アスリートの献立

競技・目的別!アスリートの1日の食事メニュー例【管理栄養士監修】

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こんにちは!管理栄養士の盛岡です。

スポーツ選手にとって適切な食事をとることは、競技パフォーマンスの向上や、日々のコンディション、ケガの予防のためにはとても大切です。

食べ物はお薬と違ってすぐに効果が現れるものではありません。しかしだからこそ、毎日の食事を徹底することでライバルに追いつき、差をつけるための大きな土台となります。

今回は野球やサッカー、陸上など競技ごとに必要な栄養や、スポーツ選手の体づくりに必要な食事方法について、具体的なメニュー付きでご説明いたします。

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スポーツ選手に必要な栄養素と食べ物

これはどの競技にも共通していることですが、「◯◯さえ食べればいい」とか「◯◯は一切食べないようにした方がいい」という食べ物はありません。

私達の体は、何か1つの栄養素でできているわけではなく、それぞれの栄養素が体の中で複雑に作用し合いながら、体を動かすエネルギー源となったり、筋肉や骨・血液・ホルモンなどの体の各組織を作り出しています。

スポーツにおける栄養の役割

特に五大栄養素といわれる炭水化物・たんぱく質・脂質・ビタミン・ミネラル(カルシウムやマグネシウム、鉄など)はバランスよく摂取することが大切で、食事においては主食・主菜・副菜・乳製品・果物のそろった献立にすることで、自然と摂取することができます。

アスリートの食事の基本形(主食・主菜・副菜・乳製品・果物)

※料理区分ごとの役割や競技ごとの摂取量について詳しくは「アスリートの食事メニューで抑えるべき5つの基本」をご参照下さい。

それぞれの栄養素をバランスよく摂取した上で、各競技の特性に合わせた食事をとるとよいでしょう。以下に競技種別の栄養摂取のポイントについて簡単にまとめます。

瞬発系競技の食事

瞬発系スポーツ

陸上短距離や砲丸投げ、水泳短距離、柔道などのようなパワー・瞬発力が要求されるスポーツは、筋肉に強い負荷がかかり、筋繊維の損傷がおきます。

損傷した筋繊維は十分な休息を与えることで、トレーニング前よりも強い状態に回復しますが(これを「超回復」といいます)、この回復を効果的にするためには筋肉の材料であるタンパク質を多めにとることが大切です。

タンパク質は肉や魚、卵、大豆、牛乳に良質なものが多く含まれています。タンパク質は一度にたくさん吸収できるわけではありませんので、摂取回数を増やすこともポイントです。特に朝食はこれらの食品が少なくなりがちですが、納豆や目玉焼き・焼き魚などのメニューで朝からしっかりとりましょう。

但し、これは持久的な競技に比べればタンパク質を多めにしましょうという話ですので、その他の栄養素が必要ないというわけではもちろんありません。肉や魚の食事ばかりになってしまうと便秘になってしまったり、コンディションを崩してしまう原因となりますので注意して下さい。

持久系競技の食事

持久系スポーツ

マラソンや陸上長距離、ロードバイク、トライアスロンなど持久系競技では、エネルギーの消費量がとても多いのが特徴です。体の疲労は筋肉の損傷もありますが、体内に蓄えられたエネルギー源である「グリコーゲン」の枯渇も大きな要因になります。

持久系競技では長時間の運動を続けるために、また消費されたグリコーゲンを回復させるために、エネルギー源となる糖質とその代謝を助けるビタミンB1を多めに摂取するとよいでしょう。

糖質はごはんやパンなどの主食に多く含まれています。ビタミンB1は肉・魚・野菜などに幅広く含まれていますが、特に豚肉や大豆・玄米などに多く含まれています。

糖質とは

「糖質」とは五大栄養素である炭水化物の一種で、体のエネルギー源となる栄養素です。一方、体の中で消化されず、体のエネルギー源にならないものを「食物繊維」といい、食物繊維には腸内環境を整える働きがあります。この糖質と食物繊維の2つを合わせて「炭水化物」と呼びます。

また、持久系スポーツでは貧血が起こりやすいため、鉄分やその吸収を助けるビタミンCも十分にとるよう注意しなければなりません。

詳細記事:スポーツ性貧血の対策 ›

瞬発力も持久力も両方必要な競技の食事

瞬発力も持久力も必要なスポーツ

サッカーやテニス、バスケットボールなど、多くの球技系競技は瞬発力も持久力も必要になります。野球もプレー自体は瞬発的な運動ですが、練習時間が長くなりがちという特徴がありますので、ある程度の体力が実際には必要になるでしょう。

これらの競技についてはタンパク質も糖質もバランスよくとることが大切になります。

なおサッカーやラグビーのようなコンタクトスポーツでは、相手選手との接触によるケガのリスクが高いため、カルシウムはより意識してとるとよいでしょう。

スポーツ選手の摂取カロリーと食事量

自分がどれだけの量を食べるべきかを考えるのはとても重要です。

テレビではよく名門校の選手がどんぶりに入ったごはんを朝から食べている様子が放送されますが、全ての選手がそのままマネをしていいというわけではありません。

身長が高く、練習時間の長い私立名門校の選手であればそれだけ食べないと、体格を維持できませんので必要になるでしょう。しかし平日は1日2時間程度しか練習しない公立校の生徒であれば、「どんぶり飯」だとカロリーオーバーになって体脂肪を増やしてしまう恐れもございます。

適切な食事量とは?

