こんにちは!管理栄養士の盛岡です。
前回書いた「筋肉の疲労回復効果に3倍の差がでる運動後の食事」の記事では、運動直後には糖質とたんぱく質の同時摂取が超回復には重要であるとお伝えいたしました。
アスリートやトレーニングで体を鍛えている方にとって、疲労が残ることは、翌日以降のトレーニングにも支障をきたしてしまいますのでとても重要な問題です。
そこで今回は運動後の疲労回復に大事な栄養素や、おすすめレシピについてさらに掘り下げて解説します。
目次
疲労回復のために必要な栄養素
疲労回復の3大栄養素
筋肉の疲労を回復させるために最も大切な栄養素は次の3つです。
- たんぱく質…筋肉の材料になる
- 炭水化物(糖質)…筋肉のグリコーゲンを回復させる
- ビタミンB群…糖質やたんぱく質の代謝に関わる
これらの栄養素を運動後できるだけ早く摂取することが、筋肉の分解を止め、合成を促進させるために必要になります。
ビタミンB群の中でも特にビタミンB1は、糖質の代謝に関わっている栄養素で疲労回復に大きな役割を担っています。アリナミンなどの医薬品にもよく含まれており、まさに「疲労回復ビタミン」といえます。
ビタミンB1はエネルギー摂取量1,000kcalあたり0.4mgは必要といわれており、糖質を多く補給しなければならないマラソンなど持久性競技選手の場合は、さらにビタミンB1摂取が必要と考えられます。
意識してビタミンB1の多い食べ物を選びつつ、水溶性ビタミンなので茹でたり煮たりすると流れ出てしまうことにも注意しましょう。
クエン酸はおそらく効果がない
疲労回復といえばクエン酸を思い浮かべる方も多いと思いますが、実はクエン酸の疲労回復効果は十分なデータがなく、効果がないとされています。
かつては疲労物質であるとされた乳酸を、クエン酸が除去する働きが注目されていました。しかしこの乳酸は疲労物質ではなく、体の中でエネルギー源として利用される物質であることが分かり、クエン酸の働きも見直されています。
詳細記事:クエン酸に疲労回復効果はない? ›
レモンやオレンジなど、クエン酸の入っている食べ物やスポーツドリンクをわざわざ避ける必要はありません。ただ、クエン酸の疲労回復に過剰な期待をして、サプリメントを多用するのは禁物です。
お酒の飲み過ぎは疲労回復を遅らせる
お酒に含まれるアルコールは肝臓で優先的に解毒・代謝が行われるため、糖質やたんぱく質の代謝が後回しになってしまいます。
また、アルコールを過剰摂取すると代謝にビタミンB1も消費されることが分かっており、これも疲労回復を遅らせる要因となります。
詳細記事:アスリートはお酒を飲まない方がいい? ›
スポーツジムでは減量のために夕食のごはんを抜いている方も多いですが、できれば糖質よりも先にアルコールを制限した方が、健康にも筋力アップにもよいでしょう。
筋肉の疲労回復によい食べ物
肉類は豚肉が疲労回復によい
たんぱく質とビタミンB1は肉類やたまご、大豆、魚に広く含まれていますが、中でもおすすめなのが豚肉です。
豚肉にはビタミンB1の含有量が他の肉類と比べても圧倒的に多く、脂身の少ないもも肉を使えば、料理1品でほぼ1日分に必要な量のビタミンB1を摂取できます。
食材 | ビタミンB1量 (100g中) |
豚もも肉 | 1.01mg |
牛もも肉 | 0.10mg |
鶏もも肉 | 0.07mg |
卵 | 0.06mg |
また料理の際には、にんにくやネギ・ニラと組み合わせるのがおすすめです。
にんにくやネギには「アリシン」という成分が含まれており、これがビタミンB1(チアミン)と結合して「アリチアミン」という物質にかわり、腸管でより効率的に吸収されるようになるためです。
糖質源には玄米や発芽米がおすすめ
炭水化物(糖質)はごはんやパン、麺類、果物などに多く含まれています。
主食としてごはんを食べる場合には、白米だけではなく玄米や発芽米・雑穀米などの精製されていないお米も混ぜるとよいでしょう。
お米は玄米から精製して白米にする過程で、ぬかや胚芽という部分を取り除くのですが、実はこの部分が栄養素の宝庫で、ビタミンB1や食物繊維は白米よりも玄米の方に多く含まれております。
食材 | ビタミンB1量 (100g中) |
食物繊維量 (100g中) |
玄米 | 0.16mg | 1.4g |
精白米 | 0.02mg | 0.3g |
ごはんは毎日食べるものですので、積み重ねると摂取量に大きな違いが出てきますね。
魚介類ではウナギ・タラコに多い
魚介類には全般的にビタミンB1は含まれていますが、特にウナギ・タラコに多く含まれています。よく「スタミナをつけるにはウナギ」というのは、たんぱく質やビタミンが豊富で実感することが多いからなのでしょう。
食材 | ビタミンB1量 (100g中) |
うなぎ | 0.75mg |
たらこ | 0.71mg |
べにざけ | 0.25mg |
さば | 0.21mg |
おすすめの疲労回復レシピ&献立!
