子供のタンパク質が足りているかどうか、心配になったことはありませんか?
不足すると何か影響が出てしまうのか、気になる方もいるでしょう。
今回は子供のタンパク質について、なぜ必要なのかという話から、不足による影響、原因、取り入れ方のポイントについて、詳しく解説します。
目次
子供にタンパク質が必要な理由
子供にタンパク質が必要な理由は、大きく2つあります。
- 体を作る材料となる
- 成長ホルモンの材料となる
まずタンパク質は、骨・筋肉・皮膚・内臓・髪の毛など、私たちの体を構成する主成分となっています。
成長期の体づくりには、材料であるタンパク質が欠かせません。
また成長ホルモンの材料となり、身長が伸びる際にも大切な役割があります。
成長ホルモンが骨の先端にある軟骨に働きかけることで、骨を伸ばす、すなわち身長を伸ばしてくれるのです。
タンパク質だけではなく、ほかにもカルシウムや亜鉛などのさまざまな栄養素が必要ではありますが、成長になくてはならない栄養素です。
タンパク質が不足するとどんな症状・影響がある?
タンパク質不足が続くと、成長期の子供にさまざまな影響が出ることがあります。
影響の例をいくつか見てみましょう。
成長障害・身長の伸び悩み
タンパク質が不足することで、成長障害につながる恐れがあります。
理由は先ほど伝えた通り、体の材料不足や成長ホルモンへの影響が考えられます。
実際に、病気の影響のない低身長の子供の栄養状態や食事内容を調べた研究報告があるため、みてみましょう(※1)。
この研究では、低身長の子供には以下の傾向があることがわかりました。
- 米類、芋類、野菜類、肉類、乳類の摂取量が平均的な食事に比べると少ない
- タンパク質、炭水化物、ビタミンB1、亜鉛、鉄などの不足がみられる
- 血液検査による栄養状態の指標が低い
タンパク質はもちろん、ほかのさまざまな栄養素も不足してしまうことで、子供の成長に影響を与える可能性があることがわかります。
またこの研究では、その後半年間の食事指導も行われています。
半年後、食生活が改善したグループでは、改善しなかったグループに比べて、身長の伸びに改善がみられたこともわかりました。
子供の健やかな成長のためには、やはり食事が大切であることがわかる結果ですね。
免疫機能
タンパク質不足では免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなるといった影響が起こることもあります。
これはタンパク質の不足により、免疫細胞の数や機能が低下することに理由があります。
免疫細胞の数が少ない、またはうまく働かない状態では、ウイルスや細菌などの病原体が侵入してきたときに、戦う力が足りなくなってしまいます。
感染症にかかりやすい、また症状が長引きやすくなると、体力の低下にもつながってしまうでしょう。
体力の低下
タンパク質不足は体力の低下にも関わります。
体を作る材料が不足していたり、エネルギー源が不足したりすることで「運動してもなかなか体力がつかない」といった悩みにつながることもあります。
また体力がなく疲れやすい状態となっていれば、体力をつけるための運動も十分に行えなくなる悪循環となるでしょう。
タンパク質が不足する原因は?
タンパク質はさまざまな原因で不足します。
子供によくみられる原因を見てみましょう。
朝ごはんの欠食
子供は1回の食事でたくさん食べられないこともあり、朝ごはんを食べていない場合は1日に必要なタンパク質が不足しやすくなります。
また「パンだけ」「おにぎりだけ」などの主食だけの朝ごはんも、タンパク源がないため不足に注意が必要です。
過度なダイエット
食事制限による過度なダイエットは、食事が偏りタンパク質不足を招いてしまいます。
もし体重が気になる場合は、食事ではなく間食や飲み物の内容を見直してカロリーを抑え、運動量を増やしてカロリー消費することが大切です。
成長期に必要な栄養を摂るためにも、むやみに食事の制限をしないようにしましょう。
激しい運動、スポーツ
激しい運動やスポーツを行っている場合、必要とされるエネルギー量に比例してタンパク質の必要量も増えます。
たとえばエネルギーの消費量が普通の子供の1.5倍である場合、単純計算すると、タンパク質の量も同じくらい増やす必要があります。
たくさん食べられる場合は心配が少ないのですが、運動前後にあまり食べられない場合や、少食や偏食のある場合は注意が必要です。
偏食
好き嫌いが激しく、特定のものばかり食べるなどの偏食がある場合も不足する原因となります。
特にご飯やパンなどの主食を好んで食べ、肉や魚、卵、大豆製品、乳製品などをほとんど食べない場合は、不足が心配な状況です。
また食事量が少なく菓子類が多くなっている場合、タンパク質だけでなくほかの栄養素も足りていないかもしれません。
タンパク質は1日にどのくらい必要?