カロリー収支

毎日の食事量は、今の体格がどれくらいなのか、また今後どれくらいの体格を目指すのかを考慮する必要があります。

体重や体脂肪量・筋肉量の増減には様々な要素が関係してきますが、第一に重要なポイントはカロリーの収支です。摂取カロリーが消費カロリーより多ければ体重は増え、少なければ体重は減ります。

詳細記事:アスリートのカロリー計算 ›

細かく摂取カロリーや普段の運動量を計算してみるのもいいのですが、厳密に消費カロリーと一致させるのは不可能なので、体重の増減で食事量の評価を行うとよいでしょう。

つまり体を大きくしたいのに体重が維持されていたら、摂取カロリーは消費カロリーと等しかったことになりますので、もっと量を増やした方がよいということになります。体重は測定時の体水分量や直前の食事量による影響を受けますので、日々一喜一憂するよりも1週間・1ヶ月とある程度の期間で評価しましょう。

増量したい場合

増量・筋力アップ

体を大きくしたい・筋肉を増やしたいという場合、筋肉の材料であるタンパク質をとることはもちろん重要ですが、ごはん(糖質)もよりしっかり食べて摂取カロリーを増やすようにしましょう。

体が大きくなるということは、カロリーをとらなければその体格を維持することはできません。タンパク質を十分にとっていたとしても、摂取カロリーが消費カロリーより少なければ、体は筋肉を分解してエネルギーを補充しようとしてしまいます。

詳細記事:増量するための食事方法 ›

減量したい場合

減量・ダイエット

体を絞りたい・減量したいという場合には、摂取カロリーを消費カロリーよりも少なくする必要があります。

ただし、スポーツ選手は競技力を落としては減量する意味がありませんので、筋力の低下や体調不良には注意しなければなりません。極端な食事制限には気をつけながら、低脂肪な食事・適度な糖質制限によってカロリーカットを行うようにしましょう。

詳細記事:筋肉を落とさずに痩せる方法 ›

ジュニアアスリートの食事

ランニングをする野球少年

小学生~中学生のジュニアアスリートは身長が伸び、体が大きく成長する時期ですので、消費する分だけでなく成長する分の栄養摂取も大切です。

子供のころは特にカルシウムをはじめとしたミネラルの必要量が多いため、乳製品や大豆・小魚などを積極的に取り入れるようにしましょう。

またこの時期に身につけた食習慣は将来にわたって影響を及ぼすため、好き嫌いなく食べることや、朝食を欠かさずとる習慣をつけることも大切です。

詳細記事:ジュニアアスリートの食事 >

アスリートの食事メニュー例

ここでは目安として、1日3,500kcalの摂取を目標にしたサッカー選手の食事メニュー例をご紹介いたします。

関連記事:1日1,600kcalの減量メニュー例 >

朝食のポイント

朝食は体温を上昇させて、1日を元気に活動するためのエネルギー源となる大切な食事です。朝食を抜きにすると朝練を集中して行うことはできなくなり、1日に必要なたんぱく質などの栄養素を摂取するのもとても難しくなるので、必ず食べるようにしましょう。

昼食が弁当の場合は野菜が少なめになりがちですので、その分も朝食でしっかり食べるのが理想です。

詳細記事:アスリートの朝食のとり方 ›

サッカー選手の朝食メニュー(具だくさんコンソメスープ献立)

メニュー例

  • ごはん(200g)
  • 具だくさんコンソメスープ
  • 目玉焼き+トマト
  • 納豆
  • ヨーグルト
  • オレンジジュース(200mL)
エネルギー  957kcal
たんぱく質  34.3g

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昼食(弁当)のポイント

昼食はお弁当でとる場合、かさの大きな野菜は弁当箱にあまり入りませんが、午後の練習に備えてエネルギー源となるごはんや肉・魚の主菜料理はしっかりとるようにしましょう。

サッカー選手の昼食(弁当)メニュー(サバの塩焼き弁当)

メニュー例

  • ごはん(200g)
  • おにぎり(100g)
  • サバの塩焼き
  • 卵焼き
  • チンゲンサイとカニカマのマヨ和え
  • ミニトマト
  • バナナ
エネルギー  1,012kcal
たんぱく質  35.2g