豚ひき肉のにんにく炒め
材料 | 4人分 |
豚ひき肉 | 300g |
もやし | 1袋 |
小松菜 | 1/2束 |
みそ | 大さじ1 |
しょうゆ | 大さじ1 |
酒 | 大さじ1 |
砂糖 | 小さじ1 |
豆板醤 | 小さじ1 |
しょうが | 1かけ |
にんにく | 1かけ |
ねぎ | 1/2本 |
ごま油 | 小さじ1 |
塩コショウ | 少々 |
豚肉とにんにくを組み合わせたビタミンB1たっぷりの炒め物。しょうがや豆板醤など香辛料の風味がきいていて、食欲のでる料理です。
<作り方>
1)もやしはひげ根をとり、たっぷりの水に放す。
2)しょうが、にんにくはみじん切りにし、長ねぎは1cm幅に切る。
3)フライパンにごま油を熱してひき肉を炒め、パラパラにほぐれたら、みそ、しょうゆ、酒、砂糖の順に加え、透明な油が出るまで炒りつける。
4)(3)に豆板醤を加えてよく炒め合わせ、次にしょうが、にんにく、小松菜、長ねぎも炒め合わせる。香りが立ってきたら、水気をきったもやしを加え、強火で手早く炒める。
タラコおにぎり
材料 | 1人分 |
ごはん | 茶碗1杯強 |
たらこ | 1個(1/2腹) |
大葉 | 2枚 |
塩 | 適量 |
のり | お好み |
タラコを使ったおにぎりで、大葉を混ぜているのであっさりした風味です。トレーニング後の疲労回復だけでなく、試合やマラソンの始まる1~2時間前に腹ごしらえで食べるのもよいでしょう。
<作り方>
1)タラコを焼いて細かくほぐしておく。
2)細かくきざんだ大葉と焼いたタラコ、ごはんを混ぜ合わせる。お好みで塩をふる。
3)のりを巻いて出来上がり。
豚みそおにぎり
材料(作りやすい量) | |
豚ひき肉 | 100g |
長ねぎ | 1本 |
味噌、酒 | 各大さじ1 |
みりん、醤油 | 各小さじ1 |
砂糖 | 小さじ2 |
タンパク質豊富な事に加え、お肉の中でもビタミンB1がダントツで多く含まれている豚肉は、疲労回復に適した食材です。
豚肉のビタミンB1はネギに含まれているアリシンと結合してアリチアミンになると、吸収率がアップします。
豚肉+味噌+ネギの組み合わせはおにぎりにしても間違いないおいしさです。
<具材の作り方>
1)フライパンで豚ひき肉を色が変わるまで炒めます。色が変わったらみじん切りにしたネギをいれてしんなりするまで炒めます。
2)味噌、酒、みりん、醤油、砂糖を入れ、水分がある程度飛ぶまで炒めます。
冷しゃぶのおろしポン酢がけ
材料 | 1人分 |
豚肉しゃぶしゃぶ用 | 100g |
トマト | 1/2個 |
レタス | 1~2枚 |
大根 | 2cm |
ポン酢 | 適量 |
食欲が出ないときや夏バテ解消には冷しゃぶがおすすめです。
冷しゃぶにはごまドレッシングなどもよく合いますですが、ドレッシングの代わりにおろしポン酢を使えば余計な油もカットできますよ。
<柔らかく作るためのポイント>
- 豚肉は厚いものではなくしゃぶしゃぶ用肉を使いましょう。
- 沸騰したお湯で茹でると固くなってしまいます。お湯は沸騰させず、とろ火にして小さい泡が少し出るくらいの温度でお肉を通しましょう。
- 茹でたお肉を氷水に入れると脂が固まったり旨味が逃げたりしてしまうので、自然に冷ますようにしましょう。
鯖の南蛮漬け
運動量の多い持久系スポーツでは、鉄分が汗で失われることから、鉄分不足が疲労感の原因になることも多いです。
鉄分を豊富に含み、お値段もお手頃で年中出回っている鯖は、積極的に食べたい魚のひとつ。お酢に含まれているクエン酸で、鉄分の吸収率もアップします!
