スポーツ栄養学の基本

スポーツとビタミンの関係|筋肉痛も回復できる?【管理栄養士監修】

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理想的な体づくりにはビタミンも必要?

こんにちは。スポーツ栄養士の盛岡です。

「筋肉をつける」というとたんぱく質の摂取ばかりがフォーカスされがちですが、ビタミンの摂取はおろそかになっていませんか?

たんぱく質のように筋肉の材料になるわけではないものの、「vital=生命に不可欠な」という言葉が語源となっているように、ビタミンはアスリートや筋トレをする方の体づくりには必要不可欠な栄養素です。

そこで今回は、各種ビタミンの摂取が筋肉や競技パフォーマンスに与える効果についてご説明いたします。


ビタミンB群と筋肉の疲労回復

筋力アップと最も関係しているビタミンはビタミンB群です。ビタミンB群は糖質やたんぱく質の代謝などに関わっているため、筋肉をつくるために欠かせない栄養素です。

ビタミンB群にはそれぞれ以下のような働きがあります。

ビタミンB1:糖質の代謝

ビタミンB1の多い豚まん

ビタミンB1は主に糖質のエネルギー代謝に関わっている栄養素です。運動によりエネルギー消費量が多くなっている場合や、糖質の摂取量が多い場合にはビタミンB1の必要量も多くなります。

ビタミンB1は食事での摂取量が不足していると、食欲不振や疲労感の原因となることはよく知られており、栄養ドリンクなどにもよく配合されていますね。

糖質の代謝といいますと筋肉の合成と関係ないと思うかもしれませんが、トレーニング後の筋疲労の回復にはたんぱく質と糖質の同時摂取が最も効果が高いことが様々な研究から明らかになっています。したがって糖質の代謝に関わるビタミンB1も、筋肉をつけるためには大切です。

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またもしビタミンB1の摂取量が少なければ、疲労回復の遅れからたんぱく質をエネルギー源とするために筋肉が分解されてしまい、筋力低下につながる可能性もございます。

ビタミンB1は玄米や豚肉、ウナギ、タラコ、豆類などの食品に多く含まれていますので、食事から意識してとるようにしましょう。玄米は白米に比べれば食べにくいですが、食物繊維やミネラルも豊富なため、毎日のごはんに少しずつ混ぜてとるのがおすすめです。

ビタミンB2:主に脂質の代謝

ビタミンB2の多い牛乳

ビタミンB2は体の中では「FAD」や「FMN」という物質の構成成分となり、糖質・たんぱく質・脂質の代謝に関わっています。したがって、ビタミンB2の必要量は糖質・たんぱく質の代謝量や運動量によって変動します。

ビタミンB2は牛乳や卵、肉類などの身近な動物性食品に多く含まれており、ベジタリアンでなければ不足することはなかなかありません。

しかし脂質の代謝に関わっていますので、長時間の有酸素運動を行うスポーツ選手は積極的に牛乳などをとるようにしまよう。

ビタミンB6:タンパク質の代謝

ビタミンB6の多いサバ

ビタミンB6は体内のたんぱく質およびアミノ酸の代謝に関わっており、筋肉の合成には不可欠な栄養素です。筋肉痛の回復にはたんぱく質摂取が大切ですが、たんぱく質の摂取量が多いほどビタミンB6も多く必要になります。

また、ビタミンB6は神経伝達物質であるアドレナリンやドーパミンなどの「生理活性アミン」の代謝にも関わっていることから、摂取不足はアスリートの競技パフォーマンスに影響を与える可能性が考えられます。

ビタミンB6はカツオ・鮭・サバなどの魚介類や大豆製品に多く含まれているため、これらの食品をよく食べていれば大丈夫です。

ただ肉やプロテインを多く摂取している方は不足しやすくなりますので、毎日1品は魚や大豆のおかずを食事に取り入れたり、ビタミンB6も含むプロテインを選ぶようにしましょう。

