についてご説明し、後半では市販でおすすめのプロテインも比較してみます。

マラソン選手のプロテイン効果

運動直後のたんぱく質摂取の重要性

筋肉を肥大させる必要のないマラソン選手でも、持久力を上げるためには普通以上に多くのたんぱく質を摂取しなければなりません。その理由は、たんぱく質は筋肉の回復にとても効果的であるからです。

体にとってのエネルギー源である糖質のグリコーゲンは、持久的運動では多く消費されます。このグリコーゲンを速やかに回復させないと、疲労が残って翌日以降のトレーニング強度が落ちてしまったり、足りないエネルギーを体は筋肉を分解することでまかなおうとしてしまいます。

グリコーゲン消費による疲労を回復させるためには、運動後にまず糖質を速やかに補給することが重要で、さらにたんぱく質も同時に摂取することによって、糖質単体の摂取よりも効率的に筋肉中のグリコーゲンを回復させることができます。

糖質とたんぱく質の同時摂取による筋グリコーゲンの回復

上のグラフ1)は、運動直後の糖質とたんぱく質摂取による筋肉中のグリコーゲンの回復度合いを比較した実験結果を表しています。このグラフから、糖質のみを摂取したグループよりも、糖質とたんぱく質の両方を摂取したグループの方がよりグリコーゲンの回復が見られることが分かります。

なお、運動後にたんぱく質だけを摂取するよりも、やはり糖質とたんぱく質を合わせて摂取した方がよいことも研究から明らかになっています。

関連記事:「運動効果に3倍の差が出る!運動後の食事方法」 ›

運動後は筋肉の合成だけでなく分解も進んでいる状態ですので、運動直後の栄養補給は早ければ早いほど疲労回復に良いとされています。しかし、運動直後に肉や魚の料理を食べてたんぱく質を補給するというのは現実的には難しい場合が多いでしょう。そんなときの手軽なたんぱく質源としてプロテインが役に立つのです。

持久力アップにはたんぱく質が通常よりも多く必要

持久力をつけるためには遅筋線維を発達させる必要があります。パワー系競技の筋肥大ほどではありませんが、この遅筋線維の効果的な発達のためにも、多くの量のたんぱく質を摂取しなければなりません。

健康でいるために必要なたんぱく質量は体重1kgあたり0.8~1g程度になりますが、競技力を向上させるためにはこれ以上のたんぱく質摂取が必要です。

アメリカスポーツ医学会が2009年に発表した「栄養とスポーツパフォーマンス」に関する声明の中では、これまで報告された研究データに基づいたたんぱく質の必要量は、持久性競技のスポーツ選手では体重1kgあたり1.2~1.4gが必要であるとされています。

普通の人は体重1kgあたり0.8~1.0gのたんぱく質が必要マラソン選手は体重1kgあたり1.2~1.4gのたんぱく質が必要

つまり、持久性競技であるマラソンランナーには通常の約1.5倍の量のたんぱく質が必要であるということになります。

コンディショニングの上でもたんぱく質は必要

そのほか、体調管理の上でもたんぱく質は以下のような役割を果たします。

骨の形成

日本人にとってカルシウムはもともと不足しやすい栄養素ですが、マラソン選手は汗で多くのカルシウムを排出してしまうためさらに不足しやすくなります。慢性的なカルシウムの不足や骨の形成を阻害し、骨の強度が落ちると疲労骨折を引き起こす一因となります。

骨づくりに最も重要な栄養素はカルシウムですが、骨組織の一つである「骨基質」という組織の主成分はたんぱく質のコラーゲンからできています。したがって、たんぱく質摂取が不足する場合には骨に悪影響を及ぼすことになりますので、普段から十分な量をとることは大切なのです。

ただし、たんぱく質の過剰摂取は逆にカルシウムの尿中排泄量を増やしてしまいますので、摂れば摂るほどいいというわけではありません。

貧血の予防

マラソン選手は競技中は多くの酸素を運搬するために鉄分が多く使用されたり、足を着地させるときの物理的な衝撃で赤血球が壊れてしまったりするため、貧血(スポーツ貧血)を起こしやすいとされています。貧血の予防には赤血球のヘモグロビンの材料である鉄分とたんぱく質の摂取が大切です。

体を軽くしたいからといって無理な食事制限に取り組んでいると、たんぱく質不足から貧血を招いてしまう危険性があります。また、貧血ぎみの選手の場合は、鉄分だけでなくたんぱく質の摂取量を増加させることにより、鉄栄養状態が改善されることが考えられます。

たんぱく質をたくさん摂れば摂るほど障害を予防できたり、貧血が治るというわけではありませんが、普段から不足しないように注意することが大切で、そのためにもプロテインは手軽なたんぱく質源として役立ちます。