甘酸っぱいタレで食欲が沸き、食欲が落ちやすい子供にも、これからの季節にぴったりの一品です。
材料 | 2人分 |
鯖 | 半身2枚 |
塩コショウ | 適量 |
片栗粉 | 適量 |
サラダ油 | 適量 |
酢 | 90mL |
醤油 | 大さじ2 |
めんつゆ (4倍濃縮) |
大さじ2 |
砂糖 | 大さじ4 |
玉ねぎ | 1/2個 |
にんじん | 1/2本 |
<作り方>
1)酢、醤油、めんつゆ、砂糖、千切りにした玉ねぎと人参をバットに入れ、混ぜる。
2)鯖は骨をとり、3cm幅に切って塩こしょうを振る。15分程おいたらキッチンペーパーで水気を拭く。
3)鯖に片栗粉をまぶし、サラダ油を多めに熱したフライパンで揚げ焼きにする。
4)揚げ焼きにした鯖を、1)のバットに熱いうちに入れ、しばらく野菜となじませたら出来上がり。
はちみつ黒酢のスポーツドリンク
黒酢とはちみつで、まろやかな酸味とコクが楽しめるスポーツドリンクです。
作りやすい分量 | |
水 | 1L |
はちみつ | 100g |
塩 | 小さじ1/3(2g) |
黒酢 | 80mL |
疲労回復の献立メニュー
小学生のジュニアアスリート向けの献立メニューです。
ビタミンB1の豊富な豚肉の生姜焼きや、ミネラルの豊富なひじきと切り干し大根のごま酢和えを組み合わせています。
<献立>
・ごはん 200g
・豚の生姜焼き 肉100g
・ひじきと切り干し大根のごま酢あえ
・卵スープ
・キウイ 1個
・ジュニアプロテイン(牛乳割り)
夜遅い練習後の食事メニュー
練習後、夕食が夜遅くなる場合には、消化のよいメニューにすることがポイントです。
そのため繊維質の多い食材は少なめにすること、調理法としては脂質を抑えるために「焼く」「蒸す」「煮る」がおすすめです。
このメニューではメインに煮込み料理の肉豆腐を、副菜にマヨネーズ不使用のかぼちゃサラダを。脂質少なめの献立にしてあります。
<献立>
・ごはん(160g)
・肉豆腐
・チーズとかぼちゃのサラダ
・みかん
まとめ
- 筋肉の疲労回復には糖質・たんぱく質・ビタミンB群が大切で、特にビタミンB1は疲労回復に役立つ栄養素である。
- 肉類の中では豚肉にビタミンB1が多くおすすめ。
- 主食の中では玄米や雑穀米にビタミンB1が多くおすすめ。
- 魚介類には全般的にビタミンB1が多く含まれ、中でもウナギやタラコに豊富である。
参考文献
文部科学省:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
菱田明・佐々木敏 監修:「日本人の食事摂取基準(2015年版)」.第一出版,2014.