ビタミンB1やビタミンB2は水溶性のため、たくさん摂りすぎても尿で排出されますが、ビタミンB6は過剰摂取した場合には筋肉の脆弱や末梢感覚神経障害、骨の疼痛(とうつう)などを起こすことが知られています。

このためビタミンB6については、「日本人の食事摂取基準」で成人はおよそ1日55mgまでを上限に定められています。

1日50mgというと普通な食事ではよほどのことがない限りオーバーしませんが、ビタミンサプリメント(特に海外製)にはかなり多く配合されている場合があります。栄養成分にかかれてある配合量を確認し、過剰摂取にならないよう注意しましょう。

その他のビタミンB群

その他のビタミンB群にはビタミンB12、パントテン酸、ビオチン、ナイアシン、葉酸があります。

これらの栄養素も糖質やたんぱく質の代謝に関わっており、筋肉をつくるためのアシスト役となる栄養素です。

ただビタミンB12、パントテン酸、ビオチン、ナイアシンについては動物性食品に広く含まれており、普通に食事をとっていればなかなか不足することはありません。

葉酸は緑黄色野菜に多い栄養素なのですが、体内でも貯蔵量も多く、また腸内細菌からも合成されるため通常は欠乏することはありません。偏食で極端に野菜を食べない場合には不足する可能性がありますので、子供には小さいころからしっかり食べる習慣をつけさせましょう。

ビタミンDと筋肉の合成

ビタミンDの多いキノコ

ビタミンDはカルシウムの吸収を助け、骨の形成や成長を促進することが知られていますが、筋肉の合成との関係もあるのではないかと近年注目されています。

ビタミンDの筋力アップ効果

健康で活動的な被験者に対し、1日あたり100μgのビタミンDを35日間摂取させたRCT(ランダム化比較試験)では、ビタミンD摂取はジャンプ運動後の炎症マーカーの増加を抑制することや、ジャンプ運動後の等尺性収縮での張力の低下が抑制されたことを報告しています(1)

また高齢者を対象にした研究では、ビタミンD欠乏症の高齢者では筋力低下や筋萎縮をきたすことが報告され(2)、血清ビタミンDレベルが高い高齢者は筋力が優れていたという報告もあります(3)

一方で、若年者と高齢者に1日あたり48μgのビタミンDを16週間摂取させ、12週間の筋トレを行わせた実験では、若年者・高齢者いずれも筋肉量の増加がみられたものの、ビタミンD摂取によって筋トレ効果がより高まったわけではなかったと報告しています(4)

これらの実験結果に違いが出るのは、被験者にもともとビタミンDが足りていたかどうかが影響している可能性があります。普段の食事で不足している場合は効果が現れやすく、反対に十分にとれている場合はサプリ等で追加して摂取しても効果はないのかもしれません。

ビタミンDの摂りすぎは高カルシウム血症や腎障害などの過剰症を引き起こす恐れがありますので、過度に期待してサプリメントでむやみに摂りすぎるのは控えましょう。

ビタミンDが筋肉をつくるメカニズム

筋肉の細胞にはビタミンDの受容体があることが分かっています。この受容体にビタミンDが結合することで、

  • 筋サイズを小さくするミオスタチン遺伝子の発現を低下させる
  • 筋肥大を引き起こすフォリスタチンなどの遺伝子を増やす

といった様々な遺伝子の発現調整を行っているという説が有力です。

ビタミンDはきのこ類や魚介類の食品に多く含まれており、また肌が紫外線を浴びることによっても体内で生成されます。

紫外線をあまり浴びないインドア種目のスポーツ選手では血中ビタミンD濃度が少ないことが報告されています(5)ので、その分食事でしっかりビタミンDをとるよう心がけましょう。

抗酸化ビタミン(A・C・E)と筋肉の関係

ビタミンCで筋肉痛が治る?

