こんにちは。スポーツ栄養士の盛岡です。
減量期は食事面でどうしてもある程度の我慢が必要ですが、少しでもラクに痩せる方法はないかなと思うと、いいサプリメントがないか探してみたくなったりもします。
今は「ダイエットサプリ」や「ダイエット食品」などで検索してみると、本当に色んな商品が出てきますね。科学的根拠の全くないものもありますし、根拠は一応あっても誇張しすぎだったり…。
プラシーボであっても痩せられればそれでいいという考え方もできますが、お金をかけるからにはちゃんと効果のあるものを利用したいものです。
そこで今回はアスリートや筋トレをしている方のための、減量に役立つサプリメント活用法やおすすめサプリについてご説明いたします。
目次
減量のためのサプリメント活用法
サプリメントでどれだけ痩せられるのか
サプリを利用する前に、そもそもサプリでどれだけ痩せられるのでしょうか。
いきなり身も蓋もない話なのですが、サプリメントだけで大きな減量効果を期待すべきではありません。
脂肪の吸収を抑えたり体脂肪を燃やす効果が認められているサプリは確かにありますが、摂取するだけで得られる減量効果というのはどれもそれほど大きくはありません。
例えば下のグラフをご覧下さい。
これは日本カテキン学会に掲載されている、高濃度茶カテキン摂取による体脂肪の燃焼効果を表しています。トクホになっているダイエット茶やダイエットサプリでは、左下のグラフような「腹部全脂肪面積の変化」の形でよく根拠として示されています。
このグラフのように「全脂肪面積24.5cm2減」と書かれてあるとすごく痩せたように見えますよね。ただこれは単位が「cm2」となっているように、減っているのはウエストや体重ではなく体脂肪の「表面積」ですので注意が必要です。
では実際にはどれだけ痩せたのかといいますと、左上の体重変化量で見てみると12週間でー1.3kgとなっています。
この効果を大きいと捉えるかは人それぞれですが、科学的根拠がある成分であっても、いわゆるダイエットサプリで期待できる効果はこの程度だと考えてください。
サントリーの「黒烏龍茶」ですと「16週間で全脂肪面積が11.32cm2減」とありますから、体重の減少量でいえば実際のところ1kg未満かもしれません。
科学的に有意差があるから特定保健用食品(トクホ)として認められてはいるわけですが、4ヶ月も毎日飲み続けて1kg未満の体重減少となりますと、体感があるほどの効果はなかなか得られないといえます。
サプリメントは栄養補助が第一
1ヶ月で1kg以上の減量をしようと思ったら、やはり運動でカロリー消費を増やすことと、食事の摂取カロリーを適度に制限することが基本になります。
ダイエットサプリを検討する際は、食事制限のプラスアルファで利用して「痩せられたらいいな」くらいに考えておきましょう。期待はほどほどにして予防的な目的で利用するのも1つです。いずれにしても過度の期待は禁物ですし、そもそも飲むだけで体重が劇的に落ちたら逆に怖いですよね…。
それよりも食事制限の際に不足しがちな栄養素を補助するためにサプリメントを利用する方が、体づくりの観点では大切です。
特に、「アスリートが筋肉を落とさず2kg減量する食事方法」でもご説明していますように、筋肉を落とさないためには摂取カロリーを減らしつつもたんぱく質はしっかりとる必要があります。
直接脂肪の燃焼に関わるわけではありませんが、たんぱく質を補助するためにプロテインやアミノ酸サプリを適度に利用するのは減量に有効といえます。
減量期の栄養補助におすすめのサプリメント
おすすめ度:★★★★★
減量期の栄養補助には次の成分のサプリを検討するとよいでしょう。
- プロテイン・アミノ酸
- マルチビタミン
- マルチミネラル
- 食物繊維・難消化性デキストリン
たんぱく質を補えるプロテインは製品によってカロリーに幅がありますので、パッケージにある栄養成分をよく確認して下さい。筋肉の合成・分解が促進されている運動後に、できるだけ早く摂取することが大切です。
減量期におけるプロテインの飲み方については「プロテインの減量期の飲み方」もご参照ください。
また減量期であっても野菜の摂取は減らすべきではありませんが、もし食事メニューが偏ってしまう場合にはマルチビタミン・ミネラルがをとるようにして下さい。牛乳・乳製品をとらない方はカルシウムサプリもおすすめです。
食物繊維や難消化性デキストリンは、食事量を減らした際の便秘予防に役立ちます。食事の前に摂取すればごはんやおかずに含まれる糖分・脂肪分の吸収が緩やかになりますので、ダイエット効果も少し期待できますね。
難消化性デキストリンはトクホとしてお茶やカプセルなど、様々な形状のものが販売されていますので続けやすいものを選ぶとよいでしょう。
減量効果が認められている成分
おすすめ度:★★★★
以下の成分はダイエット効果があることから、特定保健用食品として認められている商品があります。
- カテキン
- ケルセチン配糖体
- ウーロン茶重合ポリフェノール
- サラシア
カテキンは花王の「ヘルシア緑茶」、ケルセチン配糖体はサントリーの「特茶」が市販品として有名ですね。それぞれ体脂肪の分解を促進する効果が認められています。
ヘルシア緑茶は少々値段が高いので、これと同じ500mg程度のカテキンが摂取できるものであれば、トクホでなくとも他のサプリを試してみてもよいでしょう。粒タイプなら飲料よりも安く利用できます。
なお、カテキンには鉄分の吸収を阻害する効果もあり注意が必要です。貧血ぎみの方は食事中に飲むのは避けるようにして下さい。
ウーロン茶重合ポリフェノールはその名の通り烏龍茶に含まれています。先ほどあまり効果がないとはいいましたが、太るわけではありませんので食事中に飲むいつものお茶を、濃いめの烏龍茶に替えてみるのは気休め程度によいかと思います。
サラシアは富士フィルムの「メタバリア」が有名で、食事の糖分の吸収を抑える効果があります。ただこの成分は少し下痢を起こしやすいのがネックです。私も飲んだことがありますが、飲んで3時間くらいしたらお腹がゴロゴロしてしまいました。摂りすぎにはくれぐれもご注意下さい。
DHA・EPAでは痩せない?