飲むタイミングや摂取量

基本は運動後に飲む

ランニング後のクールダウンをしている女性

前述しましたように筋肉やグリコーゲンのリカバリーには、運動後速やかにたんぱく質を補給することが大切です。したがってプロテインを飲むタイミングは基本的に練習やレースの後になります。

飲む量としては、商品パッケージにはよく「1日にコップ2~3杯分も飲むように」と書かれてあったりしますが、ランナーの場合それほどの量はほとんどの人は必要ありません。とり過ぎは余計なカロリーとなり、体脂肪を増加させる原因ともなります。

飲む量はその商品の1食分程度(たんぱく質として15~20g程度)を目安に摂取するとよいでしょう。2~3km程度の軽いジョギングであれば飲む必要はないかと思います。

その他、朝食が少ないときや昼食がうどんだけのときなど、たんぱく質が不足しているときに適宜栄養補助として活用してください。

マラソン前のプロテイン摂取はNG

反対に、マラソン前にプロテインを飲むのはおすすめしません。

走る前にプロテインを飲むとトレーニング効果が上がりそうな気がするかもしれませんが、たんぱく質というのは消化吸収に時間のかかる栄養素です。走っているときに胃腸を活発に働かせることになると、腹痛の原因になったりしてかえってトレーニング効果を落としかねません。

またマラソン大会の前日もプロテインを飲む必要性はないでしょう。大会前日は練習するとしても軽めの調整ですし、食事についてはごはんや麺類など糖質を中心にとりカーボローディングすることが大切です。

プロテインとアミノ酸の使い分け

同じマラソンランナー用のサプリメントとしてはBCAAなどのアミノ酸サプリがありますが、走る前にはこちらの方がおすすめです。

たんぱく質はアミノ酸が組み合わさって構成されている成分であり、アミノ酸の方がすばやく吸収されます。特にBCAA(分岐鎖アミノ酸)と呼ばれるアミノ酸は筋肉のエネルギーとなることで知られています。

マラソン前・マラソン中はエネルギー源となる糖質やアミノ酸をとり、マラソン後にたんぱく質でリカバリーするといった形で使い分けるとよいでしょう。

ランニングのためのプロテインの選び方

マラソン用のプロテイン

では実際にランニングをしている方がプロテインを利用するにあたって、どの商品を選べばよいでしょうか?

市販されている商品はどれも同じ成分が入っているわけではなく、特徴を出すために様々な成分を配合しております。単純な比較ができないので、目的や食生活に応じて優先順位の高い成分を見極めることが大切です。

プロテインを選ぶ際には、以下のポイントをチェックしましょう。

プロテインの種類

プロテインの種類は大きく分けてホエイプロテイン、カゼインプロテイン、ソイプロテインの3つがあり、それぞれ以下のような特徴があります。

ホエイプロテイン

ホエイプロテインは牛乳由来のタンパク質で、乳清タンパク質ともいいます。乳タンパク質の20%だけに含まれる貴重な成分で、吸収が速いため体内での利用効率に優れています。

疲労回復に役立つBCAA(分岐鎖アミノ酸)が多いのも特徴で、トレーニング後の疲労回復を重視したい方におすすめです。

ソイプロテイン

ソイプロテインは大豆由来のタンパク質です。ホエイプロテインほど吸収は速くありませんが、βコングリシニンやイソフラボンなど、健康によい様々な成分が含まれています。主に以下のような方におすすめです。

  • 体を引き締めたい・減量したい方
  • 美容にも気を配りたい方
  • コレステロール等の健康面も気になる方
  • 乳製品だとお腹がゴロゴロする方

カゼインプロテイン

カゼインプロテインは牛乳由来のタンパク質です。乳タンパク質の80%を占めるタンパク質で、ホエイプロテインとは異なりゆっくりと吸収されます。

ゆっくりと吸収される分、長期間に渡って血中アミノ酸濃度を高い状態にすることから「寝る前に飲むと体の増量に役立つ」と一般的にいわれています。

ゆっくりと吸収されるのは事実ですが、「寝る前にとると増量に良い」というのは理屈(想像)での話であり、カゼインの方がホエイやソイよりも筋肉増量に効果があるという確かなデータはありません。

以上のことから、マラソンランナーは目的に応じてホエイプロテインかソイプロテインを選ぶとよいでしょう。

含まれている成分と含有量

成分と含有量でチェックすべきポイントは以下になります。

  • たんぱく質
  • 炭水化物(糖質)
  • 脂質
  • ビタミン
  • ミネラル
  • その他の成分

疲労回復には糖質が不可欠

持久系競技であるマラソンは、エネルギーを多く消費し疲労度の大きいスポーツであるため、他の競技に比べ糖質の必要量が多いです。糖質摂取が足りないと筋肉のエネルギー源であるグリコーゲンの回復が遅れ、筋肉の分解が進んだり超回復効果が薄くなったりしてしまいます。