野菜や果物に多い抗酸化成分

「抗酸化作用」という言葉はテレビなどで聞いたことがある方も多いと思います。

ヒトは運動をするとき、主に酸素を活用した代謝系でエネルギーを生み出していますが、その一部の酸素は「活性酸素」というものに変換されます。

活性酸素が増えると体は酸化のストレスを受け、DNAやタンパク質、脂質に損傷を受けるとされ、メタボリックシンドロームとの関連が指摘されています。運動量の多いスポーツ選手(特に持久系スポーツ)は酸素消費量が多いため、酸化ストレスをその分受けやすいといえるでしょう。

この活性酸素を除去するはたらきを「抗酸化作用」といい、野菜や果物に多く含まれているビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールは抗酸化作用を持つ代表的な栄養素です。

ビタミンA・C・Eのスポーツに及ぼす効果

抗酸化ビタミンとスポーツの関係については様々な研究が行われていますが、競技力や筋肉痛の回復などへの直接的な関わりは薄いです。

近年の研究では、活性酸素は体の悪い影響だけでなく、細胞内外で情報伝達を行うはたらきがあり、生体内で大切な役割を果たしているとも考えられています(6)(7)。つまり、活性酸素がある程度あった方が、スタミナや筋持久力などの向上に役立つ可能性があるということです。

健康な成人男性に8週間の運動トレーニングの期間中、1日1,000mgのビタミンCを摂取させた介入実験では、プラセボ群とビタミンC摂取群で持久的な運動能力(最大酸素摂取量)に差はなかったとされています(8)

そのほかにも様々な研究で「短期・長期の抗酸化ビタミン摂取は運動時の筋肉に影響を与えない」と報告されることから、これらのビタミンは筋肉に対してプラスにもマイナスにも大きな影響はないのではないかと思います。

コンディショニングには必要

ビタミンCの多いみかん

持久力アップや筋力アップに効果はないかもしれませんが、とはいえ抗酸化ビタミンはスポーツ選手の健康やコンディショニングという面ではとても大切な栄養素です。

強い酸化ストレスにさらされると免疫力の低下につながるため、激しいトレーニングを行うスポーツ選手は普通の人よりも風邪をひきやすくなるといわれています。

関連記事:アスリートは普通の3倍風邪をひきやすい >

そのほかビタミンCは皮膚や関節の軟骨などにあるコラーゲンの生成に関わっていたり、鉄分と結合して吸収を促進して貧血を予防したりする効果があるため、やはり十分なビタミン摂取は重要です。

もっとパワーをつけたいと思うとどうしてもたんぱく質摂取ばかりに気をつけてしまいますが、体調を崩してしまっては十分なトレーニングもできません。常に万全の体調でいるということも、大切な体づくりの一環です。

抗酸化ビタミンはそれぞれ以下の食品に多く含まれているため、バランスのよい食事を心がけましょう。

◯ビタミンA(β-カロテン):緑黄色野菜、うなぎ、レバー など

◯ビタミンC:ブロッコリー、ピーマン、じゃがいも、オレンジ、キウイ など

◯ビタミンE:植物油全般、かぼちゃ、ナッツ類 など

サプリメント利用時の注意点

ビタミンサプリメント

ビタミンサプリは食事で不足する分を手軽に補うことができて便利です。ただ一方で、食べ物には含まれないほど多く配合されている場合もあり、過剰摂取には注意が必要です。

マルチビタミンを含む加工食品

身近な加工食品を見てみると、サプリメントに限らず結構色々な商品にマルチビタミンは含まれています。

プロテインにはビタミンが含まれているものも多く、そのほかエネルギーゼリーやビスケット、フルーツジュースなどにも添加されていることがあります。

1つの商品だけなら適正な量の範囲内であっても、複数の商品をとることによって摂りすぎになる可能性はあります。1日だけ過剰にとっても健康に影響が及ぶ危険性は少ないですが、プロテインなど習慣的に取り入れているものがある場合はビタミンの配合量も一度確認してみるとよいでしょう。

