子供・幼児が鉄分をとりすぎた場合、健康や成長への影響が起こることがあります。
具体的な影響や、とりすぎにあたる量、またとりすぎてしまったときはどうしたらよいかを知り、適切に対処しましょう。
また鉄分の目安の量や、とりすぎを防ぐポイントも管理栄養士が紹介します。
ぜひ適切な栄養補給を行い、子供の健やかな成長を支えましょう。
目次
子供が鉄分をとりすぎるとどうなる?過剰摂取の症状
子供が鉄分をとりすぎた場合の影響として「体重増加量の低下」「胃の不快感・吐き気・おう吐・腹痛・便秘などの消化器症状」が可能性として考えられています。
体重の影響については、12〜18 ヶ月の子供に、体重1kgあたり3mg(体重10kgの場合は30mg)の鉄分を4ヶ月間投与した場合に、体重増加量が低下したという報告によるものです。(※1)
また消化器症状については、過剰な鉄分により消化管を刺激することで起きると考えられています。
しかしこれらの影響は、鉄剤・サプリメント・健康食品などから過剰摂取した場合に考えられるものであり、一般的な食生活であれば鉄分の過剰摂取の心配はほとんどありません。
サプリメントや健康食品を子供に与える際は、次に紹介する鉄分の量や注意点を守るようにしましょう。
どのくらいで鉄分の過剰摂取に?子供の目安量
子供の鉄分の上限量は、年齢によって異なりますが1日あたり20~50mgであるため、これ以上の摂取はとりすぎであるといえます。
子供の鉄分の推奨量と、上限量(耐容上限量)を下記の表にまとめています。
▼男児の鉄分の食事摂取基準(1日あたり)
年齢 | 推奨量 | 耐容上限量 |
6~11ヶ月 | 5.0mg | ― |
1~2歳 | 4.5 mg | 25 mg |
3~5歳 | 5.5 mg | 25 mg |
6~7歳 | 5.5 mg | 30 mg |
8~9歳 | 7.0 mg | 35 mg |
10~11歳 | 8.5 mg | 35 mg |
12~14歳 | 10.0 mg | 40 mg |
15~17歳 | 10.0 mg | 50 mg |
▼女児の鉄分の食事摂取基準(1日あたり)
年齢 | 推奨量 | 耐容上限量 | |
月経なし | 月経あり | ||
6~11ヶ月 | 4.5 mg | ― | ― |
1~2歳 | 4.5 mg | ― | 20 mg |
3~5歳 | 5.5 mg | ― | 25 mg |
6~7歳 | 5.5 mg | ― | 30 mg |
8~9歳 | 7.5 mg | ― | 35 mg |
10~11歳 | 8.5 mg | 12.0 mg | 35 mg |
12~14歳 | 8.5 mg | 12.0 mg | 40 mg |
15~17歳 | 7.0 mg | 10.5 mg | 40 mg |
鉄分の上限量が定められているのは、急性鉄中毒による影響を避けるためです。
急性鉄中毒は、鉄剤やサプリメントの誤飲により起こることがあり、吐き気、下痢、昏睡などの重大な症状を引き起こすことが知られており、早期的な治療が必要となります。
基本的には、推奨量を目安に鉄分を摂るようにしましょう。
なお、1歳未満の乳児については、鉄分の上限量は定められていません。
これは、鉄分の過剰摂取が起こる摂取量について、一定の結果が得られていないためです。
たくさん摂っても大丈夫というわけではないため、1日あたりの推奨量を目安として、とりすぎないように注意しましょう。
子供が鉄分をとりすぎてしまったときの対処法
鉄剤やサプリメントの誤飲による鉄分の過剰摂取は、重大な症状を引き起こす恐れがあるため、早急な医療機関の受診が必要です。
サプリメントや健康食品のとりすぎによる場合は、すぐに使用を止めるようにするか、鉄分の摂取量が適正な範囲になるように、使用量を見直します。
体重がなかなか増えない、消化器症状の有無などの影響がないかどうか確認し、気になる症状がある場合は、医療機関の受診を検討しましょう。
鉄分をとりすぎないために気をつけたいこと
複数のサプリメントや健康食品を与えてしまうと、すべての上限量の把握が難しくなることも考えられます。
そのため、健康食品やサプリメントを使用する場合は、複数使用せずに把握できる数を使うようにするとよいでしょう。
また、最近では、手軽に鉄分を摂れるグミ・ジュースなどの食べ物・飲み物も増えています。
おいしいからといってたくさん食べないように注意が必要であるため、食べる・飲む分だけ子供に与えるようにしましょう。
子供の鉄分不足の対策は食事の工夫も大切
鉄分不足が心配な場合でも、食事でできるところはないか探してみましょう。
「カルシウムと鉄分の多い食品一覧|おすすめメニューも紹介」や「子供に鉄分をとらせるにはどんなおやつ・果物がおすすめ?」の記事で鉄分を手軽に摂れる方法を紹介しているため、ぜひご参照ください。
子供の鉄分のとりすぎに注意しよう
子供の鉄分のとりすぎにより、健康や成長への思わぬ影響を及ぼすこともあります。
鉄分不足が心配な場合は、まずは食事で鉄分対策ができるところがないか探し、サプリメントや健康食品を使用する場合は、成分や含有量をしっかりとチェックし、鉄分のとりすぎにならないよう気をつけましょう。
【参考文献】
(※1)厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」