そのためマラソンランナーのトレーニング後の疲労回復には、たんぱく質だけでなく糖質が含まれているプロテインを選ぶのが有効です。こういった糖質が多く含まれているプロテインは、市販品では「リカバリープロテイン」といった商品名になっているものが多いです。

ただし、プロテインに含まれている糖質だけでは量が不十分ですので、あくまで運動直後の筋肉の分解を防ぐための応急処置と捉え、その後の食事でごはんやパンをしっかり食べる必要があります。

おにぎり

また、運動後すぐにおにぎりやエナジーバー、エネルギーゼリーなどで糖質を補給する用意ができている場合には、糖質の多いプロテインを選ぶ必要はありません。補給食と組み合わせて、ベーシックなプロテインを選べばよいでしょう。

ランナーに必要なビタミン・ミネラル

ビタミンB群は糖質やたんぱく質の代謝を助ける栄養素で、疲労回復に役立ちますのでランナーには不可欠な存在です。

また、マラソンランナーは多くの酸素を運動中に取り込む分、体の酸化を防ぐための抗酸化ビタミン(ビタミンA・C・E)が多く消費されます。抗酸化ビタミンの不足は免疫力の低下などにつながってしまいますので、これらのビタミンも含まれているプロテインを選ぶとよいでしょう。

ミネラルでは、汗で失われやすいカルシウムマグネシウム、貧血の予防に役立つが含まれているとなおよいです。

内容量と価格

1食あたりに必要な量は、商品によって違う量が設定されており、20gで1食分とする商品もあれば、30gで1食分とする商品もあります。特に糖質を多く含んでいるプロテインはかさが大きくなりますので、単位重量あたりではたんぱく質含有量は比較的少ないです。

例えばたんぱく質だけが入っているプロテインよりも、たんぱく質と糖質が1:1で含まれているプロテインの方が、スプーン1杯分に含まれるたんぱく質の量は当然少なくなります。

コストパフォーマンスを計る上では、全部で何グラムなのかだけでなく、1食分の量にどれだけの栄養素が含まれているのかも加味して考えましょう。

マラソン用プロテインのおすすめ

マラソン・ランニングにおすすめのプロテインをご紹介していきます。

注1:参考価格は2018年9月時点でのAmazonでの販売価格になります。

注2:糖質量は炭水化物を参考にしてください。

ザバス リカバリープロテイン

「結局自分のところのプロテインを売りたいだけだろ!」といわれそうで恐縮なのですが、「大人が飲んでもいいの?」という問い合わせを受けるうち、「子供用として設計してはいるけれど、ランナー用にもいいのではないか」と思ったのです。

その理由としては体を絞りたい方におすすめのソイプロテインであることと、マグネシウムや鉄分といったミネラルが豊富に含まれているためです。

また、植物性の甘味料(ステビア)を使っており、人工甘味料は不使用なので、添加物に気をつけたい方も安心して飲むことができます。

運動後のリカバリーを優先したい方は上に挙げた3つのプロテインの方がおすすめですが、コンディショニングを整えたい方や、成長期(小~中学生)のジュニアアスリートにはこちらのプロテインもおすすめです。

詳細は下記のページをご参照ください。

まとめ

  • 疲労回復には運動直後に糖質と一緒にたんぱく質を摂取することが大切で、運動後の手軽なたんぱく質源としてプロテインは便利である
  • マラソン選手は普通の人よりも約1.5倍のたんぱく質を摂取する必要がある
  • たんぱく質はマラソン選手が陥りがちな骨や血液のリスクを低下させる上でも役立つ
  • 疲労回復にはホエイプロテインがおすすめ
  • 減量したい方や美容・健康にも気を配りたい方にはソイプロテインがおすすめ
  • 運動直後の補給食がない場合には、糖質も補給できるリカバリー系プロテインを選ぶとよい
  • そのほか、糖質やたんぱく質からのエネルギー産生を助けるビタミンB群や、抗酸化作用のあるビタミンA・C、ランナーが不足しやすいカルシウムや鉄分などが入っているかもチェックしよう

参考文献

1)  Ivy JL et al.: Early postexercise muscle glycogen recovery is enhanced with a carbohydrate-protein supplement. J Appl Physiol, 93: 1337-1344, 2002.
菱田明・佐々木敏 監修:「日本人の食事摂取基準(2015年版)」.第一出版,2014.
田口素子・樋口満 編:「体育・スポーツ指導者と学生のためのスポーツ栄養学」.市村出版,2014.
加藤秀夫・中坊幸弘・中村亜紀 編:「スポーツ・運動栄養学」.講談社,2012.

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