タンパク質は不足しないよう取り入れる必要があることがわかりましたが、具体的に成長期の子供は、1日にどのくらいタンパク質を摂るとよいのでしょうか。
食事摂取基準を見てみましょう。
【たんぱく質の食事摂取基準(g/日)】
年齢 |
推奨量 | |
男子 | 女子 | |
1~2歳 | 20g | 20g |
3~5歳 | 25g | 25g |
6~7歳 | 30g | 30g |
8~9歳 | 40g | 40g |
10~11歳 | 45g | 50g |
12~14歳 | 60g | 55g |
15~17歳 | 65g | 55g |
必要なタンパク質は体格や活動量によって異なるのですが、上記はどんな場合でも満たすべき推奨量を示しています。
この量を毎日摂れているかどうか、子供の平均的なタンパク質摂取量を見てみましょう。
年齢 |
男子 | 女子 |
1~6歳 | 47.2g | 42.5g |
7~14歳 | 74.3g | 68.1g |
15~19歳 | 88.7g | 71.8g |
年齢の区分が異なるため判断しづらい部分がありますが、推奨量と照らし合わせると、大きく不足する心配が少ないことがわかります。
一般的な食生活を送っていればそこまで心配しなくて大丈夫といえますが、やはり先ほど説明した「タンパク質不足の原因」にあてはまる場合は注意が必要です。
またスポーツをしている子供の場合は、より多くのタンパク質が必要になります。詳しくは「小中学生のジュニアアスリートに必要なタンパク質量は?」の記事で解説しています。
続けて紹介するポイントをご確認ください。
タンパク質を不足しないように摂るポイント
「一般的な食生活では不足は心配不要」とはいえ、どのような食生活を送ればよいか、わかりづらい部分もあるかもしれません。
タンパク質が不足しないために心がけたいポイントと、不足が心配な場合の対策についてもお伝えします。
毎食タンパク源を摂る
主菜はタンパク質の補給源となるため、必ず毎食取り入れるようにしましょう。
ご飯やパン、麺だけなどでは炭水化物に偏ってしまうため、肉や魚、卵、大豆製品などと組み合わせることが大切です。
主菜をどのくらいとるとよいかは、食事バランスガイドが参考になります。
「主菜1つ分=タンパク質6g」と単位が決められており、1日にとりたい単位の量が示されています。
【男子】
年齢 | 1日に必要な主菜の量 |
3~5歳 | 3つ |
6~9歳 | 3~4つ |
10~11歳 | 3~5つ |
12~17歳 (活動量「低い」) |
3~5つ |
12~17歳 (活動量「ふつう」以上) |
4~6つ |
【女子】
年齢 | 1日に必要な主菜の量 |
3~5歳 | 3つ |
6~11歳 | 3~4つ |
12~17歳 (活動量「低い」) |
3~4つ |
12~17歳 (活動量「ふつう」以上) |
3~5つ |
主菜1つ分となる食品の量は以下が目安です。
具体的に、1日3~4つ分の主菜が必要な場合のメニューの例は以下のようになります。
なるべくタンパク源が偏らないよう、まんべんなくいろいろな食べ物を取り入れることを意識してみてくださいね。
少食の場合は補食を取り入れる
少食の場合は補食を取り入れて、必要な栄養量を確保しましょう。
少食でタンパク質不足が心配なため、主食を減らしておかずをたくさんにする方もいるかもしれませんが、それではエネルギー量が不足することがあります。
エネルギー不足も成長に影響してしまうため、食事のボリュームを減らす場合は全体的な量を減らすようにし、その分補食で補うことが大切です。
フルーツヨーグルト、卵サンド、鮭おにぎりなど、炭水化物+タンパク質を組み合わせたものを選んでみてくださいね。
偏食の場合は食べられるものから補給する
偏食がある場合でも、食べられるタンパク源を毎食取り入れることを意識してみましょう。
「肉はダメだけど魚はOK」など、お子さんによって食べられるものがあるかと思います。
子供が好きなものをローテーションで取り入れてみてください。
また同時に、少しずつでも食べられるものが増えていくような対策も行ってみましょう。
すでに実践していることもあるかもしれませんが「子供の偏食の原因は?食べられるきっかけを作る対策5つ」の記事で紹介しているため、参考にしてみてくださいね。
運動量が多い場合は補食と高タンパクの食品を取り入れる
運動量が多い場合は補食を活用し、また少量でもタンパク質を摂りやすい食品を活用しましょう。
補食は、先ほども紹介したような、エネルギーとタンパク質を同時に摂れるものがおすすめです。特に運動後はリカバリーで栄養補給が必要になるため、タイミングも意識してみましょう。
またタンパク質を効率よく摂るための食品の選び方は、以下を参考にしてみてください。
- 豆腐:絹ごしより「木綿」
- 鶏肉:もも肉より「むね肉」「ささみ」
- 豚肉、牛肉:バラ肉や脂身のある肉より「赤身肉」「ヒレ肉」
子供のタンパク質不足に注意しよう
一般的な食生活では不足の心配が少ないものの、不足してしまうと成長期の子供にさまざまな影響を与えることがあります。
元気で毎日を過ごし、健康な体を作るためにも、今回紹介した取り入れ方を参考にし、しっかりとタンパク質を補給しましょう。
参考文献
※1:西本裕紀子 第34回小児保健セミナー これからの子育て支援を考える「食で育む子育て―食育の理論と実践―」小児保健研究 第78巻 第2号,2019(87~92)
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査の結果」
農林水産省 厚生労働省「食事バランスガイド」
東京都「幼児向け食事バランスガイド」