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間食(補食)のポイント

間食はアスリートにとって朝・昼・夕の3食では足りない栄養素を補給するために大切な「補食」です。食べ物はおにぎりやサンドイッチなどの腹持ちがよく糖質源となるものがおすすめです。

たくさん食べるのが苦手な場合には、あんパンやジャムパン・カステラ・まんじゅうなど砂糖の使われているもので補うのもよいでしょう(もちろんそればかりになってはダメですが・・・)。

反対に、クッキー・チョコレート・スナック菓子など、脂肪分の多い洋菓子類は消化に時間がかかって午後のトレーニングに影響が出たり、体脂肪の増加につながりますので避けるようにしましょう。

また、間食としての飲み物はコーラや甘いジュースではなく、ビタミンCがとれるオレンジジュース、たんぱく質やカルシウムを補給できる牛乳などを選ぶようにしましょう。気温の高い時期には運動前にスポーツドリンクで塩分補給をすることも大切です。

詳細記事:アスリートの間食のとり方 ›

サッカー選手の間食(補食)メニュー(いちごジャムパン+牛乳)

メニュー例

  • いちごジャムパン
  • 牛乳(200mL)
エネルギー 426kcal
たんぱく質  11.7g

夕食のポイント

運動後の体は筋肉の合成だけでなく、エネルギー不足により筋肉の分解も促進されている状態です。このときに筋肉の分解を止め疲労回復を進めるためにも、できるだけ速やかに、できれば30分以内に食事をとり栄養補給を行いましょう。

詳細記事:トレーニング後の食事方法 ›

サッカー選手の夕食メニュー(ひき肉ともやしのピリ辛炒め献立)

メニュー例

  • ごはん大盛り(300g)
  • ひき肉ともやし・小松菜のピリ辛炒め
  • レンコンとにんじんのきんぴら
  • 白菜のえのきの中華スープ
  • 牛乳 200mL
  • りんご
エネルギー  1,089kcal
たんぱく質  36.9g

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試合前の食事

試合前日~当日にかけての食事は、体のエネルギー源であるグリコーゲンを蓄えておくことが大切です。ごはんやパン・麺類・オレンジジュースなど、糖質(炭水化物)中心の食事メニューにしましょう。特に麺類やお餅は糖質を多く取りやすく、腹持ちもいいのでおすすめです。

反対に脂肪分が多い食べ物は消化に時間がかかり胃がもたれる原因となりますので、肉・魚を使った主菜のおかずは控えめにしましょう。

また食物繊維の多い生野菜やきのこ・こんにゃくも、ガスがたまってお腹が張ったり下痢を引き起こしたりする原因となりますので摂りすぎに注意して下さい。ビタミンは代わりに食物繊維の少ない野菜ジュースやフルーツジュースでとるのがおすすめです。

詳細記事:アスリートの試合前日~当日の食事方法 ›

試合当日の朝食メニュー例

食事は試合の始まる3時間前までにすませるのがベストです。もし試合が始まるまで1時間くらいしかない場合には、バナナやカステラ・エネルギーゼリーなど消化のよい食べ物でエネルギー補給をしましょう。

試合当日の朝食(きつねうどん、ごはん200g、りんごジュース)

  • きつねうどん
  • ごはん やや大盛り(200g)
  • 100%りんごジュース
エネルギー 826kcal
糖質 169.9g

プロテインなどのサプリメント摂取の注意点

サプリメントの注意点

スポーツ選手は一般の人と比べて活動量が多く、多くの栄養素を摂取する必要があります。毎日食事から十分に栄養をとれるのが理想ですが、遠征などもあると毎食のようにバランスのよい食事をとるのが難しいときもあり、そんなときには補助としてビタミンやカルシウムなどのサプリメントを活用するとよいでしょう。

また、前述しましたように運動後はできるだけ早く栄養補給をする必要がありますが、帰宅してシャワーを浴びて食事…となると現実的にはすぐに食事をとるのはなかなか大変です。そんな場合にプロテインを飲むのは、低脂肪でたんぱく質を手軽にとれるため補食としてよいでしょう。

ただし、たんぱく質の摂り過ぎは体脂肪を増加させたりやカルシウムの排出を促進することになりますので、摂れば摂るほどよいというものではありません。各商品のパッケージには1日分の目安量が書かれていますので、必ずその量を守るようにして下さい。

その他のサプリメントも同様で、ビタミン・ミネラルでも摂り過ぎれば過剰症を引き起こす可能性が出てきます。

何でもサプリメントから摂取するのではなく、あくまで食事の補助として考え、果物が少ないからビタミンCを、牛乳を飲んでいないからカルシウムをといったように、自分に足りないと思う栄養素だけを選ぶようにしましょう。

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