摂取量の目安

あるトレーナーさんが生徒に勧めていたマルチビタミンの成分を見てみると、ビタミンAが上限量を超えた配合量で驚いたのを覚えています。

特に海外製のビタミンサプリは配合量が非常に多いことがありますので、摂りすぎると過剰症のリスクがある栄養素については上限量を超えていないか確認しましょう。

参考までに各ビタミンの1日あたりの必要量と上限量を以下に記載いたします。

栄養素 必要量 上限量
ビタミンA 850μg 2,700μg
ビタミンB1 1.4mg
ビタミンB2 1.6mg
ビタミンB6 1.4mg 55mg
ビタミンB12 2.4μg
葉酸 240μg 900μg
ナイアシン 15mg 300mg
ビオチン 50μg
パントテン酸 5mg
ビタミンC 100mg
ビタミンD 5.5μg 100μg
ビタミンE 6.5mg 800mg
ビタミンK 150μg

※各摂取量は「日本人の食事摂取基準(2015年版)」における、18~29歳男性の量を参照。
※「必要量」は推奨量または目安量、「上限量」は耐容上限量を参照。
※ビタミンAはβ-カロテン由来のものである場合、過剰症はありません。

まとめ

  • ビタミンB群は糖質・たんぱく質・脂質の代謝に関わっており、糖質やたんぱく質の摂取量が多いほどビタミンBの必要量も多くなる
  • ビタミンDは骨の形成に関わる栄養素で、筋肉の合成への関係性もあるかもしれない
  • ビタミンCやビタミンAは筋肉の合成に直接関与しないが、万全な体調管理に努めることが、結果的に体づくりに貢献する
  • エネルギーや筋肉のもとになる糖質・たんぱく質・ビタミンB群だけでなく、体調管理に必要なビタミンA・C・D・Eといった「守り」の栄養素もきちんととろう

参考文献

林淳三:「改訂 基礎栄養学」.建帛社,2010.
田口素子・樋口満 編:「体育・スポーツ指導者と学生のためのスポーツ栄養学」.市村出版,2014.
東田 一彦:「ビタミンと運動に関する最近の知見」.日本スポーツ栄養学会誌, 11, 10-14 (2018)
厚生労働省:日本人の食事摂取基準(2015年版)

(独)国立健康・栄養研究所 http://www0.nih.go.jp/eiken/
1) Baker T, Scheneider ED, Dixon BM, et al.: Supplemental vitamin D enhances the recovery in peak isometric force shortly after intense exercise. Nutr Metab (Lond), 10, 69 (2013)

2) Kenny AM et al.: Effects of vitamin D supplementation on strength, physical function, and health perception in older, community-dwelling men. J Am Geriatr Soc, 51: 1762-1767, 2003.
3) Cannnell JJ et al.: Athletic performance and vitamin D. Med Sci Sports Exerc, 41: 1102-1110, 2009.
4) Agergaard J, Trostrup J, Uth J, et al.: Does vitamin-D intake during resistance training improve the skeletal muscle hypertrophic and strength response in young and elderly men? – a randomized controlled trial, Nutr Metab (Lond), 12, 32 (2015)

5) Willis KS et al.: Should we be concerned about the vitamin D status of athletes? Int J Sport Nutr Exerc Metab, 18: 204-224,2008.
6) Thannickal, V.J., Fanburg, B.L.: Reactive oxygen species in cell signaling. Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol, 279, L1005-L1028 (2000)
7) Allen, R.G., Tresini, M.: Oxidative stress and generegulation. Free Radic Biol Med, 28, 463-499 (2000)
8) Gomez-Cabrera, M.C., Domenech, E., Romagnoli, M., et al: Oral administration of vitamin C decreases muscle mitochondrial biogenesis and hampers training-induced adaptations in encurance performance. Am J Clin Nrtr, 87, 142-149 (2008)



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