魚の油に含まれている脂肪酸のDHA・EPAは、中性脂肪やコレステロールの値を低下させ、動脈硬化の予防に役立つことで知られています。サプリメントでもとても多くの商品が流通されている成分です。
ただ注意してほしいのは、「中性脂肪を下げる」というのは「体脂肪を減らす」こととは意味合いが異なるということです。中性脂肪は「血中中性脂肪」のことなので、血液のドロドロが改善することはできますが、「体脂肪」が減るわけではありません。
DHA・EPA摂取による体重減少については十分なデータがありませんので、減量効果については期待せず健康のための栄養補助として利用するようにしましょう。
減量効果が報告されている成分
おすすめ度:★★★
以下の成分はダイエット効果があることが報告されており、「機能性表示食品」として効能の表示を認められている商品があります。
- 葛の花由来イソフラボン
- 甘草由来グラブリジン
- ブラックジンジャー
機能性表示食品の制度が始まってから、「葛の花由来イソフラボン」を有効成分としたダイエットサプリはとても多く販売されるようになりました。
葛の花由来イソフラボンは脂肪の合成を抑制する効果や燃焼を促進する効果が報告されていることから、「体重やお腹の脂肪を減らす」「内臓脂肪を減らす」など効能の表示が認められています。
甘草由来グラブリジンとは、甘草という植物の根茎から抽出された成分で、ポリフェノールを多く含みます。こちらは「体脂肪の増加を抑える」効能の表示が認められており、市販品ではアサヒの「ディアナチュラ」シリーズのものが有名です。
ブラックジンジャーとはその名の通り「黒しょうが」のことです。普通のしょうがと同様に体のめぐりを良くしてくれます。
そもそも機能性表示食品とは何なのかというと、有効性・安全性が報告されている成分が含まれていることをもとに、事業者の責任で効果効能を表示することを消費者庁に届出た食品のことです。
全く根拠がなければ届出ても受理されませんし、効能の表示内容については厳しくチェックを受けていますので、ある程度の有効性と安全性は担保されているといえます。
ただトクホのように商品単位でヒトでの臨床試験を行っているわけではありません。成分の有効性についてもそれぞれ効果がなかったという報告もありますし(1)(2)、国の研究期間である国立健康・栄養研究所は「十分な科学的データは見当たらない」としています。
特に葛の花イソフラボンを含んだサプリメントは最近では多くみられるようになりましたが、根拠となるデータも「BMI25~30の軽度肥満者が運動や食事制限を行って12週間継続した場合で、ウエストが1cm程度、体重が1㎏程度減る」という程度のものです。
食品として摂取する分にはおそらく安全であるとされていますので試してみるのはいいかと思いますが、有効性のレベルはまだまだ研究段階といえます。
まとめ
以上が減量期の栄養補助および体脂肪減少におすすめのサプリメントになります。
- サプリメントには減量効果が認められている成分もあるが、あまり大きな効果は期待しない方がよい
- サプリメントは食事制限によって不足しがちな栄養素の補助で利用するのが第一
- プロテインやアミノ酸は減量時でも筋肉を落とさないために、たんぱく質の補助として適宜利用するとよい
- カテキンやサラシアは減量効果が認められているが、カテキンには鉄分の吸収阻害、サラシアは下痢を起こしやすいことに注意する
- DHAやEPAは血中中性脂肪や血中コレステロールの低下には役立つが、体脂肪の減少効果は期待できない
- 葛の花由来イソフラボンや甘草グラブリジンは、体脂肪を減らす効果があることが報告されている
参考文献
各メーカーのホームページ
1) 薬理と治療. 2013; 41(2): 167-82.
2) https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21310080?dopt=Abstract
(独)国立健康・栄養研究所 http://www0.nih.go.jp/eiken/
日本カテキン学会:http://www.catechin-society.com/effect_05.html